統合失調症では前頭葉の血流低下による認知障害が起きている:東京大学 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2013/07/15 前頭前野は、ワーキングメモリのような基本的な認知機能に関連する。一方で吻側野は、認知機能と現実社会の活動性とを統合する機能を有する。東京大学の小池 進介氏らは、統合失調症患者における、ワーキングメモリタスク中の血流変化を測定し検討した。その結果、統合失調症では前頭葉の血流低下による認知障害が示唆された。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2013年6月3日号の掲載報告。 東京大学の小池 進介氏らは、統合失調症患者と健常対照者について、ワーキングメモリタスク中の血流変化を測定し比較検討した。その結果、両群では対照的な変化がみられ、健常対照者では腹外側前頭前野(VLPFC)の両側性に有意な血流増大がみられたが、統合失調症患者では認められなかった。また、健常対照者では背外側前頭前野(DLPFC)や前頭極皮質(FpC)の血流は有意に低下するが、統合失調症患者の同分野では広範囲に血流増大が認められたことを報告した。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2013年6月3日号の掲載報告。 DLPFCやVLPFCを含む前頭前野は、ワーキングメモリのような基本的な認知機能に関連する。一方でFpCのような吻側野は、認知機能と現実社会の活動性とを統合する機能を有する。機能的MRIによる先行研究において、認知負荷の変化に対するDLPFC活性パターンが、統合失調症患者と健常対照者では、異なることが示されていた。しかし、前頭前野と吻側野との関連について、非限定的条件下における評価はなされていなかったという。 研究グループは、統合失調症患者と健常対象者について、異なる認知負荷を与えるNバック課題ワーキングメモリタスク中の血流変化を、多チャンネル近赤外線分光法(NIRS)を用いて測定し、両群の脳内活性について評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・被験者は、統合失調症患者26例、健常対照者(年齢、性、プレ発症知能で適合)26例であった。 ・健常対照者は、両側性VLPFCでは有意なタスク関連の血流増大を示し、DLPFCでは有意なタスク関連の血流低下が示された。認知負荷のタスクがより大きくなるほど、より強いシグナル変化が認められた。 ・対照的に統合失調症患者は、両側性DLPFCとFpCを含む広範囲の吻側野において血流増大が認められた。しかし、認知負荷増大に関連した血流の低下および増大は、いずれもみられなかった。 ・今回の多チャンネルNIRS研究の結果、統合失調症患者では認知負荷と関連した血流増大はみられなかったことが示された。すなわち統合失調症では、前頭葉の血流低下による認知障害が示唆された。 ・また、統合失調症患者では、両側性DLPFCとFpCというより広範な前頭前野における血流増大が認められた。それは前頭葉の血流増大を補完的に図る反応であることが示唆された。 関連医療ニュース 早期統合失調症、認知機能にGABA作動性抑制が関連 治療抵抗性の双極性障害、認知機能への影響は? アルツハイマー病の進行抑制に関わる脳内分子を特定 (ケアネット) 原著論文はこちら Koike S et al. J Psychiatr Res. 2013 Jun 3. [Epub ahead of print] 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 手術低~中等度リスク重症大動脈弁狭窄症、TAVI vs.SAVRの1年成績/NEJM(2024/04/26) 狭小弁輪を伴う大動脈弁狭窄症へのTAVR、自己拡張型弁vs.バルーン拡張型弁/NEJM(2024/04/26) 若年乳がんサバイバーにおける2次原発性乳がんのリスク因子/JAMA Oncol(2024/04/26) アレクチニブによるALK陽性肺がん術後補助療法をFDAが承認/中外(2024/04/26) うつ病の第2選択治療、機械学習で最適化できるか(2024/04/26) テレビや動画の視聴時間の長さは夜間頻尿リスクに関連(2024/04/26) ChatGPTは医師の10倍の速さで事務作業をこなす(2024/04/26) 1型糖尿病患者の血糖変動の認知機能への影響(2024/04/26)