皮膚科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

がん免疫療法、投与時刻が効果に影響

 がん免疫療法の効果は、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を投与する時刻によって異なる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。進展型小細胞肺がん(extensive-stage small-cell lung cancer;ES-SCLC)患者を対象にしたこの研究では、15時より前にICIの点滴を受けた患者では、15時以降に点滴を受けた患者に比べて無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)が有意に長かったことが示されたという。中南大学(中国)湘雅医学院付属腫瘍病院のYongchang Zhang氏らによるこの研究結果は、「Cancer」に12月8日掲載された。Zhang氏は、「点滴を行う時刻の調整は、生存期間を延ばすための安価な方法となる可能性がある。追加費用も不要で、さまざまな医療現場で容易に実施できる簡単な介入だ」と述べている。

飛行機や病院の空気中の微生物は皮膚由来の無害な細菌が優勢

 飛行機の中や病院内の空気が気になる潔癖症の人を少し安心させる研究結果が報告された。米ノースウェスタン大学土木・環境工学准教授のErica Hartmann氏らによる研究で、機内や病院内の空気に含まれている微生物は、主に人の皮膚に常在する無害な細菌で構成されていることが明らかになった。この研究結果は、「Microbiome」に12月4日掲載された。  この研究では、使用済みマスクの外側表面と航空機のエアフィルターから微生物を回収し、そこに含まれるDNAを抽出してショットガンメタゲノム解析を行った。解析には、8,039時間使用された後に回収された航空機のエアフィルター1つと、飛行機利用者10人と、勤務後の医療従事者12人から入手した使用済みマスクが用いられた。

ワクチン接種率の低下により世界で麻疹患者が急増

 世界保健機関(WHO)は11月28日、麻疹(はしか)排除に向けた世界の進捗状況をまとめた報告書を発表した。それによると、2000年から2024年の間に、世界の麻疹による死亡者数は88%減少し、およそ5800万人の命が救われた。一方で、かつて麻疹排除を目前にした国々で再び感染が広がっている事実も明らかにされた。これは、麻疹ワクチンの定期接種を受けていない小児が増えていることを示唆している。報告書では、「世界的な麻疹排除の達成は、依然として遠い目標だ」と指摘されている。

わが国初の表皮水疱症の遺伝子治療薬への期待/Krystal Biotech

 Krystal Biotech Japanは、指定難病である栄養障害型表皮水疱症(DEB)の治療薬としてわが国では最初の遺伝子治療薬ベレマゲン ゲペルパベク(商品名:バイジュベック ゲル)が、適用承認・発売されたことに寄せ、都内でプレスセミナーを開催した。セミナーでは、表皮水疱症の病態、診療の解説や患者からの疾患での苦労や新しい治療薬への期待などが語られた。  「栄養障害型表皮水疱症と最新治療について」をテーマに夏賀 健 氏(北海道大学大学院医学研究院皮膚科学教室 准教授)が、本症の疾患概要と今回発売されたベレマゲン ゲペルパベクの臨床試験結果などを解説した。

「まずは金属除去」ではない? 金属アレルギー診療と管理の手引きを公開/日本アレルギー学会

 本邦では初となる金属アレルギーに特化した手引き『金属アレルギー診療と管理の手引き 2025』1)が、2025年9月26日に公開された。そこで、手引きの検討委員会の代表を務める矢上 晶子氏(藤田医科大学ばんたね病院 総合アレルギー科 教授)が、第74回日本アレルギー学会学術大会(10月24~26日)において、手引きの作成の背景と概要を紹介した。なお、手引きはアレルギーポータルの医療従事者向けページで公開されている。  本邦では「アレルギー疾患対策基本法」が定められており、喘息やアトピー性皮膚炎などの6疾患が重点的な対象疾患となっている。しかし、現状では金属アレルギーは対象疾患に含まれていない。この理由について、矢上氏は「若年で発症し、後年に金属製材料を使用するときに苦慮する方がいる」「患者は複数の診療科を受診するが連携した診療体制が不十分」「患者数が未知」といった背景があったと述べる。そこで「厚生労働科学研究事業で、それらを補う情報をまとめたほうが良いのではないかということで研究が始まり、疫学調査結果や検査法などをまとめて、手引きを作成する方向となった」とのことだ。これらの研究成果を集約した『金属アレルギー診療と管理の手引き2025』には、診療の流れや検査・管理の要点、多診療科・多職種が連携した診療体制の構築の重要性などが記載されている。

