内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:225

Delta株に対する現状ワクチンの予防効果―液性免疫、細胞性免疫からの考察(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

 新型コロナ感染症にあって、感染性、病原性が高いVariants of Concern(VOC:Alpha株、Beta株、Gamma株、Delta株)が世界を席巻している。その中で、5月以降、Delta株(インド株、B.1.617.2)の勢力が増し、世界に播種するウイルスの中心的存在になりつつある。現状で使用可能なワクチンは武漢原株のS蛋白遺伝子配列をplatformとして作成されたものであり、S蛋白に複数の遺伝子変異を有するVOCに対して、どの程度の予防効果を発揮するかについては注意深い検証が必要である。本論評では、WallらとEdaraらの2つの論文を基に、Delta株を中心にVOCに対する現状のワクチンの効果を液性免疫(中和抗体)、細胞性免疫(T細胞反応)の面から考察する。

ヘパリン介入のチャンスのある重症化前の新型コロナウイルス感染(解説:後藤信哉氏)

一般に、疾病は早期介入が重要である。新型コロナウイルスの場合、ウイルス感染という比較的単純な原因が炎症、肺炎などを惹起する。血管内皮細胞へのウイルス浸潤から始まる血栓症も初期の原因は比較的単純である。ウイルス感染に対して生体が反応し、免疫系が寄与する病態は複雑になる。複雑な病態は単純な治療では脱却できない。重症例を確実に入院させるとともに、早期の症例に対する医療介入の意味を示したのが本論文である。

コロナ治療薬「ロナプリーブ」、短期入院や宿泊療養でも使用可/厚労省

 厚生労働省は8月13日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として先月、国内における製造販売を承認した「ロナプリーブ点滴静注セット300」「同1332」について、医療機関への配分を指示する事務連絡(2021年7月20日付で発出)の一部を改訂。主に軽症者~中等症を受け入れる医療機関における短期入院や、宿泊療養施設での使用も想定されるとの認識を示し、新たに記載を追加した。  今回の追記は、事務連絡の別添にある質疑応答集に加えられたもの。「ロナプリーブ」は、現状として安定的な供給が難しいことから、当面の間、重症化リスクのある入院患者が投与対象となり、本剤の配分を受けられる医療機関は、投与対象者を受け入れている病院または有床診療所とされていた。

腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021、“腰痛の有無”を削除

 『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021 改訂第2版』が5月に発刊された。2011年の初版を踏襲しつつも今版では新たに蓄積された知見を反映し、診断基準や治療・予後に至るまで構成を一新した。そこで、腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン(GL)策定委員長の川上 守氏(和歌山県立医科大学 名誉教授/済生会和歌山病院 院長)に、脊柱管狭窄症の評価方法や難渋例などについて話を聞いた。  腰部脊柱管狭窄症診療ガイドラインの目的の1つは、これを一読することで今後の臨床研究の課題を見つけてもらい、質の高い臨床研究が多く発表されるようになることだが、脊柱管狭窄症の“定義”自体に未だ完全な合意が得られていない。そのため診断基準も日進月歩で、明らかになった科学的根拠を基に随時更新を続けている。今回は腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン初版の診断基準で提示していた「歩行で増悪する腰痛は単独であれば除外する」を削除し、以下のとおりに「腰痛の有無は問わない」と明記された。

片頭痛発作の発症抑制薬、アイモビーグ皮下注発売/アムジェン

 アムジェン株式会社は2021年8月12日、ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤 エレヌマブ(遺伝子組換え)(商品名:アイモビーグ)を発売したことを発表した。本剤は2021年6月に「片頭痛発作の発症抑制」の効能又は効果で製造販売承認を取得していた。  本剤はCGRP受容体を阻害することで片頭痛患者における片頭痛を予防できるように特異的にデザインされた完全ヒトモノクローナル抗体。複数の臨床試験で本剤の安全性および有効性が検討されている。4,000人以上の患者が本臨床試験プログラムに参加した。アイモビーグは、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、スイスメディック(Swissmedic)、オーストラリア医療製品管理局(TGA)など、世界の多くの規制当局から成人の片頭痛予防薬として承認されている。

