統合失調症の遺伝的リスクが摂食障害の臨床症状に及ぼす影響

提供元:ケアネット

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公開日:2024/01/29

 

 統合失調症と摂食障害との関連についての報告は増加しており、統合失調症の家族歴が神経性やせ症患者の臨床アウトカムに及ぼす影響が示唆されている。摂食障害患者における統合失調症の遺伝的要因の影響を調査するため、スウェーデン・カロリンスカ研究所のRuyue Zhang氏らは、統合失調症の多遺伝子リスクスコア(PRS)と摂食障害患者の臨床症状(全体的な健康状態および摂食障害関連症状を含む)との関連を評価した。Translational Psychiatry誌2023年11月29日号の報告。

 研究には、スウェーデン国立患者レジストリに登録されている1973年以降に生まれた神経性やせ症(Anorexia Nervosa Genetics Initiative[ANGI])患者3,573例、および過食症(Binge Eating Genetics Initiative[BEGIN])患者696例を含む摂食障害の遺伝子関連研究2件のデータを用いた。統合失調症のPRSと摂食障害の臨床的特徴、精神医学的併存疾患、身体的および精神的健康への影響を検討した。

 主な結果は以下のとおり。

・ANGI患者では、複数の検査値で補正した後、統合失調症のPRSの高さとうつ病リスク(ハザード比[HR]:1.07、95%信頼区間[CI]:1.02~1.13)および物質使用障害リスク(HR:1.14、95%CI:1.03~1.25)の高さとの間に、統計学的に有意な関連が認められた。
・また、統合失調症のPRSの高さは、臨床障害評価スコアの低下と関連が認められた(-0.56、95%CI:-1.04~-0.08、p<0.05)。
・BEGIN患者では、統合失調症のPRSの高さは、初回摂食障害症状の発現年齢の低さ(-0.35歳、95%CI:-0.64~-0.06)、摂食障害症状スコアの高さ(0.16、95%CI:0.04~0.29)、うつ病リスクの高さ(HR:1.18、95%CI:1.04~1.34)、物質使用障害リスクの高さ(HR:1.36、95%CI:1.07~1.73)と有意な関連が認められた。
・神経性やせ症のみおよび摂食障害患者のサブグループにおいて、弱い同様のパターンが認められた。

 著者らは「本結果は、精神医学的併存疾患の観点から、神経性やせ症および摂食障害患者における統合失調症のPRSの影響は類似しており、摂食障害関連の臨床的特徴の観点では、異なることを示唆している」とし「統合失調症のPRSが神経性やせ症や摂食障害に及ぼす影響の違いについては、さらなる研究が必要である」とまとめている。

(鷹野 敦夫)