循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:147

「豪華盛り合わせ」のパワーとオトク感(解説:今中和人氏)-1056

ひと昔前は「80代に心臓手術の適応があるか? ないか?」と真剣に議論されていた(ちなみに結論は「ケース・バイ・ケース」がお約束)が、手術患者は明らかに高齢化しており、そんなのいまや日常的。ただ、高齢者に多い併存症の1つに貧血がある。一方、心臓外科の2割前後はいわゆる「急ぎ」の症例で、その方々は自己血貯血どころではなく、昨今の情勢では待期手術でも、まったりした術前入院など許されない。だから心臓手術の患者に貧血があって、何か即効性のある良いことができないか、というのはきわめて現実的なシナリオである。

令和の新時代にはベアメタルステント不要である(解説:中川義久氏)-1054

新規の医療機器や薬剤を開発するときに、どのような項目を観察・測定して効果等を判定するかを定める必要がある。この評価項目のことをエンドポイントと呼び、有効性と安全性に大別される。冠動脈ステントの、有効性と安全性に関する一般的な認識は以下のものであった。ベアメタルステント(BMS)は、再狭窄が多く有効性は劣るが安全性に優れる。一方、薬剤溶出性ステント(DES)は、確実な再狭窄抑制効果から有効性は高いが安全性においてはBMSに劣る。それは、CypherとTAXUSに代表される第1世代DESでは、再狭窄抑制という有効性はあるが遅発性ステント血栓症に代表される安全性への懸念があったからである。このように、BMSとDESは、それぞれ「一長一短」があると理解されていた。

グルコサミン、心血管イベントを抑制/BMJ

 変形性関節症の痛みを軽減するためのグルコサミンの習慣的な補充療法が、心血管疾患イベントのリスクを低減しており、とくに喫煙者でその効果が高い可能性があることが、米国・テュレーン大学のHao Ma氏らによる前向きコホート研究で明らかとなった。研究の成果はBMJ誌2019年5月14日号に掲載された。グルコサミン補助剤を用いる補充療法は、変形性関節症の治療で一般的に使用されているが、疾患や関節痛の軽減への効果は議論が続いている。その一方で、最近の動物実験やヒトの横断研究により、心血管疾患の予防や死亡率の抑制において役割を担う可能性が示唆され、前向き研究のエビデンスが求められている。

脳梗塞リスク有するAF患者への経皮的植込み型頸動脈フィルターの有用性は?【Dr.河田pick up】

 脳梗塞リスクが高いものの、経口抗凝固薬が適さない心房細動(AF)患者に対しては、異なった脳梗塞予防の戦略が必要となる。両側の頸動脈に直接植込むことができる、新規のコイル型永久フィルターは、径が1.4mm以上の塞栓を捕捉するようにデザインされている。  この論文は、Icahn School of Medicine at Mount Sinai(米、ニューヨーク)のVivek Reddy氏とHomolka Hospital(チェコ、プラハ)のPetr Neuzil氏がJACC誌オンライン版5月3日号に発表したものである。米国では新規のデバイスに対するFDAの審査が厳しく、治験に時間がかかる。

重症OSAは非心臓手術後30日の心血管リスクと関連/JAMA

 非心臓大手術を受ける成人において、未診断の重症閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、術後30日の心血管合併症リスクの有意な増大と関連することが示された。中国・香港中文大学のMatthew T.V. Chan氏らが、1,218例を対象に行った前向きコホート試験の結果で、JAMA誌2019年5月14日号で発表した。一般集団の検討で、未診断のOSAは心血管リスクを増大することが示されていたが、OSAが周術期において同程度のリスクとなるかは不明であった。今回の結果について著者は、「さらなる研究を行い、介入によって同リスクが軽減可能かを評価する必要がある」とまとめている。

