CKD患者は野菜・果物摂取量が少ない―米国国民健康栄養調査

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/09/02

 

 色とりどりの果物や野菜を食べることは健康増進のための一般的なアドバイスだが、慢性腎臓病(CKD)患者は野菜・果物の摂取量が少ないことが、米国国民健康栄養調査(NHANES)から明らかになった。米バージニア大学(UVA)のJulia Scialla氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Renal Nutrition」に7月5日掲載された。

 腎臓専門医であるScialla氏は、「野菜や果物の積極的な摂取は、さまざまな病気のリスクの低さと強い関連がある。CKD患者に対してはカリウム制限のために野菜や果物の摂取量に気を付けるよう指導することがあるが、今回の研究結果を見ると、そのような指導が行き過ぎないように配慮が必要なようだ」と語っている。

 Scialla氏らはこの研究のために、NHANESの1988~2018年のデータを用い、調査回答者の食事パターンをCKDの有無別に解析した。なお、NHANESは2年単位で実施されており、食事摂取量については24時間思い出し法により把握されている。CKDの有無と野菜・果物の摂取量の関係の解析に際しては、人口統計学的因子(年齢や性別など)やウエストサイズ、糖尿病・高血圧の影響を統計学的に調整した。また、経時的な変化を見るために、前記の期間を3つに分けて検討した。

 最も古い1988~1994年のデータでは、CKD群の51.83%が、野菜・果物の摂取量が少ない食事パターンと判定された。一方、非CKD群でのその割合は47.66%だった。次に、2003~2010年には、CKD群の46.26%、非CKD群の40.88%が野菜・果物の摂取量が少ない食事パターンと判定された。これら二つの期間の解析では、野菜・果物の摂取量が少ない食事パターンの割合に統計的な有意差が存在した。

 最も新しい2011~2018年は、CKD群の47.87%、非CKD群の45.76%が野菜・果物の摂取量が少ない食事パターンと判定され、やはりCKD群の方が高値だったが、その差は統計的には非有意だった。

 米疾病対策センター(CDC)によると、米国内の成人CKD患者数は約3700万人と推計されている。CKDは、血液中の老廃物を腎臓で効果的にろ過できない状態であり、高血圧や心臓病・脳卒中のリスクの高さとも関係がある。また腎臓の機能の低下によって血液中のカリウムが増えすぎて、心臓に影響が及ぶことがある。野菜や果物はカリウムを多く含んでいることが多いため、CKD患者に対しては、「野菜や果物を控えるように」と指導することが少なくない。ただし、CKD患者が野菜・果物の摂取量を減らすことが、健康上のメリットにつながるのかという点については明確でなく、今後の研究が求められている。

 Scialla氏らは、バージニア大学発のリリースの中で、「今回の研究で明らかになったCKD患者の野菜・果物の摂取量が少ないという事実が、CKD発症の原因なのか、またはCKD患者に対する食事指導の結果なのか、あるいは他の要因が関与しているのかを判断するには、さらなる研究が必要」と述べている。さらに同氏らは、野菜や果物の摂取とCKDとの関係の理解を深め、人々がより多くの植物性食品を食べるようにしていくための施策に関する研究が必要であるとも訴えている。

 論文の筆頭著者である同大学のShirin Pourafshar氏は、「今後の研究によってCKD患者の野菜や果物の摂取に関する疑問が解決され、健康な人とCKD患者の双方が、多様な未加工または低加工の野菜・果物をふだんからより多く摂取するようになることを望んでいる」と語っている。

[2022年7月28日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら