非心臓手術後の心房細動患者の血栓塞栓症リスクは?【Dr.河田pick up】

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2018/11/01

 

 循環器内科医は非心臓手術後に生じた心房細動に関するコンサルトを受けることが多い。心房細動は術後のストレスで生じただけなのか、また、術後ということもあり、抗凝固薬を継続すべきなのかの判断が難しいことが多い。今回は、非心臓手術後に発症した心房細動患者における血栓塞栓症リスクについてデンマークのグループが評価した論文を紹介したい。

 非心臓手術後に発症した心房細動に対する長期の血栓塞栓症リスクはよくわかっておらず、脳梗塞の予防に関しての十分なデータがない。コペンハーゲン大学病院のJawad H. Butt氏らは、非心臓手術後に新たに発症・診断された心房細動患者における血栓塞栓症リスクを、非外科手術、非弁膜性心房細動患者と比較した。Journal of American College of Cardiology誌オンライン版2018年10月23日号に掲載の報告。

 著者らはデンマークのナショナルレジストリを用いて、1996~2015年の間に非心臓手術後に心房細動を発症したすべての患者を同定した。これらの患者を、年齢、性別、心不全/高血圧/糖尿病/血栓塞栓症、虚血性心疾患の既往、診断年をマッチさせた、外科手術と関連しない非弁膜症性心房細動患者と1対4の割合で比較した。長期の血栓塞栓症リスクについては、多変量Cox回帰モデルを用いて解析された。

 非心臓手術を受けた患者のうち、6,048例(0.4%)が術後の入院中に心房細動を発症した。頻度が多かったのは胸部・肺、血管、腹部手術であった。合計3,830例の術後心房細動患者を15,320例の非弁膜症性心房細動患者とマッチさせた。経口抗凝固薬は、退院後30日の時点で24.3%と41.3%の患者でそれぞれ投与されていた(p<0.001)。血栓塞栓症の長期リスクは両群で同様であった(千人年当たり、31.7イベントと29.9イベント、ハザード比[HR]:0.95、95%信頼区間[CI]:0.85~1.07)。フォローアップ期間中の抗凝固療法は、術後心房細動群(HR:0.52、95%CI:0.40~0.67)と非弁膜症性心房細動群(HR:0.56、95%CI:0.51~0.62)のいずれにおいても血栓塞栓症イベントリスクを同様に低下させていた。

 著者らは非心臓手術後新規に診断された心房細動は、非弁膜症性心房細動と同様に血栓塞栓症の長期リスクがあると結論づけている。

 術後の心房細動は一過性であり、予後は良いと考えられがちだが、今回の結果から、術後の心房細動に対しても非弁膜症性心房細動と同じようにリスクに応じた抗凝固療法を行う必要があると考えられる。術後のストレスに伴う心房細動か一過性か、そうでないのかを判断するのは非常に難しい問題だといえる。

(Oregon Heart and Vascular Institute 河田 宏)

関連コンテンツ

循環器内科 米国臨床留学記