リアルワールドエビデンス、高カリウム血症が心腎疾患患者の転帰におよぼす影響/AZ

提供元:ケアネット

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公開日:2023/07/10

 

 AstraZeneca(英国、CEO:Pascal Soriot氏)は、同社のリアルワールドエビデンス(RWE)に基づくZORA研究(以下、本研究)の解析から、高カリウム血症を発症している患者において、レニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系阻害薬(RAASi)の投与量減量または中止による影響が示されたと発表した。

 イタリアのミラノで開催された欧州腎臓学会(ERA)2023総会で発表された本研究の解析の1つより、慢性腎臓病(CKD)および/または心不全(HF)を患う心腎疾患患者におけるRAASi治療の継続を提案する複数のガイドラインがある一方で、米国および日本の臨床現場では、高カリウム血症発症後にRAASi治療の中止が依然行われていることが示された。また、RAASi治療を中止した患者のうち、6ヵ月以内に再開した割合は、米国では10~15%、日本では6~8%で、RAASi治療を再開した少ない患者の中で、米国および日本ともにその17~37%の患者において投与量が25%を超えて減量されていた。

 本研究における別の解析では、スウェーデン(6,998例)と日本(2,092例)の心腎疾患患者において、高カリウム血症発症後にRAASi治療を中断した場合、発症から6ヵ月までと発症の6ヵ月前までを比べると、スウェーデンでは18.2日、日本では17.9日、全原因の入院日数が増加することが明らかになった。一方、高カリウム血症発症から6ヵ月後までRAASi治療を維持した患者の入院日数の増加は、スウェーデンと日本でそれぞれ9.4日と8.5日であり、CKDおよびHF関連の原因による入院日数についても同様の傾向が観察された。

 今回発表された2つの解析は、BMC Nephrology誌に掲載された本研究結果に基づいており、この論文では米国および日本のCKDまたはHF患者において、高カリウム血症に関連してRAASi治療を中止または漸減した患者では、RAASi治療を維持または漸増した患者と比較して、心腎イベントのリスクが高いことが明らかになった。

 UCLA Healthの腎臓内科主任であるAnjay Rastogi氏は、「心腎疾患患者には、心疾患のリスクや入院率の上昇につながる高カリウム血症の管理という深刻なアンメットニーズがある。今回発表されたリアルワールドデータにより、心腎疾患患者においてRAASi治療がガイドラインで推奨されているにもかかわらず、高カリウム血症の発症によって投与量の減量が一般的に行われていることが示された。ガイドラインに基づいてRAASi治療を受けているCKDやHFの患者において、とくに、この慢性病態をよりよく管理できる可能性のあるカリウム吸着薬などの治療選択肢がある場合には、高カリウム血症の発症によってRAASi治療が妨げられるべきではない」と述べた。

 また、同社のエグゼクティブバイスプレジデント兼バイオファーマビジネスユニットの責任者であるRuud Dobber氏は、「ガイドラインに沿ったRAASi治療を行わなかった場合、心腎疾患患者の転帰に影響をもたらす可能性がある。しかし、今回の知見は、これらの患者が高カリウム血症の発症によってRAASi治療を中止した場合、RAASi治療を再開することはまれであり、再開を可能にするためには高カリウム血症管理におけるプラクティスチェンジが急務であることを浮き彫りにしている。私たちは、高カリウム血症に対する治療を通じてこの疾患を改善し、よりよく心腎保護の機会を患者に届けられるよう、一層広く医療従事者と協力していく」としている。

(ケアネット)