重症化前のCOVID-19入院患者、ヘパリン介入で転帰改善/NEJM

 非重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の治療において、治療量のヘパリンを用いた抗凝固療法は通常の血栓予防治療と比較して、集中治療室(ICU)における心血管系および呼吸器系の臓器補助なしでの生存退院の割合を改善し、この優越性はDダイマー値の高低を問わないことが、カナダ・トロント大学のPatrick R. Lawler氏らが実施した、3つのプラットフォーム(ATTACC試験、ACTIV-4a試験、REMAP-CAP試験)の統合解析で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年8月4日号で報告された。

新型コロナウイルスにより急性心筋梗塞と脳梗塞のリスクが上昇(解説:佐田政隆氏)

2021年8月8日に東京オリンピック2020が終了したところであるが、ニュースでは新型コロナウイルスの感染拡大の話題が連日取り上げられている。デルタ株が猛威を振るい各都道府県で新規感染者数の記録が更新され、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の施行地域も拡大している。また、医療現場のひっ迫状態に関する報道も続く。このような中、軽症者のみならず中等症の患者も一部は自宅待機することと、政府の方針が転換された。しかし、軽症者でも急変して死に至ることがあることが報告され、在宅療養者の不安の声がテレビに映し出されている。

終末期の運動機能の低下は死亡と関連するか/BMJ

 高齢期初期の運動機能は死亡と強い関連があり、終末期の運動機能の減退は、全般的な運動機能の指標(椅子立ち上がり時間、SF-36の身体的側面のQOL要約スコア)では早期(それぞれ死亡の10年前と7年前)に、基本的/手段的日常生活動作(ADL)の制限では後期(死亡の4年前)に出現することが、フランス・パリ大学のBenjamin Landre氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年8月4日号に掲載された。  研究グループは、運動機能に関する複数の客観的または患者の自己申告による指標と死亡との関連の評価を目的に、前向きコホート研究を行った(米国国立老化研究所などの助成による)。

GIP/GLP-1受容体作動薬tirzepatideの血糖降下作用・体重減少作用はセマグルチドより優れている(解説:住谷哲氏)

デュアルGIP/GLP-1受容体作動薬として開発中のLY3298176は第3のインクレチン関連薬として有望である、とのコメントを2018年の本連載第986回で掲載した。それから3年でLY3298176はtirzepatideとして承認目前まで来ている。tirzepatideの2型糖尿病に対する臨床開発プログラムSURPASS ProgramにはSURPASS-1~6、SURPASS-AP-Comb、SURPASS-CVOT、SURPASS-J-Mono、SURPASS-J-Combの10試験があり、本論文はセマグルチドとのhead-to-head試験であるSURPASS-2についての報告である。

新型コロナ治療薬「レムデシビル」が薬価収載、10月にも流通へ

 ギリアド・サイエンシズ株式会社は8月12日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬「ベクルリー点滴静注用100mg」(一般名:レムデシビル)が、同日付で薬価収載されたと発表した。薬価は1瓶(100mg)当たり63,342円。  ベクルリーは、2020年5月1日に米国食品医薬品局(FDA)よりCOVID-19治療薬としての緊急時使用許可を受け、日本では同年5月7日に特例承認された。投与の対象となるのは、ECMO装着患者、人工呼吸器装着患者、ICU入室中の患者であって除外基準や基礎疾患の有無を踏まえ、医師の判断により投与することが適当と考えられる患者、および「ECMO装着、人工呼吸器装着、ICU入室」以外の入院患者うち、酸素飽和度94%(室内気)以下または酸素吸入が必要で、除外基準や基礎疾患の有無を踏まえ、医師の判断により投与することが適当と考えられる患者、となっている。