内臓脂肪減少薬オルリスタット、OTCで発売/大正

提供元:ケアネット

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公開日:2024/03/08

 

 大正製薬は日本初の内臓脂肪減少薬オルリスタット(商品名:アライ)を、ダイレクトOTC薬として2024年4月8日に発売する。発売に先立ち世界肥満デーである3月4日に新発売記者会見を開催した。

世界的な肥満パンデミック、日本人は小太りでも要注意

 米国の若年成人の肥満(BMI30以上)は、1970年代後半には5.5%だったが、2017年には33%と6倍に増加している1)。米国だけでなく1975年当時、成人の平均BMIが25前後だった欧州、中東、オーストラリアなども2014年には30前後になっている2)。いまや肥満は世界的パンデミックと言っても過言ではない。

 BMI30の白人の2型糖尿病発症率は10%強だが、日本人を含む東アジア人はBMI24〜25で同じ発症率に達してしまう。つまり、「日本人は小太りでも病気になりやすい」と日本肥満学会理事長である千葉大学の横手 幸太郎氏は述べる。

 「肥満」は脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態であり、「肥満症」は肥満に伴って健康を脅かす合併症があるまたは合併症になるリスクが高い場合と定義され、肥満症は医療行為の対象である3)

 肥満における内臓脂肪の蓄積は健康障害の原因となる。積極的保健指導対象者に対する試験では、3%以上の減量で血圧、脂質、血糖、肝機能、尿酸など、内臓脂肪蓄積者における多くのリスク因子に改善がみられた。日本肥満学会でも、肥満症や高度肥満症患者に対する減量を目指した食事、運動、行動療法を提唱している3)。しかし、それらの治療には限界があり、治療薬の登場が期待されていた。そのような中、2023年、30年ぶりの抗肥満薬としてセマグルチドとオルリスタットが登場した。セマグルチドは肥満症治療薬であり、オルリスタットは内臓脂肪減少薬として、未病である肥満から肥満症への進行を抑制する。横手氏は、肥満の予防から健康寿命の延伸に寄与する薬剤として、オルリスタットに期待感を示した。

16年間の開発期間を要した日本初の内臓脂肪減少薬オルリスタット

 オルリスタットは肪分解酵素リパーゼに結合し不活性化することで、脂肪の分解を阻害して腸からの吸収を抑える。摂取した脂肪の約25%を便とともに排出するとされる。

 同剤は、海外において、1997年に医療用医薬品として承認され、2007年にはOTC医薬品としても承認されている。大正製薬は2008年に日本への導入契約を締結し、2011年から臨床試験を実施、2019年にダイレクトOTC医薬品として厚労省に承認申請して2023年に承認された。日本での開発期間は16年間におよび、「市販薬では異例といえる長期間の開発」と大正製薬マーケティング本部の宍戸 正臣氏は述べる。

52週時で内臓脂肪が2割強減少

 オルリスタットは1,700万人以上の使用経験、100以上の臨床プログラムなど、海外では豊富なエビデンスがある。日本人に対しては、探索試験、用量設定試験、検証試験(二重盲検)、長期投与試験、一般臨床試験(薬剤師による有効性安全性の検討)、生活習慣病治療薬併用試験が行われ、安全性と有効性が検証されている。

 日本人試験の結果、投与24週時点の内臓脂肪面積は、プラセボ群-5.78%に対しオルリスタット群では-14.1%(検証試験)、52週時点ではオルリスタット群で21.52%、実測値で28.05cm2減少した。内臓脂肪蓄積の指標となる腹囲は、オルリスタット投与52週で4.89%、実測値で4.3cm減少した(長期試験)。

 オルリスタットの長期投与試験における副作用発現は60.8%、主なものは油の漏れ34.2%、便を伴う放屁23.3%、脂肪便9.2%、便失禁6.7%などであった。消化管における脂肪吸収を抑えるという作用機序から起こる症状であるため、発現機序を十分に理解して、服用前は脂肪の多い食事を避けるなどの対策をとっておくべきである。症状発現時期は「臨床データ上では服薬開始14日以内が最も高く、その後は率が下がってくる傾向」と大正製薬セルフメディケーション臨床開発部の藤田 透氏は言う。

研修を修了した薬剤師による対面販売

 オルリスタットは要指導薬のため薬剤師の対面販売でしか購入できない。初回購入には、専用のチェックシートと生活習慣記録(購入1ヵ月前からの記録)を使用者が記入し、薬剤師が確認しなければならない。生活習慣記録については、入力の手間を省くために、LINEアプリ「STEP UP DIARY」を用意している。

 一方、特別な販売方法のため薬剤師の継続的な教育は欠かせない。販売に従事する薬剤師は日本肥満学会監修の「アライ専用eラーニング研修」の修了が求められるが、すでに2万6,000人を超える薬剤師が研修を修了しているという。

 また、オルリスタットは医薬品卸を介さず、大正製薬が要指導薬と第1類を取り扱う薬局・ドラックストアに直接販売する。販売店は全国で約1万店舗強あるとされるが、ほぼすべての店舗で取り扱いできる見込みだ。販売店は同剤のブランドサイトで検索できる。

製品概要
・製品名:アライ
・効能・効果:腹部が太めな方の内臓脂肪および腹囲の減少(生活習慣改善の取り組みを行っている場合に限る)
・用法・用量:年令 成人(18才以上) 1回量1カプセル 服用回数1日3回
・成分:1 カプセル中 オルリスタット 60mg
・価格:6日分2,530円、30日分8,800円(ともに税込み)

使用条件
・腹囲:男性85cm以上、女性90cm以上
・健康障害*を合併していない
・初回購入前3ヵ月以上生活習慣改善の取り組みを行っていること
・初回購入前1ヵ月および使用中に生活習慣改善の取り組み**、体重、腹囲を記録すること
*:高度肥満または糖尿病、脂質異常症、高血圧などの「肥満診療ガイドライン2016」に記載された11疾患
**:定期的に健康診断を受けていること

(ケアネット 細田 雅之)