脳神経外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:10

早期アルツハイマー病患者のQOLに対するレカネマブの有用性~第III相試験

 レカネマブは、アミロイドβプロトフィブリルに高い親和性を示すヒト化IgG1モノクローナル抗体である。第III相試験において、レカネマブは早期アルツハイマー病のアミロイドマーカーを減少させ、18ヵ月時点での認知および機能の臨床的エンドポイントの低下を軽減することが示唆されている。カナダ・Toronto Memory ProgramのSharon Cohen氏らは、Clarity AD試験での健康関連QOL(HRQoL)の結果について、評価を行った。その結果、レカネマブは、HRQoLの相対的な維持および介護者の負担軽減と関連しており、さまざまなQOL尺度においてベネフィットが確認された。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌2023年号の報告。

日本人の軽度認知障害や早期認知症患者向けスマートフォンアプリの有用性

 順天堂大学の浜口 玲央氏らは、ライフクエストが開発した軽度認知障害(MCI)および早期認知症患者向けのスマートフォンアプリケーション「LQ-M/D App」の実現可能性、有用性、潜在的な効果を評価するため、本研究を実施した。Frontiers in Digital Health誌2023年9月12日号の報告。  「LQ-M/D App」は、認知機能、身体運動トレーニング、生活習慣の習得機能およびユーザーエンゲージメントを強化するために、アップデート後に追加された継続性向上機能を有するMCIおよび早期認知症患者向けのスマートフォンアプリケーションである。継続性向上機能としては、トレーニング内容の最適化、疾患教育機能、ファミリーアプリによる家族でのモニタリングの機能が含まれる。

認知症入院患者におけるせん妄の発生率とリスク因子

 入院中の認知症高齢者におけるせん妄の発生率および関連するリスク因子を特定するため、中国・中日友好病院のQifan Xiao氏らは本調査を実施した。その結果、入院中の認知症高齢者におけるせん妄の独立したリスク因子として、糖尿病、脳血管疾患、ビジュアルアナログスケール(VAS)スコア4以上、鎮静薬の使用、血中スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)レベル129U/mL未満が特定された。American Journal of Alzheimer's Disease and Other Dementias誌2023年1~12月号の報告。  対象は、2019年10月~2023年2月に総合病棟に入院した65歳以上の認知症患者157例。臨床データをレトロスペクティブに分析した。対象患者を、入院中のせん妄発症の有無により、せん妄群と非せん妄群に割り付けた。患者に関連する一般的な情報、VASスコア、血中CRPレベル、血中SODレベルを収集した。せん妄の潜在的なリスク因子の特定には単変量解析を用い、統計学的に有意な因子には多変量ロジスティック回帰分析を用いた。ソフトウェアR 4.03を用いて認知症高齢者におけるせん妄発症の予測グラフを構築し、モデルの検証を行った。

2型糖尿病の罹病期間と大脳皮質の厚さとの間に負の関連

 2型糖尿病患者の罹病期間と大脳皮質の厚さとの間に、負の関連が見られるとする報告が発表された。米ミシガン大学アナーバー校のEvan L. Reynolds氏らが米国先住民を対象に行った研究の結果であり、詳細は「Annals of Clinical and Translational Neurology」に7月30日掲載された。大脳皮質の厚さ以外にも、灰白質体積の減少や白質高信号領域の体積の増加という関連が認められたという。  認知症の有病率が世界的に上昇しており、その理由の一部は肥満や2型糖尿病の増加に起因するものと考えられている。また、糖尿病合併症と認知機能低下との関連も報告されている。一方、米国先住民であるピマインディアンは肥満や2型糖尿病の有病率が高く、糖代謝以外の代謝異常や慢性腎臓病の有病率も高い。しかしこれまでのところ、この集団を対象とする認知症リスクの詳細な検討は行われていない。これを背景としてReynolds氏らは、2型糖尿病罹病歴の長いピマインディアン51人を対象として、認知機能検査および脳画像検査による認知症リスクの評価結果と、糖代謝マーカーを含めた代謝関連臨床検査データとの関連を検討した。

