働き盛りを襲う難渋する腰痛の正体

提供元:ケアネット

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公開日:2014/12/08

 

 12月3日、アッヴィ合同会社とエーザイ株式会社は、都内で「長引く腰痛を見過ごさない!」をテーマに共催でプレスセミナーを開催した。セミナーでは、「“怠け病”ともみられがちな男性若年層に潜む難病『強直性脊椎炎』とは?」と題し、疾患に関するレクチャーが行われた。

国民病である腰痛を分析する
 はじめに「国民病の腰痛と知られていない強直性脊椎炎について」と題し、織田 弘美氏(埼玉医科大学医学部整形外科学 教授)より、いわゆる「腰痛」に関する概要と「強直性脊椎炎」に関する説明が行われた。

 「腰痛」は、厚生労働省の調査によると、男性では有訴者率の1位、女性では「肩こり」に続く2位となっており、身近な疾患として知られている。ただ、その定義については、確立したものはなく、主に疼痛部位(解剖的な位置)、有症期間(急性、亜急性、慢性)、原因などから総合して診断される。たとえば、原因別分類であれば、脊椎由来、神経由来、内臓由来、血管由来、心因性、その他に分類され、整形外科をはじめとしてさまざまな専門領域で診療されているとのことである。

 そして、鑑別診断では、動作に関係ない痛みであれば整形外科以外の疾患が考えられること、動作に関係のある痛みの場合、安静でも痛みがあれば炎症や腫瘍が、動作時だけ痛めば腰痛症、骨粗鬆症、腰椎分離・すべり症などが考えられると説明した。

 次に、腰痛を起こす整形外科疾患として、腰痛症、変形性腰椎症、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎分離症・腰椎すべり症、骨粗鬆症などを紹介、その原因と症状を述べた。そのうえで、腰痛を呈するその他の疾患として、脊椎関節炎、乾癬性関節炎、急性ぶどう膜炎、反応性関節炎などを挙げ、これらを網羅する形で強直性脊椎炎が存在すると解説した。

 強直性脊椎炎の診断では、(1)発症年齢40歳未満、(2)潜行性に発症、(3)体操で改善、(4)安静では改善しない、(5)夜間疼痛(起き上がると改善する)の5項目のうち、4項目に該当する場合は本症が疑われる。とくに動作を行うと軽快するのは、他の腰痛と異なるポイントとのことである。
 織田氏は「腰痛患者の中に慢性で長引く患者がいた場合、本症も疑ってもらいたい」とレクチャーを終えた。

痛みを我慢して仕事を続ける患者像
 続いて「長引く腰痛に関連する強直性脊椎炎について」と題し、門野 夕峰氏(東京大学医学部整形外科・脊椎外科 講師)が、強直性脊椎炎の具体的な診療内容や、本症がQOLに及ぼす影響について説明を行った。

 強直性脊椎炎は、社会的に広く知られていないことから、初発から確定診断まで9年程度要している現状を紹介。患者は、症状が進行すると外見的に問題が無いようでも脊椎のこわばりから動作が不自然になったり(たとえば首の可動ができないなど)、周囲の期待する動きができなかったりすることで、誤解を受けているといった状況を説明した。

 強直性脊椎炎の具体的な症状については、背部痛、関節炎などのほか、画像所見はMRIでの仙腸関節炎陽性やX線での仙腸関節炎が観察されると解説。

 また、3ヵ月以上続く腰痛を有する人(n=1,236)へのアンケート調査を紹介し、約8割の人が痛みの程度を「かなりつらい」「つらい」と感じているにもかかわらず、現在、医療機関を受診している人は10%にとどまり、多くの人が「痛み」を我慢しているという状況を指摘した。また、その「痛み」により、約60%の人が仕事のモチベーションが低下したとしており、休職などで労働生産性が低下している現状が明らかになった。

 強直性脊椎炎の治療では、痛みにはNSAIDsを使用した対症療法と脊椎病変への運動療法、理学療法が行われているが、近年ではTNF阻害薬も使用されていると説明。CRP正常値群と高値群におけるNSAIDsの効果を比較した試験では、NSAIDs治療継続群のほうが同間欠群よりも予後良好との報告や、TNF阻害薬とNSAIDsの比較では、TNF阻害薬処方群のほうがmSASSS変化で4年目以降に効果発現することなどが報告された。

 最後に門野氏は、強直性脊椎炎を疑ったら、まずはリウマチや整形外科の専門医を探すこと、WEBなどで情報を収集することを勧め、早期に治療を受けてもらいたいとレクチャーを終えた。

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