血栓高リスクの肺・消化器がん、エノキサパリンによる血栓予防で生存改善(TARGET-TP)

提供元:ケアネット

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公開日:2023/10/05

 

 肺がんや消化器がん患者において、バイオマーカーに基づく血栓リスクの分類と、高リスクに分類された患者に対するエノキサパリンによる血栓予防は、血栓塞栓症の発生を抑制するだけでなく、生存も改善することが報告された。本研究結果は、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのMarliese Alexander氏らによって、JAMA Oncology誌オンライン版2023年9月21日号で報告された。

 2018年6月~2021年7月に第III相非盲検無作為化比較試験「Targeted Thromboprophylaxis in Ambulatory Patients Receiving Anticancer Therapies(TARGET-TP)」が実施された。本試験はオーストラリアの5施設において、肺がんまたは消化器がんに対する抗がん剤治療を開始する18歳以上の患者328例が対象となった。フィブリノゲン値とDダイマー値に基づき、血栓塞栓症リスクを低リスクと高リスクに分類した。高リスクに分類された患者について、エノキサパリン40mg(1日1回、皮下投与)を90日間投与する群(エノキサパリン群)、血栓予防薬を投与しない群(高リスク対照群)に1対1に割り付け、比較した。なお、エノキサパリン群は血栓塞栓症リスクに応じて、180日まで投与期間を延長可能とした。主要評価項目は180日後までの血栓塞栓症の発生、副次評価項目は、血栓塞栓症リスクモデルの検証、出血、全死亡などであった。

※ 以下の(1)~(3)のいずれかを満たすものを高リスクとした。(1)ベースライン時のフィブリノゲン値4g/L以上かつDダイマー値0.5mg/L以上、(2)ベースライン時のDダイマー値1.5mg/L以上、(3)1ヵ月後のDダイマー値1.5mg/L以上。

 主な結果は以下のとおり。

・対象患者328例(年齢中央値[範囲]:65歳[30~88]、男性:176例[54%])のうち、肺がんは127例(39%)、消化器がんは201例(61%)であった。転移を有していたのは132例(40%)、高リスクと判定されたのは200例であった。
・血栓塞栓症は高リスク対照群で23例(23%)に発生したのに対し、エノキサパリン群では8例(8%)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.31、95%信頼区間[CI]:0.15~0.70)。低リスク群では10例(8%)に発生したが、高リスク対照群よりも有意に少なかった(同:3.33、1.58~6.99)。
・血栓塞栓症リスクモデルの感度は70%、特異度は61%であった。
・大出血の発生に群間差は認められなかった(エノキサパリン群:1例[1%]、高リスク対照群:2例[2%]、低リスク群:3例[2%])。
・6ヵ月死亡率は高リスク対照群が26%であったのに対し、エノキサパリン群では13%(HR:0.48、95%CI:0.24~0.93、p=0.03)、低リスク群では7%(同:4.71、2.13~10.42、p<0.001)であり、高リスク対照群と比較して有意に低かった。

(ケアネット 佐藤 亮)