心不全を予防するために何をすべきか/日本循環器学会

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2018/04/05

 

 高齢者の増加と共に心不全患者数も増加し、わが国は、心不全パンデミック時代に直面しようとしている。そのような中、今後、心不全については治療だけでなく、予防という観点が重要となる。2018年3月23~25日に大阪で開催された、第82回日本循環器学会学術集会プレナリーセッションで、わが国の心不全予防について、佐賀大学 循環器内科 田中 敦史氏が講演した。

バイオマーカーによるプレ・クリニカルからの先制医療
 心不全の発症には、さまざまな要素が関連することから、患者それぞれのステージに合った、適切な介入が必要になってくる。田中氏はNT-proBNPの活用について紹介した。

 久山町研究において、NT-proBNP値の上昇は、たとえ軽度でも、将来的な心血管疾患のリスク上昇に関連していることが報告されている。また、平成20~21年に佐賀県浦之崎病院(現:伊万里松浦病院)において実施した、就労世代におけるNT-proBNPと各検査項目との関連解析では、全体の20%がリスク群まで上昇していることが判明した。NT-proBNPはhs-トロポニンTなどの心筋障害マーカーとも相関する事から、一般就労世代のバイオマーカーとして、先制医療に活用可能であると考えられる。

心不全予防に有望なSGLT2阻害薬
 心不全予防では、基礎疾患管理も重要である。SGLT2阻害薬は今回改訂された心不全ガイドラインでもハイリスク糖尿病患者の心不全予防の第1選択の1つとして捉えられている。EMPA-REG試験、CANVAS試験、いずれにおいても心不全死または心不全入院を減少させている。さらに、現在、カナグリフロジンを用いて、慢性心不全を合併した2型糖尿病においてNT-proBNPの変化を評価するCANDLE研究が始まっている。

再入院予防の戦略
 心不全は、入院を繰り返すことで、悪化していく。心不全の再入院の頻度は退院後30日以内で25%に上る。カナダの研究では、心不全入院患者、心血管系のアウトカムに関しては、平均5~6日の入院期間が最も良好であった。限られた期間の中で、患者の医学的、社会的側面を含むさまざまな要素を評価すること。また、地域に戻った後のシームレスなケアが、心不全再入院予防の鍵となるであろうと田中氏は述べた。

(ケアネット 細田 雅之)