高齢男性の転倒時の頭蓋骨骨折リスクは女性より高い傾向

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/04/07

 

 高齢者の転倒リスクは男性より女性の方が高いものの、転倒時に頭蓋骨骨折が発生するリスクは男性の方が高い傾向のあることを示すデータが報告された。この傾向は人種/民族にかかわらず認められ、白人では性別によるリスク差が有意だという。米フロリダ・アトランティック大学のScott Alter氏らの研究によるもので、詳細は「The American Journal of Emergency Medicine」3月号に掲載された。

 米国では、転倒により救急医療を受ける高齢者が毎年300万人以上に上る。論文の筆頭著者であるAlter氏は、「人口の高齢化とともに、活動的なライフスタイルを続けている高齢者が増えており、それに伴い高齢者の転倒による頭部外傷や頭蓋骨骨折も増加していることが懸念される」と語っている。

 2016年の米国の外傷登録制度データベース(National Trauma Database)の年次報告書によると、頭部外傷を来した転倒の58%は女性に発生していた。Alter氏らは、高齢女性に多い転倒による頭部外傷が、頭蓋骨骨折のリスクも押し上げている可能性を想定し、頭蓋骨骨折に至る転倒リスクの性別による差を、前向きコホート研究により検討した。

 この研究は、外傷に対する総合的な治療行うレベルIの外傷センター2施設の患者データを用いて実施された。頭部CT画像検査により鈍的頭部外傷の認められた65歳以上の高齢者を解析対象としている。頭部CT画像検査が施行されていない患者を除外後、1年間にわたる連続5,402症例のうち、3,010人(56%)が女性、2,392人(44%)が男性で、白人が90%を占めていた。平均年齢は女性が82.8±8.7歳、男性は81.1±8.7歳であり、有意差はなかった。頭部外傷の発生原因は転倒が最多で4,612人(85%)を占め、性別では女性が2,646人(88%)、男性は1,966人(82%)だった。

 頭蓋骨骨折は199人(3.7%)に確認された。性別で比較すると、男性の頭蓋骨骨折の発生率は4.6%、女性は3.0%であり、男性の方が有意に高かった〔オッズ比1.5(95%信頼区間1.2~2.1)、P=0.002〕。この傾向は人種/民族にかかわらず認められたが、白人以外での性差は有意水準未満だった。

 この研究より以前に行われた研究の中には、高齢の女性は男性よりも顔面の骨折が多いとする報告があった。そのため今回の結果について研究者らは「予想外だ」と述べている。

 Alter氏は、「転倒は頭部外傷とそれに続く頭蓋骨骨折の最大の原因であるため、高齢者の転倒を防ぐための介入が重要と言える」と述べている。その介入法については、「転倒により救急部門を受診した患者に対しては、再発防止対策を徹底することであり、それによって将来の死亡や障害のリスクの抑制につながる。またプライマリケアや介護施設では、患者や居住者に対する転倒防止対策の教育が必要」と語っている。

[2023年3月10日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら