統合失調症患者のクロザピン中止後の臨床アウトカム~システマティックレビュー

提供元:ケアネット

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公開日:2022/06/02

 

 治療抵抗性統合失調症に対するクロザピン治療は、ゴールデンスタンダードである。しかし、クロザピン治療でも約60%の患者は治療反応が得られず、クロザピン治療中止後の臨床アウトカムについては明らかになっていない。東京・大泉病院の三浦 元太郎氏らは、クロザピン治療中止後のアウトカムを明らかにするため、システマティックレビューを実施した。その結果、クロザピン治療中止後に臨床アウトカムは悪化しており、その後の治療として、クロザピン再投与やオランザピン治療が検討されていることを報告した。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2022年5月5日号の報告。

 検索キーワードを用いて、MEDLINE、Embaseよりシステマティックに検索した。

 主な結果は以下のとおり。

・27文献より28件の臨床研究が特定され、システマティックレビューに含まれた。
・ランダム化比較試験3件において、精神症状の悪化が報告された。
・シングルアーム研究10件において、精神症状の悪化と改善の結果に一貫性は認められなかった。
・大規模レトロスペクティブコホート研究1件において、クロザピン治療中止後のクロザピン再投与、オランザピン治療、抗精神病薬の多剤併用は、薬物治療を行わなかった場合と比較し、再入院率が低かった。
・その他のレトロスペクティブ研究14件では、クロザピン治療中止後の臨床状態悪化が多く認められた。
・クロザピン再投与後の臨床アウトカムに関する研究5件のうち4件では、クロザピン再投与を行った患者の半数以上で臨床状態改善が報告されていた。
・残りの研究では、クロザピン治療中止後に再投与を行った群は、再投与を行わなかった群よりも、寛解評価スコアが不良であったと報告されていた。
・クロザピン治療不応答患者におけるクロザピン治療中止後のアウトカムは不明なままであり、適切に設計された今後の研究が求められる。

(鷹野 敦夫)