吸入器操作指導が予後を好転させる

提供元:ケアネット

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公開日:2015/04/27

 

 2015年4月17日より3日間、東京都内において第55回日本呼吸器学会学術講演会が開催された。近年のトピックであるCOPD、肺がんをはじめ、30以上の特別講演と1,200題を超える演題発表が行われた。

 成人喘息患者の増加が懸念される中、日本アレルギー学会との共同企画として「包括的気管支喘息治療」というセッションが行われた。その中で、治療の要となる吸入療法について堀口 高彦氏(藤田保健衛生大学呼吸器内科学II 教授)より、失敗をさせない吸入指導の方法に関する発表が行われた。

高齢者に多い手技ミス、誤操作

 はじめに吸入薬の特性として、正確な吸入操作をしないと効果が十分に発揮されないことを指摘。最近、多くの新薬の登場とともにデバイスの数も増えたことから、その操作方法を患者さんのみならず、医療スタッフも把握しきれていないという現状を報告した。

 外来で吸入薬を新たに処方した患者さんについて、次回の受診時に吸入操作を確認すると、誤操作をしている例を多く見かける。これは、とくに高齢者に顕著であり、具体的には手技や操作に問題がある場合が多いという。

 加齢による筋力低下、吸入流速の低下などで定量噴霧式吸入器が上手く吸入できない場合は、スペーサーなどの補助器具を使用するなどフォローが必要となる。また、吸入で気を付けるポイントとしては、「吸入時の姿勢補正」、「舌を下げること」が挙げられ、「ドライマウスを防ぐための吸入後のうがいや飲水の実施」、「吸入器の衛生管理」も患者指導のうえで重要であると説明を行った。

DVDで吸入指導

 今後は、吸入方法の統一した啓発が必要となる。堀口氏は、各種デバイスの操作方法を解説し、間違えやすい点についてもやさしく解説したDVDを制作しており、実際に指導で効果を上げていることを紹介した。

 外来では、吸入薬の処方前にこのDVDを患者さんに視聴してもらい、処方後はさらに薬剤師による吸入指導を実施。また、家庭用DVDも配布することで、自宅で繰り返し確認が行えるように工夫した。その結果、誤操作が少なくなり、吸入薬の遵守率が上昇したとのことである。堀口氏は「DVD導入により正確な吸入操作を普及させることで、より吸入療法の発展に期待をしたい」と発表を終えた。

 なお、DVDおよびポスター(正しい吸入方法を身につけよう)は、独立行政法人 環境再生保全機構で配布、およびこのサイトで視聴できるため参考にされたい。

(ケアネット 稲川 進)

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