消化器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

SGLT2阻害薬が脂肪肝の改善に有効か

 SGLT2阻害薬(SGLT2-i)と呼ばれる経口血糖降下薬が、脂肪肝の治療にも有効な可能性を示唆する研究データが報告された。慢性的な炎症を伴う脂肪肝が生体検査(生検)で確認された患者を対象として行われた、南方医科大学南方医院(中国)のHuijie Zhang氏らの研究の結果であり、詳細は「The BMJ」に6月4日掲載された。  論文の研究背景の中で著者らは、世界中の成人の5%以上が脂肪肝に該当し、糖尿病や肥満者ではその割合が30%以上にも及ぶと述べている。脂肪肝を基に肝臓の慢性的な炎症が起こり線維化という変化が進むにつれて、肝硬変や肝臓がんのリスクが高くなってくる。

PPI・NSAIDs・スタチン、顕微鏡的大腸炎を誘発するか?

 顕微鏡的大腸炎は、高齢者における慢性下痢の主な原因の1つであり、これまでプロトンポンプ阻害薬(PPI)や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、スタチンなどの一般的に用いられる薬剤との関連が指摘されてきた。しかし、スウェーデンで実施された全国調査の結果、これらの薬剤のほとんどは顕微鏡的大腸炎のリスクを増加させない可能性が示唆された。本研究は、Hamed Khalili氏(米国・マサチューセッツ総合病院)らの研究グループによって実施され、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2025年7月1日号で報告された。

がんサバイバーの脳卒中・心血管死リスク、大規模コホート研究で明らかに

 がんと診断された人(がんサバイバー)は、そうでない人と比較して心血管系疾患(CVD)を発症するリスクが高いことが報告されている。今回、がんサバイバーの虚血性心疾患・脳卒中による死亡リスクは、一般集団と比較して高いとする研究結果が報告された。大阪大学大学院医学系研究科神経内科学講座の権泰史氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association;JAHA」に5月15日掲載された。  近年、医療の進歩により、がん患者の生存率は大幅に向上している。しかし、その一方で、CVDが新たながんサバイバーの懸念事項として浮上している。CVDはがんサバイバーでがんに次ぐ死因であることが明らかになっており、疫学研究では、CVDによる死亡リスクが一般集団の約2倍であることも報告されている。従来の研究では、CVD全体による死亡リスクが調査されてきたが、特定のCVDに焦点を当てた研究は限られていた。そのような背景を踏まえ、筆者らは「全国がん登録(NCR)」データベースを用いて、国内のがん患者におけるCVDによる死亡リスクを調査するコホート研究を実施した。CVD全体のリスク評価に加え、虚血性心疾患、心不全、大動脈解離・大動脈瘤、虚血性脳卒中、出血性脳卒中といった特定のCVDについても解析を行った。

サルコペニア・フレイル、十分なエビデンスのある栄養療法とは?初の栄養管理ガイドライン刊行

 サルコペニア・フレイルに対し有効性が示された薬物療法はいまだなく、さまざまな栄養療法の有効性についての報告があるが、十分なエビデンスがあるかどうかは明確になっていない。現時点でのエビデンスを整理することを目的に包括的なシステマティックレビューを実施し、栄養管理に特化したガイドラインとしては初の「サルコペニア・フレイルに関する栄養管理ガイドライン2025」が2025年4月に刊行された。ガイドライン作成組織代表を務めた葛谷 雅文氏(名鉄病院)に、ガイドラインで推奨された栄養療法と、実臨床での活用について話を聞いた。

ICU入室患者に対する強化タンパク栄養の効果(解説:名郷直樹氏)

オーストラリアとニュージーランドの4つのICUを対象にした、経腸栄養を受けた患者に対する強化タンパク栄養(100g/L)と通常タンパク栄養(63g/L)を比較し、90日以内の死亡と入院していない日数を1次アウトカムとして評価した、クラスターランダム化、クロスオーバー、オープン試験である。クラスターランダム化は、4つの施設のうち2つずつを強化群、通常群に割り付け、さらに3ヵ月以上の間隔を空け、4つの時期においてそれぞれの施設で強化群と通常群に2回ずつ割り付けるデザインになっている。参加施設が少ないデメリットを、クロスオーバーにより両群に2回ずつ割り付けることでカバーするデザインといえる。両群の患者背景を見るとよくそろっており、4施設の研究でありながら大きな問題はなさそうである。

