日本発の治療薬を世界中の患者さんへ

提供元:ケアネット

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公開日:2018/07/06

 

 2018年6月20日、ノーベルファーマ株式会社は、「ラパリムスゲル0.2%」(一般名:シロリムス外用ゲル剤)が、「結節性硬化症に伴う皮膚病変」の治療薬として6月6日に発売されたことを期し、本剤に関する記者発表会を都内で開催した。発表会では、結節性硬化症の概要のほか、本剤の開発経緯や特徴などの講演が行われた。

患者さんの声に応えて研究・開発された治療薬

 発表会では、金田 眞理氏(大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学講座 皮膚科学教室 講師)を講師に迎え、「結節性硬化症に伴う皮膚病変の治療革命」をテーマに講演が行われた。

 「結節性硬化症」(以下「TSC」と略す)とは、タンパク質キナーゼのmTORが恒常的に活性化することで、皮膚、神経系、腎、肺、骨など諸部位に過誤腫や過誤組織を形成する疾患。最近では胎児期の心横紋筋腫をきっかけに発見される例も増えてきているという。精神遅滞、てんかん、血管線維腫が3主徴とされ、とくに皮膚症状は99%の患者で起こり、顔面にできる血管線維腫は、患者のQOLやADLを低下させ、長年苦しめてきた。治療では、根治療法はなく、個々の症状への対症療法が行われている。

 皮膚病変の治療では、mTOR阻害薬の内服薬のほか外科的治療が行われてきたが、内服薬では効果が緩徐で長期服用が必要とされることから副作用の懸念があり、外科治療では全身麻酔による処置が必要なことも多く、患者や患者家族からは痛みのない、外用薬の開発が望まれていた。そうした患者らの声を受けて、同氏が研究・開発した外用薬が「ラパリムスゲル」である。

 同氏による医師主導治験では、1日2回塗布で12週後の効果を検討すると、小さな腫瘤や白斑などは消失し、縮小効果は成人よりも小児の方に大きく効果がみられたほか、線維性局面も同様に小児の方に効果が大きくみられたという。

 問題点について同氏は「塗布を中止すると再燃すること、塗布の継続期間や頻度、効果判定や長期使用の安全性など課題も多い」と指摘する。最後に「今回の治療薬開発プロセスが、今後のわが国の創薬モデルとなりうると考える」と展望を述べ、講演を終えた。

先駆け審査指定制度の第1号として誕生

 本剤は、日本から世界に発信をするという意味合いで、厚生労働省の定める先駆け審査指定制度の第1号として認定され、承認された治療薬である。適用症は「TSCに伴う皮膚病変」であり、世界初となる。作用機序としては、TSCで恒常的に活性化しているmTORをシロリムスが阻害することで皮膚病変の症状を緩和する。

 本剤は、2015年から検証試験および長期試験(国内第III相試験)が行われ、TSCに伴う血管線維腫に対し、ラパリムスゲル群(n=30)とプラセボ群(n=32)に分け、12週後の改善度を比較した結果、ラパリムスゲル群は改善率60.0%に対し、プラセボ群は0%(p<0.001 Fisherの直接確率検定)だった。また、線維性頭部局面の改善度に対し、ラパリムスゲル群(n=13)とプラセボ群(n=16)で同様に12週後の改善度を比較した結果、ラパリムスゲル群は改善率46.2%に対し、プラセボ群は6.3%(p=0.026 Fisherの直接確率検定)とラパリムスゲル群の有効性が確認された。安全面についてみると、12ヵ月の長期試験で有害事象を伴う中止にいたらなかった患者割合は97.9%だった。また、主な副作用としては、皮膚乾燥、適用部位刺激感、ざ瘡、そう痒症、ざ瘡様皮膚炎、眼刺激などが報告されたがいずれも重篤なものはないという。用法・用量は、通常1日2回患部に適量を塗布。薬価は3,855 円(0.2% 1g)となる。

*先駆け審査指定制度とは、対象疾患の重篤性など、一定の要件を満たす画期的な新薬などについて、開発の早期段階から対象品目に指定し、薬事承認に関する相談・審査で優先的な取扱いをすることで、承認審査の期間を短縮することを目的としたもの。

(ケアネット 稲川 進)

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