過去30年間における世界の頭痛有病率~世界疾病負荷研究

 近年、頭痛は世界的な健康課題として大きく注目されている。この懸念は、とくに低~中所得国で顕著であり、青少年や若年成人における有病率の増加に現れている。このような頭痛の急増により、頭痛患者のQOLは常に低いものとなっている。しかし、世界的な影響にもかかわらず、若年層を対象に頭痛の影響を調査した包括的な研究は、いまだ十分ではない。中国・上海交通大学のXin-Yu Li氏らは1990~2019年の30年間にわたり、15~39歳における頭痛の世界的な有病率を定量化するため、本研究を実施した。結果を踏まえて著者らは、片頭痛と緊張性頭痛(TTH)は世界の健康において大きな課題であるとし、その影響の強さは国によって違いがあり、女性、30~39歳、社会人口統計学的指数(SDI)が高い集団においては、とくに影響が大きいと指摘している。The Journal of Headache and Pain誌2023年9月18日号の報告。

急性虚血性脳梗塞に対する早期の降圧治療、発症8日目からの降圧治療開始との比較で90日後の死亡や神経学的後遺症に有意差なし(解説:石川讓治氏)

血栓溶解療法を行わない発症後24~48時間の急性虚血性脳梗塞患者における収縮期血圧140~220mmHgに対して、7日以内に140/90mmHg未満を目指して早期に降圧治療を行った群と、降圧薬を7日間中止後8日目以降に140/90mmHg未満を目指して遅れて降圧治療を開始した群の間で、90日後の死亡や神経学的後遺症のリスクを比較した研究である。早期降圧治療群において7日後の血圧が有意に低かったが、14日後の血圧は両群で有意差は認められず、その結果、90日後の死亡や神経学的後遺症のリスクには有意差はなく、むしろ早期降圧治療群において1.18倍のリスク増加が認められる傾向があった(p=0.08)。

日本で認知症の評価に使用される神経心理学的検査の現状

 国立長寿医療研究センターの前島 伸一郎氏らは、認知症専門医が臨床現場で使用する評価ツール、その使用理由、評価に関連する因子を調査する目的で、認知症専門医へのアンケート調査を実施した。その結果、認知症患者に対する神経心理学的検査は、「病態生理の把握」と「診断補助」が主な目的であるにもかかわらず、多くの評価法が診断時間内に短時間で実施可能なスクリーニング法として選択されていた。また、生活に支障を来す認知症患者の治療において、今後の課題は、専門医が重要視する介護負担やQOLの評価が十分に行われていない点であることが明らかとなった。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2023年9月25日号の報告。

高齢統合失調症患者における認知症発症の神経病理学的根拠

 統合失調症患者は、そうでない人よりも認知症発症リスクが高いことが、臨床研究で報告されている。しかし、過去の神経病理学的研究では、統合失調症患者におけるアルツハイマー病の発症率は対照群と差異がないことが示唆されている。これらの一貫性のない結果は、アルツハイマー病以外の認知症を包含したことが原因である可能性があるが、高齢統合失調症患者を対象とした現在の神経病理学的分類に基づく臨床病理学的研究は、ほとんど行われていなかった。名古屋大学の荒深 周生氏らは、高齢統合失調症患者における認知症発症の神経病理学的根拠を調査するため、本研究を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年9月14日号の報告。

日本人薬物乱用頭痛に対するフレマネズマブの有効性~多施設共同RCT事後分析

 慢性片頭痛(CM)患者は、急性頭痛薬を服用していることが多く、その結果として薬物乱用(MO)状態に至ることが少なくない。静岡赤十字病院の今井 昇氏らは、MOの有無を問わない日本人CM患者に対するフレマネズマブの有効性を評価するため、第IIb/III相試験の事後分析を実施した。その結果、フレマネズマブはMOの有無にかかわらず、日本人CM患者の片頭痛予防に有効であり、MOの軽減にも有益であることが示唆された。Neurology and Therapy誌オンライン版2023年9月11日号の報告。

急性脳梗塞、単純CT診断下で血管内血栓除去術vs.薬物治療単独/Lancet

 患者を選定する画像診断に、造影剤を用いない単純CTを用いる環境下では、主幹動脈閉塞の大梗塞が認められた急性虚血性脳卒中患者において、血管内血栓除去術は機能的アウトカムの改善および死亡率低下と関連することが、ドイツ・ハイデルベルク大学病院のMartin Bendszus氏らによる、前向き多施設共同非盲検無作為化試験の結果で示された。最近のエビデンスとして、急性脳梗塞では血管内血栓除去術の有益な効果が示されている。しかしながら、それらの試験はマルチモーダル脳画像に依拠しており、臨床現場で使用されているのは主に単純CTであることから本検討が行われた。Lancet誌オンライン版2023年10月11日号掲載の報告。