抗精神病薬誘発性持続勃起症への対処は

提供元:ケアネット

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公開日:2014/05/07

 

 持続勃起症(プリアピスム)は、性的刺激とは関係なく陰茎の勃起状態が、3時間以上続く状態であり、痛みを伴うことが多い。持続勃起症は泌尿器科的な緊急事態で重篤な合併症を引き起こす可能性がある。持続勃起症の発症の25~40%は薬物が原因で、抗うつ薬、降圧薬、抗凝固薬、交感神経α受容体遮断薬ほか精神を活性化する物質(アルコール、コカイン、大麻など)などが含まれるが、薬物関連の持続勃起症の約50%は抗精神病薬に起因するという。モロッコ・Ar-Razi大学精神科病院のJ. Doufik氏らは、抗精神病薬により誘発された持続勃起症とその対処について、症例報告を行った。Encephale誌オンライン版2014年4月4日号の掲載報告。

持続勃起症の症例には現状ではアミスルプリドのような薬剤が適している

 研究グループは、とくに非安定性の精神疾患患者において、臨床医はこのまれな副作用とその処置の困難さを認知しておくべきであるとして本症例報告を行った。

 抗精神病薬により誘発された持続勃起症の症例とその対処の概要は以下のとおり。

・患者は22歳、統合失調症と診断されたモロッコ人男性。精神疾患エピソードの治療のため、精神科病院に初めて入院していた。
・患者は、当初15mg/日のハロペリドール投与を受けていた。7日後、持続勃起症を発症した。
・患者はただちに泌尿器科に紹介され、海綿体の吸引と洗浄を行うことが提案されたが、患者が拒否したため、実行できなかった。しかしその後10時間後に勃起は自然に萎縮した。
・ハロペリドールの投与は中断され、4日後患者はオランザピン10mg/日投与に切り替えられた。
・10日後、患者は2度目の持続勃起症を呈した。そのため、オランザピンも投与が中断された。
・緊急処置として、海綿体の吸引と洗浄を行われ、陰茎の部分的萎縮に至った。
・2日後、治療が行われていないにもかかわらず、患者は再び持続勃起症を呈した。
・陰茎の血行再建術が提案されたが、また患者が拒否したため施行には至らなかった。
・最終的に、患者はアミスルプリド(国内未発売)400mg/日が投与され、良好なアウトカムを得た。
・持続勃起症は、1ヵ月後に消失したが、海綿体の線維化と部分的な勃起不全が残った。

 上記を踏まえた著者らの論点は次のとおり。

・持続勃起症の発生に関する、抗精神病薬の正確な寄与機序はほとんどわかっていないが、多様な要因が関わっていると思われた。
・仮説として最も言及されているのは神経筋の関与である。すなわち、抗精神病薬の作用として類似してみられる、海綿体のα-1アドレナリン様作用受容体の活性を阻害するというものである。
・精神疾患患者における持続勃起症の発症、とくに代謝不全の時期における発症は、医療スタッフにとって数多くの難題をもたらすことになる。
・第一に、持続勃起症の副作用について患者が認識していないこと、それにより重篤な結果を招く可能性があること。
・第二に、抗精神病薬治療の投与量および投与期間と、1つの持続勃起症の発現との関連、およびそれ以上の発症との関連が判明していておらず、予測が難しいこと。
・第三に、そのほかの抗精神病薬の選択と開始がチャレンジなことである。
・文献では、多くの持続勃起症例が、従来および非定型の両者の抗精神病薬について報告されている。しかしながら、報告者の多くはこうした患者に与えられるべき選択肢については触れていなかった。
・そうした中で現状では、α-アドレナリン作用性がないアミスルプリドのような薬剤が、こうした持続勃起症の症例に適しているようであった。
・持続勃起症は、抗精神病薬治療においてまれではあるが重篤な有害事象である。
・持続勃起症のリスクについて患者に知らせることは、症状の早期報告とともに、勃起不全の回避に役立つと思われた。
・そのほかの抗精神病薬に切り替える場合は、α-1阻害性を持たないものが、通常は推奨される。

(ケアネット)