手術を頼むなら女性外科医、男性外科医?

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/10/04

 

 外科領域はいまだに男性中心の世界であるが、患者が手術後に長期にわたる良好な転帰を得たいのなら、女性外科医に執刀してもらうことが鍵であることを示唆する2件の研究結果が報告された。両研究とも、「JAMA Surgery」に8月30日掲載された。

 1件目の研究は、トロント大学(カナダ)外科学分野のChristopher Wallis氏らが、2007年1月1日から2019年12月31日の間にカナダのオンタリオ州で実施された25種類の一般的な待機的手術または緊急手術を受けた成人患者116万5,711人を対象に、外科医の性別と術後90日および1年後の転帰(死亡、再入院、合併症の発生)との関連を検討したもの。

 対象者のうち、15万1,054人の手術を女性外科医が担当していた。術後に1つ以上の有害事象が生じた患者の割合は、手術から90日後で14.3%、1年後では25.0%であった。患者、外科医、麻酔科医、および病院に関わる因子を調整して解析した結果、手術から90日後に有害事象が生じるリスクは、男性外科医による手術を受けた患者の方が、女性外科医による手術を受けた患者よりも有意に高いことが明らかになった〔13.9%対12.5%、調整オッズ比(OR)1.08、95%信頼区間(CI)1.03〜1.13〕。この結果は、手術から1年後でも同様だった(25.0%対20.7%、同1.06、1.01〜1.12〕。Wallis氏は、「女性外科医の治療を受けた患者は、死亡、再入院、重大な合併症を経験する可能性が低かった」と結論付けている。

 もう1件の研究は、Mora Hospital(スウェーデン)のMy Blohm氏らが、スウェーデンの胆石の手術に関するレジストリを用いて、2006年1月1日から2019年12月31日の間に胆嚢摘出術(64.9%は待機的手術、35.1%は緊急手術)を受けた患者15万509人の術後の転帰を外科医の性別により比較したもの。外科医の総数は2,553人〔女性外科医が849人(33.3%)、男性外科医が1,704人(66.7%)〕で、対象患者の25.1%(3万7,847人)の手術を女性外科医が担当していた。

 解析の結果、手術合併症(出血、内臓穿孔、胆管損傷など)は、男性外科医による手術後の方が女性外科医による手術後よりも多く生じていた。男性外科医による手術後に手術合併症が生じるORは、女性外科医による手術後を1とした場合、全体で1.29(95%CI 1.19〜1.40)、待機的手術で1.39(同1.25〜1.54)、緊急手術で1.17(同1.04〜1.32)であった。男性外科医による待機的手術では女性外科医による手術に比べて、胆管損傷の発生リスクが高かったが(OR 1.69、95%CI 1.22〜2.34)、緊急手術では、性別による有意差は認められなかった。全合併症についても、男性外科医による手術後の方が発症リスクが高かった(同1.12、1.06〜1.19)。このほか、手術に費やす時間は、女性外科医の方が男性外科医よりも長いことも示された(待機的手術では女性外科医で平均100分、男性外科医で平均89分)。

 では、なぜこのような男女差が生じるのか。本論文の付随論評を執筆したスカーネ大学病院(スウェーデン)の外科医であるMartin Almquist氏は、その差が、リスクに立ち向かうことに対する考え方、他者と協力する外科医の能力、手術に関する決定を下す際の「患者中心主義」に起因する可能性を示唆している。同氏は、男性外科医と女性外科医の性格特性の違いが手術後の転帰にどの程度影響を与えるかについては、今回の研究では明確にはできないものの、「手術において患者に一貫して良好な転帰をもたらすためには、正確さと慎重さが、思い切った行動力や手技の速さに勝る可能性が高い」との見方を示している。

 一方、研究グループは、女性の外科医はまだ少数派であることに触れ、「この研究で得られた新たな知見が励みとなり、外科を専門として選択する若い女性医師の数が増えることを期待している」と話している。

[2023年8月30日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら