進行乳がんのエリブリン治療、リンパ球数と病勢進行の関連は(EMBRACE)/日本臨床腫瘍学会

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2021/03/03

 

 第III相EMBRACE試験において、非タキサン系の微小管阻害薬エリブリンは進行乳がんの生存期間(OS)を有意に延長した。同試験のPost-Hoc解析では、ベースライン時のリンパ球絶対数(ALC)がエリブリン治療によるOS延長の独立した予測因子であることが示唆されている。今回、エリブリン治療によるOS延長におけるALCと病勢進行(PD)の関係が調べられた。第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)において、静岡がんセンターの渡邉 純一郎氏がその結果を発表した。

 本Post-Hoc解析では、EMBRACE試験に登録された被験者が、PDの状態に基づいて3つのサブグループに分類された。
グループ1:新たな転移によるPD
グループ2:既存の病変の進行によるPD
グループ3:データカットオフまでPDなし
 ベースラインALCのカットオフ値は1,500/μLに設定。OS中央値、ハザード比(HR)、およびP値は、それぞれカプランマイヤー法、層別Cox比例ハザードモデル、および層別ログランク検定を用いて推定された。

 主な結果は以下のとおり。

・EMBRACE試験には、評価可能なベースラインALCの記録を有する症例がエリブリン群500例、主治医選択薬(TPC)群251例含まれていた。
・ALC≧1,500/μLのエリブリン群の患者では、ALC<1,500/μLと比較して新たな転移を有する患者が少ない傾向がみられたが(25% vs.29%)、有意な差はみられなかった。
・グループ1において、ベースラインALCが≧1,500/μLの場合、エリブリン群ではTPC群と比較してOSの有意な延長が示された(HR:0.485、95%信頼区間[CI]:0.271~0.869、p=0.013)。一方、ベースラインALC<1,500/μLの場合両群に差はみられなかった。
・グループ2において、ベースラインALCが≧1,500/μLの場合、エリブリン群ではOS延長の傾向が強くみられたが(中央値15.7ヵ月 vs.9.3ヵ月)、統計学的有意差は得られなかった(HR:0.746、95%CI:0.409~1.362、p=0.339)。ベースラインALC<1,500/μLの場合両群に差はみられなかった。
・グループ3では、ベースラインALCが≧1,500/μLの場合、エリブリン群のOSが有意に延長された(HR:0.567、95%CI:0.322~0.998、p=0.047)。ベースラインALC<1,500/μLの場合両群に差はみられなかった。
・さらに、新たな転移のみられた患者を除外し、それ以外の患者について解析を行ったところ、エリブリン群のOSが大幅に延長された(HR:0.571、95%CI:0.394~0.826、p=0.003)。OS中央値としては、エリブリン群で約5ヵ月延長されている。

 これらの結果を受けて同氏は、下記のように結論づけた。

・ベースラインALC≧1,500/μLは、エリブリン群におけるPDの状態を予測するバイオマーカーとはいえず、適切なカットオフ値についてのさらなる検討が必要
・ベースラインALC≧1,500/μLで、新たな転移を有さない患者が、エリブリン治療によるベネフィットを最も受けうる
・しかしながら、ベースラインALC≧1,500/μLで新たな転移を有する患者においても、エリブリンによる治療はOSの有意なベネフィットをもたらす
・TPC群の患者では、OSの予測において、ALCも病勢進行の状態も関連がみられなかった

(ケアネット 遊佐 なつみ)