腎臓内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:19

アロプリノールはCKDの進行を抑制するか?/NEJM

 進行リスクが高い慢性腎臓病(CKD)患者において、アロプリノールによる尿酸低下療法はプラセボと比較し、推定糸球体濾過量(eGFR)の低下を遅らせることはなかった。オーストラリア・St. George HospitalのSunil V. Badve氏らが、アロプリノールによる尿酸低下療法の有効性を検証した研究者主導の無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Controlled Trial of Slowing of Kidney Disease Progression from the Inhibition of Xanthine Oxidase:CKD-FIX」の結果を報告した。血清尿酸値の上昇はCKDの進行と関連している。しかし、アロプリノールを用いた尿酸低下療法が進行リスクの高いCKD患者のeGFR低下を抑制できるかどうかは不明であった。NEJM誌2020年6月25日号掲載の報告。

静脈栄養製剤の「使用上の注意」改訂で透析・血液ろ過患者は慎重投与に/厚労省

 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会(医薬品等安全対策部会安全対策調査会)は2020年6月25日付の課長通知で、一般用静脈栄養製剤及び肝不全用アミノ酸製剤の添付文書の改訂指示を発出した。改訂対象には一般用静脈栄養製剤計25品目(アミノ酸製剤10品目[アミパレン:大塚製薬工場 ほか]、末梢静脈栄養用製剤5品目[ビーフリード:大塚製薬工場 ほか]、中心静脈栄養用基本液4品目[ハイカリック:テルモ ほか]、中心静脈栄養用キット製剤6品目[フルカリック:テルモ ほか])と肝不全用アミノ酸製剤4品目(アミノレバン:大塚製薬工場 ほか)が該当する。

新型コロナで低カリウム血症、その原因は?

 中国・温州医科大学のDong Chen氏らは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者における治療転帰との関連性を見いだすため、低カリウム血症の有病率、原因、および臨床的影響を調査する目的で研究を行った。その結果、COVID-19患者において低カリウム血症の有病率が高いこと、さらにその原因として、新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)がアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合することにより、ACE2(レニン-アンジオテンシン系を抑制)が分解され、レニン-アンジオテンシン系が活性化して持続的に腎からカリウムが排泄されることが示唆された。JAMA Network open誌2020年6月1日号掲載の報告。

亜鉛欠乏症診療ガイドライン、味覚障害など症例別の治療効果が充実

 亜鉛欠乏症は世界で約20億人いるものの、世界的に認知度が低い疾患である。そして、日本も例外ではないー。日本臨床栄養学会ミネラル栄養部会の児玉 浩子氏(帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科教授・学科長)が委員長を務め、2018年7月に発刊された『亜鉛欠乏症診療ガイドライン2018』の概要がInternational Journal of Molecular Sciences誌2020年4月22日号に掲載された。  亜鉛欠乏症診療ガイドライン2018にて、同氏らは亜鉛欠乏症の診断基準を以下のように示した。

COVID-19と共存する診療の指針を示す動画公開/高血圧学会

 2020年初頭より長らく続いたCOVID-19の感染拡大と、それに伴う外出自粛や制限が相次いで緩和され、非常時から通常時へと戻る兆しが見え始めた。しかしながら、今後はCOVID-19を包含しながらの“新たな日常”となることは間違いない。そうしたCOVID-19を念頭に置いた高血圧診療をどう進めるべきかについて指針を示すべく、日本高血圧学会(理事長:伊藤 裕)はこのほど、各領域のスペシャリストによる解説動画コンテンツを作成。5月22日よりYouTubeの学会公式チャンネルで公開している。

重症AKIの腎代替療法、開始遅延でも死亡率に影響なし/Lancet

 生命を脅かす合併症がない重症の急性腎障害(AKI)患者への腎代替療法(RRT)の開始時期については、活発な議論が続いている。フランス・AP-HP Avicenne HospitalのStephane Gaudry氏らは、RRTの緊急適応のない重症AKI患者において、RRTを待機的に開始する遅延的戦略は、早期開始戦略と比較して生存への影響に差はなく、緊密な患者モニタリングの下で安全に延期が可能であることを示した。研究の詳細は、Lancet誌2020年5月9日号に掲載された。RRTの早期開始により、代謝異常や、死亡増加に関連する他の合併症のコントロールが改善する可能性があるが、医原性の合併症(低血圧症、出血、感染症、低体温症)をもたらす可能性がある。一方、RRTの開始を意図的に遅らせることで、腎機能が自然に回復するまでの時間を確保でき、RRTの必要性を除去する可能性があるという。

カリウム代用塩の使用で心血管死が9割減?/BMJ

 中国において全国的に、食事で摂取する塩をカリウム代用塩にすることで、心血管疾患死の約9分の1を予防できるとの推定結果が示された。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のMatti Marklund氏らが、任意の塩(卓上または料理で使用する塩)をカリウムが豊富な塩(カリウム代用塩)へ全国的に置き換えることが、中国における死亡率および心血管疾患死にどのような影響を及ぼすかを推定した研究結果を報告した。ナトリウムの摂取が多く、カリウムの摂取が少ない中国や他の国において、カリウム代用塩の使用は血圧を低下させ心血管疾患を予防する有望な戦略と考えられている。しかし、相対的な有益性や有害性について、とくに慢性腎臓病(CKD)患者における高カリウム血症や心臓死のリスクにおいては明らかになっておらず、カリウム代用塩の普及は限定的となっている。結果を踏まえて著者は、「高カリウム血症のリスクを考慮にいれても、相当の有益性がCKD患者にとってもあると推定された」と述べている。BMJ誌2020年4月22日号掲載の報告。

急性上部消化管出血に対する緊急内視鏡の適切な施行時期は(解説:上村直実氏)-1225

吐血や下血を主訴とする急性上部消化管出血の死亡率および外科的手術を減少するために、発症から24時間以内の緊急内視鏡検査が推奨されている。日本の臨床現場でも緊急内視鏡の施行が早ければ早いほど救命率が増加すると考えられているものの、緊急内視鏡検査をいつでも施行できる診療体制を有する施設は限られていることも事実である。 最近、重篤な急性上部消化管出血症例を対象として緊急内視鏡検査の適正な時期を検証する目的で、消化器科へ紹介された後6時間以内に検査する緊急施行群と6時間から24時間以内の早期施行群に分けたRCTが行われた結果、検査施行時期が生命予後や再出血率に影響しないことがNEJM誌に発表された。

衝撃のISCHEMIA:安定冠動脈疾患に対する血行再建は「不要不急」なのか?(解説:中野明彦氏)-1224

安定型狭心症に対する治療戦略は1970年代頃からいろいろな構図で比較されてきた。最初はCABG vs.薬物療法、1990年代はPCI(BMS) vs.CABG、そして2000年代後半からPCI(+OMT)vs.OMT(最適な薬物療法)の議論が展開された。PCI vs.OMTの代表格がCOURAGE試験(n=2,287)1)やBARI-2D(n=2,368)、FAME2試験(n=888)である。とりわけ米国・カナダで行われ、総死亡+非致死性心筋梗塞に有意差なしの結果を伝えたCOURAGE試験のインパクトは大きく、米国ではその後の適性基準見直し(AUC:appropriate use criteria)や待機的PCI数減少につながった。一方COURAGEはBMS時代のデータであり、症例選択基準やPCI精度にバイアスが多いなど議論が沸騰、結局「虚血領域が広ければPCIが勝る」とのサブ解析2)が出て何となく収束した。しかしこの仮説は後に否定され3)、本試験15年後のfollow-up4)も結論に変化はなかった。