オピオイド使用がん患者へのナルデメジン、便秘予防にも有用~日本のRCTで評価/JCO

 オピオイドは、がん患者の疼痛管理に重要な役割を果たしているが、オピオイド誘発性便秘症を引き起こすことが多い。オピオイド誘発性便秘症に対し、ナルデメジンが有効であることが示されているが、オピオイド誘発性便秘症の予防方法は確立されていない。そこで、濵野 淳氏(筑波大学医学医療系 緩和医療学・総合診療医学 講師)らの研究グループは、ナルデメジンのオピオイド誘発性便秘症の予防効果を検討した。その結果、ナルデメジンはオピオイド誘発性便秘症に対する予防効果を示し、QOLの向上や悪心・嘔吐の予防効果もみられた。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌2024年12月号に掲載された。

バレット食道の経過観察、カプセルスポンジ検査が有用/Lancet

 英国・ケンブリッジ大学のW Keith Tan氏らDELTA consortiumは、食道全体から細胞を採取するデバイス(カプセルスポンジ)とバイオマーカーを組み合わせて、患者を3つのリスク群に層別化する検査法を開発し、英国の13施設にて2つの多施設前向きプラグマティック実装試験の一部として評価した結果、このリスク分類に基づく低リスクのバレット食道患者の経過観察では、内視鏡検査の代わりにカプセルスポンジを使用可能であることを明らかにした。内視鏡検査による経過観察はバレット食道の臨床標準であるが、その有効性は一貫していなかった。Lancet誌オンライン版2025年6月23日号掲載の報告。

がん診療に明日から役立つtips満載、第15回亀田総合病院腫瘍内科セミナー【ご案内】

 2025年7月20日(日)に、第15回亀田総合病院腫瘍内科セミナーが御茶ノ水での現地開催とWeb上のLIVE配信のハイブリッド形式で開催される。白井 敬祐氏(ダートマス大学腫瘍内科)、中村 能章氏(Department of Oncology, University of Oxford)、佐田 竜一氏(大阪大学大学院医学系研究科感染制御学)を講師として迎え、がん診療における臨床推論、救急対応、感染症、コミュニケーション方法など幅広い領域を扱う。亀田総合病院腫瘍内科スタッフによる、ベッドサイドで役立つ「実臨床における思考過程」を解説する講座も用意されており、がん診療において明日から役立つtipsを学ぶことができる内容となっている。

脂肪性肝疾患の診療のポイントと今後の展望/糖尿病学会

 日本糖尿病学会の第68回年次学術集会(会長:金藤 秀明氏[川崎医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科学 教授])が、5月29~31日の日程で、ホテルグランヴィア岡山をメイン会場に開催された。  今回の学術集会は「臨床と研究の架け橋 ~translational research~」をテーマに、41のシンポジウム、173の口演、ポスターセッション、特別企画シンポジウム「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」などが開催された。  近年登場する糖尿病治療薬は、血糖降下、体重減少作用だけでなく、心臓、腎臓、そして、肝臓にも改善を促す効果が報告されているものがある。

不適切な医療行為は一部の医師に集中~日本のプライマリケア

 日本のプライマリケアにおける「Low-Value Care(LVC:医療的価値の低い診療行為)」の実態を明らかにした大規模研究が、JAMA Health Forum誌オンライン版2025年6月6日号に掲載された。筑波大学の宮脇 敦士氏らによる本研究によると、抗菌薬や骨粗鬆症への骨密度検査などのLVCを約10人に1人の患者が年1回以上受けており、その提供は一部の医師に集中していたという。  LVCとは、特定の臨床状況において、科学的根拠が乏しく、患者にとって有益性がほとんどない、あるいは害を及ぼす可能性のある医療行為を指す。過剰診断・過剰治療につながりやすく、医療資源の浪費や有害事象のリスク増加の原因にもなる。本研究で分析されたLVCは既存のガイドラインや先行研究を基に定義され、以下をはじめ10種類が含まれた。 ●急性上気道炎に対する去痰薬、抗菌薬、コデインの処方 ●腰痛に対するプレガバリン処方 ●腰痛に対する注射