米国でアルファガル症候群による初の死亡例を確認

 米国で、ダニが媒介するまれな肉アレルギーであるアルファガル(α-gal)症候群による死亡例が初めて確認されたことを、米バージニア大学医学部のアレルギー専門医であるThomas Platts-Mills氏らが報告した。この症例報告は、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice」に11月12日掲載された。  Platts-Mills氏らによると、アルファガル症候群で死亡したのは、米ニュージャージー州在住の健康な47歳の男性である。この男性は、2024年夏、キャンプ先で夕飯に牛肉を食べた4時間後の深夜2時に、腹部に不快感を感じて目を覚ました。不快感はもがき苦しむほどの強さになり、下痢と嘔吐も生じたが、2時間後に容態は改善し、再び眠りについたという。翌朝、男性の体調は良く、5マイル(8km)歩いた後に朝食を食べた。夫婦でこの出来事について話し合い、医師に診てもらうことも考えたが、結局、受診しなかった。ただ、男性は息子の1人に「死ぬかと思った」と話したという。

アトピー性皮膚炎患者に最適な入浴の頻度は?

 アトピー性皮膚炎患者にとって入浴は判断の難しい問題であり、毎日の入浴が症状の悪化を引き起こすのではないかと心配する人もいる。こうした中、新たなランダム化比較試験で、入浴の頻度が毎日でも週に1~2回でも、入浴がアトピー性皮膚炎の症状に与える影響に違いはないことが明らかになった。  この試験を実施した英ノッティンガム大学臨床試験ユニットのLucy Bradshaw氏は、「アトピー性皮膚炎の人でも自分に合った入浴頻度を選べることを意味するこの結果は、アトピー性皮膚炎の症状に苦しむ人にとって素晴らしい知らせだ」と述べている。この臨床試験の詳細は、「British Journal of Dermatology」に11月10日掲載された。

アトピー性皮膚炎へのウパダシチニブ、増量および減量の有効性と安全性/BJD

 成人の中等症〜重症のアトピー性皮膚炎に対する、JAK1阻害薬ウパダシチニブのこれまでの主要な臨床試験では、15mg(UPA15)および30mg(UPA30)の固定用量1日1回投与による有効性と安全性が評価されてきた。カナダ・クイーンズ大学のMelinda Gooderham氏らは、日本を含む第IIIb/IV相無作為化国際多施設共同盲検treat-to-target試験を実施し、12週間の治療後の臨床反応に基づくUPA30への増量およびUPA15への減量の有効性と安全性を検討した。British Journal of Dermatology誌2025年12月号掲載の報告より。

乳がん化学療法中の頭皮冷却で発毛が回復しにくい患者の因子は?

 頭皮冷却は化学療法誘発性脱毛症(CIA)を軽減する効果的な介入として注目されており、脱毛抑制に加えて治療後の発毛促進も期待されている。しかし、一部の患者では頭皮冷却を実施しても持続性化学療法誘発性脱毛症(pCIA)が生じることがある。今回、韓国・成均館大学校のHaseen Lee氏らは、乳がん患者を対象に、頭皮冷却を実施してもpCIAが生じる患者の臨床的・遺伝的因子を解析し、NPJ Breast Cancer誌2025年11月12日号で報告した。  研究グループは、韓国・ソウルのサムスンメディカルセンターで、アントラサイクリン系および/またはタキサン系抗がん剤による化学療法と頭皮冷却を併用したStageI~IIIの乳がん女性123例を解析した。主要評価項目はpCIAで、化学療法6ヵ月後に発毛が認められない、または不完全と定義した。

日本のプライマリケア受診の蕁麻疹患者、約3分の1が罹患期間3年以上

 日本の9つの皮膚科プライマリケアクリニックを受診した蕁麻疹患者約千例において、36.1%が罹患期間3年以上であることが明らかになった。罹患期間は、高齢患者、皮膚描記症(dermographism)およびコリン性蕁麻疹患者でより長い傾向がみられた。広島大学の齋藤 怜氏らによる、The Journal of Dermatology誌オンライン版2025年10月31日号への報告より。  本研究では、蕁麻疹の予後に関連する因子を検討するため、2020年10月1日~11月11日に9つの皮膚科プライマリケアクリニックを受診した蕁麻疹患者1,061例を対象に、罹患期間についての横断的解析を実施した。