薬剤誘発遅発性ジスキネジアを有する統合失調症患者へのアリピプラゾール切り替え

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2018/02/16

 

 第2世代抗精神病薬アリピプラゾールは、ドパミンD2受容体パーシャルアゴニストとして作用する薬剤である。遅発性ジスキネジア(TD)を改善するためのアリピプラゾール治療に関するこれまでの研究は限られており、決定的ではなかった。中国・中原大学のChia-Hsiang Chan氏らは、TDを有する精神疾患患者におけるアリピプラゾール治療の有用性について検討を行った。International clinical psychopharmacology誌オンライン版2018年1月10日号の報告。

 本研究は、2009年1月~2010年2月に台湾北部の公立精神病院で実施された、24週間のオープンラベルプロスペクティブコホート研究である。精神疾患患者を対象に、これまでの抗精神病薬とアリピプラゾールのクロスタイトレーションを行い、TDの重症度について、ベースラインおよび2、4、8、12、16、20、24週目に評価を行った。主要評価項目は、AIMS(異常不随意運動評価尺度:Abnormal Involuntary Movement Scale)総スコアによって評価したTD重症度の変化とした。治療反応患者の定義は、ベースラインから試験終了時(24週目)までのAIMS総スコア50%以上減少とした。対象は、薬剤誘発性TDを有する精神疾患患者30例とした。

 主な結果は以下のとおり。

・AIMS総スコアは、ベースラインから試験終了時まで、有意な減少が認められた(-7.17±5.55)。
・AIMS総スコアの有意な減少は、2週目より認められ(p<0.0001)、その変化は研究期間全体にわたり有意なままであった(p<0.0001)。
・治療反応と有意な関連が認められたのは、ベースライン時にTDの重症度が高い患者(調整オッズ比:1.35、95%CI:1.04~1.76、p=0.03)またはパーキンソニズムの重症度が低い患者(調整オッズ比:0.78、95%CI:0.61~0.99、p=0.04)であった。

 著者らは「本知見は、臨床医がTDを有する精神疾患患者の薬剤変更を検討する際、アリピプラゾールは有望な治療法であることを示唆している。この知見を裏付けるためには、さらに大規模なランダム化比較試験が必要である」としている。

■関連記事
クロザピン関連遅発性ジスキネジアへの低用量アリピプラゾール
遅発性ジスキネジア治療に期待される薬剤は
遅発性ジスキネジアが発現するD2受容体占有率は:慶應義塾大学

(鷹野 敦夫)