救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

へき地の在宅医療の利用実態が判明/頴田病院・横浜市立大

 わが国では、急激な高齢化と地方での医療者の不足により医療の地域偏在が問題となって久しい。では、実際にこの偏在、とくに在宅医療の利用について、地域格差はどの程度あるのであろうか。この問題について、柴田 真志氏(頴田病院)と金子 惇氏(横浜市立大学大学院データサイエンス研究科)の研究グループは、レセプトデータを用いて、在宅医療利用の地域格差を調査した。その結果、日本全国で在宅医療の利用率に数十倍の地域格差が存在することがわかった。この結果は、Journal of General Internal Medicine誌2025年10月30日オンライン版で公開された。

敗血症性ショックへの新たな蘇生戦略の提案:CRTに基づく多角的介入(解説:栗原宏氏)

敗血症性ショックは日本国内では年間約6.5万例程度発生し、そのうち3例に1例が死亡する重篤な疾患である。血液循環不全と肝機能を反映して乳酸値は上昇するため、乳酸クリアランスは敗血症性ショックの治療において最も重要な指標の1つとなっている。2019年に発表された先行研究(ANDROMEDA-SHOCK試験)では、敗血症性ショックの患者を対象として、治療目標をCRTとした群は従来の乳酸クリアランスとした群に対して非劣性が示されていた。CRTという簡便な指標が、血液ガス分析や頻回の検査を必要とする乳酸クリアランスという複雑な指標に劣らないことが示された意義は大きい。

敗血症性ショック、CRTに基づく個別化蘇生法が有用/JAMA

 敗血症性ショックの初期治療に、毛細血管再充満時間(CRT)を目標とした個別化血行動態蘇生プロトコール(CRT-PHR)を用いることで、全死因死亡、バイタルサポート継続期間および入院期間の複合アウトカムが通常ケアより優れることが示された。チリ・Pontificia Universidad Catolica de ChileのGlenn Hernandez氏らが、北米・南米、欧州およびアジアの19ヵ国86施設で実施した無作為化試験「ANDROMEDA-SHOCK-2試験」の結果を報告した。敗血症性ショックに対する血行動態蘇生の最適な戦略は依然として明らかではないが、ANDROMEDA-SHOCK試験では、CRTを目標とした蘇生は乳酸値に基づく蘇生と比較し、臓器機能障害の回復が速く、蘇生輸液量が少なく、生存率が高いことが示唆されていた。

2型糖尿病の低血糖入院が減少傾向、その背景を紐解く

 近年、2型糖尿病患者の低血糖入院が漸減傾向であることが明らかになった―。2017年に日本糖尿病学会の糖尿病治療に関連した重症低血糖の調査委員会が調査報告を行ってから8年、この間に低血糖による入院が減少したのには、いったいどんな対策や社会変化が功を奏したのだろうか。今回、この研究結果を報告し、日本糖尿病学会第9回医療スタッフ優秀演題賞を受賞した社会人大学院生の影山 美穂氏(東京薬科大学薬学部 医療薬物薬学科)と指導教官の堀井 剛史氏(武蔵野大学薬学部臨床薬学センター)から研究に至った経緯や考察などを聞いた。

動脈内血栓溶解療法は血栓回収療法後の補助的治療として有効か?(解説:内山真一郎氏)

PEARL試験は、機械的血栓回収療法により再灌流に成功した、急性期前循環系大血管閉塞性脳梗塞の中国人324例においてアルテプラーゼ動脈内投与群と標準的治療群とを比較した多施設共同非盲検無作為化試験であるが、90日後の転帰良好(改変ランキンスケールスコア0または1)がアルテプラーゼ動脈内投与群で標準的治療群より有意に多かった。血栓回収療法は大血管閉塞性脳梗塞に対する標準的治療となったが、長期の転帰良好例は依然として半数以下であり、転帰を改善するための補助的治療が必要とされている。血栓回収療法による神経症状改善効果が不十分な理由の1つとして、血栓回収療法後の遠位動脈や微小循環の残存血栓によるno-reflow現象の関与が考えられることから、血栓回収療法後の動脈内血栓溶解療法は血栓回収療法の補助的治療として転帰改善効果が期待できるかもしれない。ただし、これまでに行われた同様な臨床試験の結果は一致しておらず、現在進行中の他の試験もあるので、それらの結果やメタ解析によるさらなるエビデンスの集積が必要なように思われる。

機内における急病人の発生頻度は?~84の航空会社での大規模調査

 2025年には約50億人が民間航空機を利用すると予測されている。航空機内での急病(機内医療イベント)は、医療資源が限られ、専門的な治療へのアクセスが遅れるという制約の中で対応が必要となる。米国・デューク大学のAlexandre T. Rotta氏、MedAireのPaulo M. Alves氏らの研究グループは、84の航空会社が参加した大規模な国際データを分析し、機内医療イベントの発生頻度や、航空機の目的地変更につながる要因などを明らかにした。JAMA Network Open誌2025年9月29日号に掲載。

アナフィラキシーへのアドレナリン点鼻投与の効果、エピペンと同等以上

 新たなエビデンスレビューによると、命に関わる重度のアレルギー反応を起こした人は、アドレナリンを主成分とするエピペンを太ももに刺すよりも点鼻スプレーを使った方が良いかもしれない。この研究では、液体または粉末のアドレナリンのスプレーによる鼻腔内投与は、注射による投与と同等か、場合によってはそれ以上の効果のあることが示されたという。英ロイヤル・ダービー病院のDanielle Furness氏らによるこの研究結果は、欧州救急医学会議(EUSEM 2025、9月28日〜10月1日、オーストリア・ウィーン)で発表された。

急性期脳梗塞、再灌流後のアルテプラーゼ投与は有益?/JAMA

 前方循環の主幹動脈閉塞による急性期虚血性脳卒中を呈し、機械的血栓除去術による血管内再灌流を達成した患者において、アルテプラーゼ動脈内投与は90日時点で優れたアウトカムを示す可能性が高いことを、中国・中山大学のXinguang Yang氏らPEARL Investigatorsが無作為化試験の結果で示した。アルテプラーゼ動脈内投与群では、全死因死亡率および頭蓋内出血の発現率が高かったが、統計学的有意差は認められなかった。主幹動脈閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中を呈し、血栓除去術を受けた患者における機能的アウトカムは、依然として最適とはいえず、血栓除去術後のアルテプラーゼ動脈内投与の有益性は不明のままであった。JAMA誌オンライン版2025年10月13日号掲載の報告。

雪崩遭難者の窒息を新たな携帯型安全装置が防ぐ/JAMA

 雪山で雪崩に巻き込まれ埋没すると通常35分以内に窒息死に至り、適時な救助が不可能となる場合が多い。生存率向上のため窒息を遅らせる新たな戦略の開発が求められている中、イタリア・Eurac ResearchのFrederik Eisendle氏らは、酸素補給やマウスピースを必要とせず、雪崩によって堆積した雪(デブリ)から遭難者の気道へ空気を送り込む新たな携帯型雪崩安全装置の有効性を、介入的無作為化二重盲検臨床試験で調べた。模擬埋没の間、致命的となる低酸素血症や高炭酸ガス血症を遅延させたことが示されたという。JAMA誌オンライン版2025年10月8日号掲載の報告。

2025年度医療安全管理者養成研修のご案内/医療安全学会

 日本医療安全学会(理事長:大磯 義一郎氏)は、2025年度の医療安全管理者養成研修アドバンスドコースを開催する。  この研修は、現場で「使える」医療安全の知識を体系的に修得することを目的とし、実践的な事例や演習を通じ、知識を「行動」へとつなげる応用力とリーダーシップを培い、現場の医療安全をリードできる人材としての成長を目指す。講師は、医療や法学、医療安全のエキスパートが担当する。  主催学会の大磯氏は、「医療安全管理者としての基本的な理解に加え、より高いレベルでの医療安全管理への理解と実践の機会を提供することを目的に、本アドバンスドコースを企画した。本コースが、日本医療安全学会の医療安全管理者養成研修修了者に限らず、医療安全や質改善に関心を持つ多くの方にとって、有意義な学びと交流の場となることを願っている。現場の課題解決に直結する「次の一歩」を共に考える場として、ぜひご参加していただきたい」とコメントしている。