差し込む自然光が多い室内環境は人を幸福にする

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/09/27

 

 住む所を探すとき、ほとんどの人は薄暗い所よりも開放的で風通しの良い所を好むはずだ。だが、それはなぜなのか。チリ大学(チリ)サンティアゴ校のJaviera Morales-Bravo氏と英シェフィールド大学のPablo Navarrete-Hernandez氏が、その答えとなり得る研究結果を発表した。同研究では、自然光がたくさん入る家は、住む人をより幸せな気持ちにさせることが明らかになったという。研究結果の詳細は、「Building and Environment」9月号に掲載された。

 Morales-Bravo氏は、今回の研究の実施を考えたいきさつについて、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるロックダウン中に多くの人が自宅で過ごし、それに付随して不安や抑うつの症例も増加した」と説明する。そこで同氏らは、「住宅の室内空間に差し込む自然光と感情的ウェルビーイングとの関係を調べることにした」という。

 研究では、750人の試験参加者に、コンピューターで作成した室内空間(リビングルーム、キッチン、寝室、浴室)のシミュレーション画像をランダムに25種類提示し、その空間に対して感じる幸福感、または寂しさの程度を1(感情への影響なし)から10(極端な幸福/寂しさを感じる)で評価してもらった。それぞれの室内空間は、季節と天気(冬の曇り、冬の晴れ、夏の晴れ、夏の曇り)、近隣の建物との間の距離(20、15、10、5m)、窓の向き(北向きの晴れ、北向きの曇り、南向きの晴れ、南向きの曇り)、窓の大きさ(壁面の20、5、10、40%)、窓の数(1、2、3枚)、壁材(漆喰、レンガ、木)、壁の明度(25、50、75%)が異なっていた(いずれも一つ目のものが対照)。

 その結果、室内に差し込む自然光の量が増えるほど、参加者はより強い幸福を感じることが明らかになった。参加者は、冬よりもたとえ曇りであろうと夏の方が、また北向きの窓のある部屋に対して、より強い幸福を感じていた。窓が壁に占める割合も重要な要素であり、20%超を占める場合には寂しさが減り幸福感が増していた。検討したあらゆる条件の中で感情的なウェルビーイングが最も高かったのは、窓が壁に対して40%超を占める場合であった。この他、自然光のこのような有益な影響は、30歳未満の若年者と女性の間でより強いことも分かった。

 若年者と女性で自然光がより強い影響を及ぼす理由についてMorales-Bravo氏は、「少なくともこの研究が実施されたチリでは、女性や若年者の方が室内で過ごす時間が長い傾向にある。そのことが、自分たちの職住環境の変化に対して特に敏感にさせたのではないか」と推察している。

 Morales-Bravo氏らによると、自然光以外にも、壁の色や材質も幸福感や寂しさに影響を与えるという。例えば、より明るい色調やホワイトトーンの壁色は光を反射するが、暗い色調の壁色は光を吸収する。また、レンガには、より多くの光を吸収する特性があるため、検討した材質の中では、幸福感をもたらす程度が最も低かったという。

 以上のような結果を踏まえてNavarrete-Hernandez氏は、「われわれの研究結果は、窓のサイズを最大化し、住宅間の距離を広げて日陰を減らし、光をよく反射する壁材と色を使用することで、居住者の幸福感が増し、寂しさが減ることが示唆された。単純なことだがこうした推奨事項を住宅に反映させることで、居住者の感情的ウェルビーイングに大きな違いを生み出す可能性がある」と述べている。

[2022年8月29日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら