サル痘の意外な臨床的特徴と発現率は?~メタ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2023/05/01

 

 サル痘(mpox)は、これまでは主にアフリカ中央部から西部を常在国として発生してきたが、2022年5月以降は欧米を中心に世界各地で8万6,000例以上が報告されている(2023年3月24日時点)。潜伏期間は通常6~13日(最大5~21日)で、発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの症状に続いて発疹が出現するが、常在国以外での感染例では、これまでのサル痘の症状とは異なる所見が報告されている。

 そこで、韓国・慶煕大学校のHyunju Yon氏らの研究グループは、サル痘に伴う臨床的特徴を調べ、その病態生理や特徴を把握することを目的として、システマティックレビューとメタ解析を行った。これはサル痘のすべての臨床的特徴を検討した最初の国際的かつ包括的な研究であるという。Reviews in medical virology誌オンライン版2023年4月13日号掲載の報告。

 本研究では、2022年9月16日までに公表された研究を、PubMed/MEDLINE、Embase、CINAHL、Google Schola、Cochrane Database of Systematic Reviewsで検索した。ランダム効果モデルを用いてプールされた有病率と95%信頼区間(CI)を算出した。異質性の評価にはI2統計、出版バイアスの評価にはEgger's test、不確実性のレベルの判定には95%予測区間、バイアスリスクの評価にはNewcastle-Ottawa ScaleとJoanna Briggs Instituteが用いられた。

 主な結果は以下のとおり。

・5大陸19ヵ国の26研究より、18項目の特有の臨床的特徴を有する5,472例のサル痘患者が解析の対象となった。
・サル痘の臨床的特徴のプールされた発現率は下記のとおりであった。
 -発疹 85.7%(95%CI:68.3~94.3、k=21)
 -悪寒 77.8%(95%CI:70.5~83.7、k=3)
 -発熱 62.3%(95%CI:51.3~71.6、k=25)
 -リンパ節腫脹 58.6%(95%CI:47.2~69.2、k=21)
 -無気力または疲労 46.8%(95%CI:30.7~63.5、k=14)
 -そう痒 40.6%(95%CI:28.5~54.0、k=5)
 -筋肉痛 36.0%(95%CI:24.3~49.7、k=16)
 -頭痛 34.6%(95%CI:23.4~47.8、k=17)
 -皮膚潰瘍 31.1%(95%CI:18.6~47.1、k=7)
 -腹部症状 24.2%(95%CI:17.9~31.9、k=11)
 -咽頭炎 23.0%(95%CI:12.7~37.9、k=14)
 -呼吸器症状 19.5%(95%CI:6.8~44.1、k=6)
 -悪心または嘔吐 13.0%(95%CI:4.6~31.9、k=3)
 -陰嚢または陰茎浮腫 10.7%(95%CI:6.3~17.7、k=4)
 -結膜炎 7.1%(95%CI:2.4~18.9、k=6)
 -死亡 0.9%(95%CI:0.4~2.0、k=26)

 これらの結果より、研究グループは「この研究は、現在発生しているサル痘の包括的な理解を提供するものであり、病理学的メカニズムや疫学に関する研究のための重要なデータとなりうる」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)