Supraflex対Xienceの比較試験(解説:上田恭敬氏)-1052

Supraflex stentとXience stentを比較した単盲検国際多施設無作為化比較非劣性試験の結果である。Supraflex stentはultrathin struts(60μm)、biodegradable polymer等を特徴とする新世代ステントの1つである。720症例がSupraflex群に715症例がXience群に割り付けられた。主要評価項目は1年でのcardiac death, target-vessel myocardial infarction, or clinically indicated target lesion revascularisationの複合エンドポイントである。ほとんど除外基準のないall-comerデザインで検討された。

孤立性の三尖弁閉鎖不全への開心術、長期予後改善せず?【Dr.河田pick up】

 中等度から重症の三尖弁閉鎖不全症の患者は米国では160万人以上おり、その予後は一般的に不良である。現在のACC/AHAガイドラインでも三尖弁閉鎖不全症に対する開心術は、重症で、症状があり、弁周囲の拡大と右心不全がある患者に推奨されているが、エビデンスは乏しい。  左心系の弁膜症のない孤発性の三尖弁閉鎖不全症患者に対しては、長い間保存的な薬物治療が行われてきた。この論文では、孤発性の三尖弁閉鎖不全症に対する外科的弁修復および弁置換の効果を検証している。米国・マサチューセッツ総合病院のJason H. Wasfy氏らによる、Journal of American College of Cardiology誌オンライン版5月3日号への報告。

貧血/鉄欠乏の心臓手術患者、術前日の薬物治療で輸血量減少/Lancet

 鉄欠乏または貧血がみられる待機的心臓手術患者では、手術前日の鉄/エリスロポエチンアルファ/ビタミンB12/葉酸の併用投与により、周術期の赤血球および同種血製剤の輸血量が減少することが、スイス・チューリッヒ大学のDonat R. Spahn氏らの検討で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年4月25日号に掲載された。貧血は、心臓手術が予定されている患者で高頻度に認められ、赤血球輸血量の増加や、死亡を含む有害な臨床アウトカムと関連する。また、鉄欠乏は貧血の最も重要な要因であり、鉄はエネルギーの産生や、心筋機能などの効率的な臓器機能に関与する多くの過程で中心的な役割を担っている。そのため、貧血と関連がない場合であっても、術前の鉄欠乏の治療を推奨する専門家もいるという。

労作ではあるがnegative studyである(解説:野間重孝氏)-1051

評者は多くの読者がこの論文を誤解して読んだのではないかと危うんでいる。つまり、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)による心停止から回復した患者に対する治療方針として、血管インターベンション(PCI)を前提とした緊急冠動脈造影を行うのが望ましいのか、待機的冠動脈造影とするのが望ましいのかを検討した論文として読んだ方が多いのではないだろうか。また、ある方はもっとストレートに、NSTEMIを基礎として起こった心停止例の治療に対して緊急PCIが望ましいのか、待機的PCIが望ましいのかを検討した成績として読んだ方もいらっしゃるかもしれない。確かに、この論文の筆致から致し方がないようにも思われるのだが、もう一度この論文の題名を確かめていただきたい。“Coronary Angiography after Cardiac Arrest without ST-Segment Elevation”となっており、NSTEMIといった言葉は入っていないことに気付かれると思う。論文評としてはいささか妙な書き出しになったのは、実は評者自身一読した段階で誤解しそうになったからだ。

新世代DES vs.BMS、2万例超のメタ解析結果/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行後最初の1年における新世代薬剤溶出ステント(DES)の成績は、安全面から従来のベアメタルステント(BMS)を標準治療と見なすべきとする見解を打破するものであることが示唆されたという。イタリア・フェデリコ2世 ナポリ大学のRaffaele Piccolo氏らが、新世代DESとBMSのアウトカムを比較検証した無作為化臨床試験のシステマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。新世代DESは、ほとんどが初期DESと直接比較する非劣性試験で検証され、概して同等の有効性と優れた安全性が示されてきたが、BMSとの比較については明確なものがなかった。今回の結果から著者は「1年を超える臨床アウトカムの改善を目標に、DESのさらなる技術開発が望まれる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2019年5月2日号掲載の報告。