迷走神経刺激療法とリハビリの併用が脳卒中後の上肢の機能回復に有効

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/03/05

 

 脳卒中の後遺症で腕が不自由になることの影響は計り知れないほど大きいが、脳卒中を経験した人に希望をもたらす臨床試験の結果が明らかになった。迷走神経刺激療法(VNS)と集中的なリハビリテーション(リハビリ)を組み合わせることで、障害が残った腕や手をコントロールする機能の回復を促せる可能性のあることが示された。この試験は米MGHインスティテュート・オブ・ヘルス・プロフェッションズのTeresa Kimberley氏らが実施したもので、国際脳卒中学会(ISC 2024、2月7~9日、米フェニックス)で報告された。

 脳卒中が起こると、脳と手足をつなぐ重要な神経回路がダメージを受け、それが原因で手足の機能が失われることがある。Kimberley氏らによると、この回路の再構築は困難だという。Kimberley氏は米国脳卒中協会(ASA)のニュースリリースで、「脳卒中後の腕や手の機能は多くの場合、回復が停滞するか低下することさえあるため、多くの患者が運動機能の障害を抱えたままとなり、自立した生活やQOLが制限されることになる。そのため、身体リハビリの効果を高めるための新たな治療が強く必要とされている」と説明している。

 今回の試験では、脳から首、胸部、腹部へと分布している迷走神経に刺激を与える植込み型装置が用いられた。この迷走神経刺激装置は2021年に米食品医薬品局(FDA)によって、脳卒中後の腕の機能障害を治療する目的での使用が承認されている。

 対象者は、試験開始の9カ月~10年前に脳卒中を発症し、手または腕の運動機能に中等度から重度の障害が残った22~80歳の患者であった。患者はまず、院内で6週間、植込み型の迷走神経刺激装置を使いながらリハビリを行う治療を受けた。ただし、対象者のうちの53人には実際に神経を刺激する治療が行われたが(VNS群)、残る55人には偽の刺激が与えられた(シャム刺激群)。6週間の治療後には、両群とも3カ月にわたってVNSまたはシャム刺激を受けながら自宅で運動プログラムを続けた。VNS群はその後も1年後まで同様の治療を続けた。一方、シャム刺激群は、シャム刺激による治療終了後に院内でVNSとリハビリによる治療を6週間受け、さらに自宅でVNSと運動プログラムを続けた。

 1年後にデータのそろった74人が解析対象に含められた。その結果、1年後には、Fugl-Meyer評価法-上肢(FMA-UE)とWolf Motor Function Test(WMFT)のスコアが、試験開始時からそれぞれ5.3±6.9点と0.51±0.52点、有意に向上していることが明らかになった(いずれもP<0.001)。試験開始から1年後のFMA-UEのスコアは(n=70)、6週間の治療終了から90日後のVNS群のスコア、およびシャム刺激群が自宅でVNSと運動プログラムを開始してから90日後の時点のスコアと比較して有意な差が見られなかったが、WMFTスコアは0.09点有意に上昇しており、1年を通じて運動機能の向上または維持を達成したことが示唆された。

 Kimberley氏は「VNSとリハビリを組み合わせることで、ダメージを受けた領域に橋を渡すように脳が新たな神経回路を強化させることができるようだ」と説明。さらに同氏は、脳卒中患者は回復の望みを捨てないことが重要であり、「脳卒中を経験した患者は、脳卒中後の障害は一生涯残ると考えて治療を諦めることが多い。しかし、実際はそうではないのだ。リハビリとVNSの併用は、そのような患者に新たな道を切り開き、希望を与える」と話し、「脳卒中後の歩行障害や言語障害など他の症状に対するリハビリとVNSの併用効果についても、今後の研究で検討されることを期待している」と付け加えている。

 なお、学会発表された研究は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

[2024年2月1日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら