救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

原因不明の失神、14日間携帯型ECGモニタリングで再発率は改善するか/NEJM

 欧米では、失神を主訴に救急診療科を受診した患者の約50%が原因不明で、1ヵ月以内に約7%が臨床的に重篤な病態を呈するため、血管迷走神経性および起立性低血圧などによる良性の失神と、不整脈などによる心原性失神の鑑別が課題である。また、失神患者の約50%が1年以内に再発するが、不整脈が特定されて治療を受けると再発率は約10%に低下することが知られ、早期診断が重要である。英国・エジンバラ大学のMatthew J. Reed氏らASPIRED Investigatorsは「ASPIRED試験」で、救急外来受診時に原因が特定されなかった失神患者において、携帯型心電図(ECG)による14日間のモニタリングを実施しても、標準治療と比較して1年後の患者報告による失神発作回数が低減しなかったことを示した。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2026年8月31日号に掲載された。

高感度心筋トロポニン測定、0/1時間アルゴリズムは安全かつ有効か?/Lancet

 心筋梗塞が疑われる患者において、高感度心筋トロポニン(hs-cTn)測定の0/1時間アルゴリズムは0/3時間アルゴリズムと比較し、安全性の主要複合評価項目である30日以内の全死因死亡または新規1型心筋梗塞に関して事前に設定された非劣性基準を満たしたことが示された。有効性の主要評価項目である救急外来滞在時間は短縮しなかった。スイス・バーゼル大学のJasper Boeddinghaus氏らPRESC1SE-MI investigatorsが、10ヵ国(オーストラリア、オーストリア、フィンランド、イタリア、ルーマニア、韓国、スペイン、スイス、英国、米国)の19の病院で実施した無作為化比較試験「PRESC1SE-MI試験」の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「0/1時間アルゴリズムの導入のみでは、救急外来の処理能力(スループット)向上は期待できないと考えられる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年8月29日号掲載の報告。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。

極端な暑さは数十種類の健康問題と関連

 極端な暑さによる健康への影響は、単なる脱水や熱中症にとどまらないようだ。米ノースウェスタン大学地球・環境・惑星科学准教授のDaniel Horton氏らによる研究で、極端な暑さへの曝露と関連する診断カテゴリーは、急性腎不全、多発性硬化症、カンナビノイド関連の精神・行動障害、昆虫による咬傷・刺傷、交通事故、銃器による外傷など33に上ることが示された。この研究の詳細は、8月26日付で「Science Advances」に掲載された。Horton氏は、「これまでの研究から、人は極端な暑さにさらされると攻撃的に振る舞いがちになることが示されている。今回の結果にも、そのことが関係している可能性がある。暑いと心身の双方にストレスがかかり、注意力が散漫になったりいら立ちが強まったりして、事故が増える可能性がある」とニュースリリースで述べている。

インフルエンザで入院の小児、オセルタミビルはICU入室減と関連

 インフルエンザで入院した小児では、オセルタミビル(商品名:タミフル)の投与が集中治療室(ICU)入室リスクの低下と関連することが、新たな研究で明らかになった。米コロラド大学医学部およびコロラド小児病院のSuchitra Rao氏らによるこの研究結果は、8月10日付で「JAMA Pediatrics」に掲載された。  Rao氏は、「過去20年間で最も厳しいインフルエンザシーズンの1つを経験した後だけに、今回の結果は、インフルエンザで入院した小児を治療することの重要性を改めて強調している。われわれの研究結果から、オセルタミビルによる治療は、発症から2日を過ぎて開始してもクリティカルケアが必要となるリスクを低下させる可能性があることが分かった」と述べている。

急性期脳梗塞、血栓回収術後の頭位挙上は有効か/BMJ

 血栓回収術で再灌流に成功した急性期虚血性脳卒中患者において、頭位挙上は頭位を水平位置に保つ場合と比較して、機能的アウトカムを改善せず、全死因死亡率にも差は示されなかった。中国・西南医科大学のZhengzhou Yuan氏らが「HeadSOAR試験」の結果で報告した。血栓回収術後の最適な頭位は不明とされ、血行動態の安定と脳浮腫の予防のどちらを優先すべきかについては相反するエビデンスが存在するという。研究の成果は、BMJ誌2026年8月20日号に掲載された。

心筋梗塞の定義、3分類へ刷新/ESC2026

心筋梗塞の診断は、高感度心筋トロポニン検査や冠動脈・心臓イメージングの普及により精緻化してきた一方、従来のタイプ分類は日常診療で一貫して適用しにくい場面があった。そこで今回、英国のNicholas L. Mills氏を筆頭とするESC/ACC/AHA/WHF合同タスクフォースは、心筋梗塞のユニバーサル定義第5版(The Fifth Universal Definition of Myocardial Infarction:UDMI)を策定し、心筋梗塞を病態生理と臨床状況に基づき3分類へ再編、急性・慢性心筋障害との区別や診断基準などを更新した。本声明は、2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)での発表とともにEuropean Heart Journal誌オンライン版2026年8月28日号にも掲載された。

マラソン中の心停止、スタート時の気温が低いほどリスク上昇か

 マラソン中の心停止はまれではあるものの、生命を脅かす重大なアクシデントだ。今回、日本全国のフルマラソン約453万人の参加データを解析した研究で、スタート時の気温が低いほど心停止リスクが高い可能性が示された。一方、大気汚染物質との有意な関連は認められなかった。研究は、霞ヶ浦医療センター循環器内科の加藤穣氏らによるもので、詳細は6月30日付の「JACC:Advances」に掲載された。  マラソン中の心停止は、冠動脈疾患などランナー側の心血管疾患が主な原因と考えられている。一方、これまでの研究はランナー個人の特徴や基礎疾患に焦点を当てたものが中心で、レース当日の気象条件や大気汚染などの環境要因が心停止リスクに与える影響については十分に明らかになっていなかった。

心臓手術時の血小板輸血、長期冷蔵保存血液でも止血効果/JAMA

人工心肺装置(CPB)の使用を伴う心臓手術を受ける患者は、出血に対する血小板輸血を要することが多いという。血小板は通常、室温(20~24℃)で最長5~7日間保存されるが、冷蔵保存(1~6℃)により、止血機能を損なわずに保存期間を延長できる可能性が示唆されている。米国・ピッツバーグ大学のPhilip C. Spinella氏らCHIPS Investigator Groupは「CHIPS試験」において、心臓手術を受ける患者では、手術中の活動性出血の制御に関して、最長21日間保存された冷蔵保存血小板(CSP)は、室温保存血小板(RTP)と同程度の止血効果が期待できることを示した。研究の成果はJAMA誌オンライン版2026年8月17日号で報告された。

血栓除去術は中位~遠位の脳動脈閉塞に有効性と安全性は証明できなかった(解説:内山真一郎氏)

中位または遠位の脳動脈閉塞による急性期脳梗塞に対する血栓除去術の有効性と安全性は確立されていない。DISCOUNT試験は、発症後8時間以内の中位または遠位の脳動脈閉塞患者において血栓除去術施行群と内科治療のみの対照群を比較したフランスの多施設共同無作為化試験であった。3ヵ月後の転帰良好例は血栓除去群と対照群の間に有意差がなく、症候性頭蓋内出血は血栓除去群で有意に多かった。遠位部の動脈は狭くて屈曲が多いため、カテーテルやガイドワイヤーによる損傷や穿孔が起こりやすく、血栓溶解療法だけでも転帰良好例が多いため、血栓除去術の有効性と安全性のバランスが期待しにくいことが結果に反映されてしまったと考えられる。

院外心停止後の低体温療法、冷却延長は神経学的予後を改善せず/JAMA

 33℃での低体温療法を受ける院外心停止後に昏睡状態にある生存者において、冷却時間の延長は神経学的アウトカムを改善させなかったことが、米国・ミシガン大学のWilliam J. Meurer氏らSIREN Investigatorsが同国71病院で実施した、多施設共同無作為化アダプティブ割り付け臨床試験の結果で示された。心停止後の神経保護を目的とした低体温療法は広く行われているが、臨床試験において一貫した神経学的アウトカムの改善は示されておらず、最適な冷却時間は依然として不明のままであった。JAMA誌オンライン版2026年8月5日号掲載の報告。