救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

FAST試験:迅速抗菌薬感受性試験は菌血症患者の予後を改善するのか(解説:小金丸 博氏)

グラム陰性菌菌血症に対する迅速抗菌薬感受性試験(迅速AST)の臨床的有用性を検証したランダム化比較試験がJAMA誌オンライン版2026年4月18日号に報告された。本研究の目的は、血液培養陽性後に迅速な表現型感受性試験を導入することで、患者予後が改善するかを明らかにする点にあった。従来の感受性試験では、菌の同定から感受性結果の判明まで通常1~2日を要する。一方、本研究で用いられた迅速ASTは、陽性血液培養ボトルから直接感受性を測定することで、より早期に抗菌薬選択を最適化することが期待できる。研究は薬剤耐性菌頻度の高いギリシャ、インド、イスラエル、スペインの7施設で実施された。約900例が登録され、迅速AST群と標準AST群に割り付けられた。

血栓回収療法前のtenecteplase、機能的自立を改善せず/JAMA

 脳梗塞発症後4.5時間を超えても、血管内治療(EVT)を迅速に受けられる環境にある患者において、EVT前のtenecteplase静注による血栓溶解療法の役割は不明とされる。中国・首都医科大学のYunyun Xiong氏らTNK-PLUS Investigatorsは、「TNK-PLUS試験」において、発症後4.5~24時間以内にEVTを実施可能な施設に直接搬送された近位中大脳動脈(MCA)閉塞による急性期脳梗塞患者では、EVT単独と比較して、EVT前にtenecteplase静注を行っても、機能的自立の達成率は改善しないことを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年5月8日号に掲載された。

Implementation Scienceと外傷症例のundertriageの克服(解説:香坂俊氏)

「Implementation Science」、あえて日本語にすれば「実装科学」という言葉が、医療の中でも徐々に市民権を得てきている。これは、臨床試験やガイドラインによって示された有効な介入を、実際の医療現場にどのように届け、定着させ、患者アウトカムの改善につなげるかを扱う学問領域である。循環器領域でも、Implementation Scienceは第III相試験の後に考える補助的な作業ではなく、治療や介入を設計する段階から組み込むべき方法論として位置付けられている。

医師確保の新しい選択肢に、「旅当直」サイトオープン

 地方の医療機関にとって、医師確保は長年にわたる大きな経営課題となっている。とくに当直体制の維持は、常勤医の負担軽減や病院機能の継続に直結する一方で、従来の人材紹介や単発アルバイトだけでは、中長期的な関係性づくりにつながりにくいという課題がある。 こうした中、Mediative株式会社は、都市部の医師が地方の医療機関で当直勤務を行いながら、その土地の人や文化、地域医療の現場に触れる新しい地域医療体験「旅当直」のポータルサイトを、2026年5月14日に公開した。本稿では特別寄稿として、Mediative代表で医師の畑 拓磨氏が本サービスの特徴を紹介する。

広範囲脳梗塞でも血栓回収療法は有効か?~6試験メタ解析/Lancet

 広範囲の虚血性変化を呈する脳卒中患者は、従来、血管内血栓回収療法の対象から除外されることが多い。米国・University Hospitals Cleveland Medical CenterのAmrou Sarraj氏らATLAS Investigatorsは系統的レビューとメタ解析による「ATLAS研究」において、発症後24時間以内に受診した広範囲の虚血コアを有する虚血性脳卒中患者では、薬物療法と比較して血管内血栓回収療法は機能的アウトカムを有意に改善し、死亡率の低下をもたらすことを示した。研究の成果は、Lancet誌2026年5月23日号に掲載された。  ATLAS研究は、医学関連データベースを用いて2018年3月1日~2025年3月1日に発表された文献を検索し行われた。

子どもの溺水による心停止、人工呼吸の有無で生存・神経予後に差――全国データ解析

 プール監視や学校現場などで遭遇しうる子どもの溺水では、その場での初期対応が転帰を左右するとされている。今回、日本の全国データを用いた研究で、小児の溺水による心停止において、人工呼吸を伴う心肺蘇生(CPR)は胸骨圧迫のみのCPRと比べて、生存および神経予後の点で良好である可能性が示された。研究は岡山大学学術研究院医歯薬学域地域救急・災害医療学講座の小原隆史氏らによるもので、詳細は3月10日付の「Resuscitation」に掲載された。  溺水は世界的に不慮の事故死の主要な原因の一つであり、日本でも小児の事故死の上位を占める。溺水による心停止では、体に酸素が行き渡らなくなるため、人工呼吸を含むCPRが重要と考えられてきた。

シリアスゲームで診療ガイドライン順守率が改善/JAMA

 診療ガイドラインは医療の質向上に寄与するが、米国では順守率が依然として低く、時間的制約のある疾患の典型とされる外傷のトリアージ、とくに高齢者の治療では順守率が50%を下回るという。米国・ピッツバーグ大学のDeepika Mohan氏らは、医師の誤診の低減を目指して開発されたシリアスゲーム(serious game、娯楽以外の目的[知識習得、技術向上、行動変容など]を志向するビデオゲーム)が、救急医による高齢者の外傷トリアージのガイドライン順守状況を改善するかを無作為化試験で検討した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年4月20日号に掲載された。

「遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン」8年ぶりの全面改訂、非専門医が押さえておきたいポイントは?/日本循環器学会

 日本循環器学会と日本不整脈心電学会の合同研究班による「2026年改訂版 遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン」1)が、2026年3月20日にオンライン上で公開された。2018年の前回改訂以来、8年ぶりの全面改訂となる。今回の改訂では、「遺伝学的知見と臨床エビデンスの統合」が基本コンセプトに掲げられ、新たに8つの章が追加されるなど、ページ数が前回の約1.6倍(127ページ)に拡充された。3月20~22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会では、班長を務めた牧山 武氏(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)が本ガイドラインの要点を解説した。

グラム陰性菌の菌血症、迅速抗菌薬感受性試験は臨床的に有効か/JAMA

 グラム陰性桿菌による血流感染症患者において、迅速抗菌薬感受性試験(AST)の追加は標準ASTと比較し、「desirability of outcome ranking(望ましい順位のアウトカム):DOOR」による評価では優越性は認められなかったことが、米国・Vanderbilt University Medical Center大学のRitu Banerjee氏らが行った「FAST試験」の結果で示された。血液培養時の陽性血液培養ボトルを用いて直接、感受性の表現型を評価する迅速ASTについて、その結果に基づき抗菌薬治療を行うことで臨床アウトカムを改善するかどうか、臨床的意義は不明であった。

ICUでの身体拘束、限定的vs.系統的/JAMA

 侵襲的人工換気を受けるICU入室成人患者に対する手首拘束具の使用について、低頻度(限定的)使用戦略は高頻度(系統的)使用戦略と比べて、14日時点のせん妄または昏睡のない日数を減少させないことが示された。フランス・パリ・シテ大学のRomain Sonneville氏らR2D2-ICU Investigator Study Groupが、非盲検無作為化試験「R2D2-ICU試験」の結果を報告した。先行研究によると、ICU入室患者の約半数が身体拘束を受けているとされる。ICUにおける身体拘束は現実的な安全対策と見なされている一方、身体拘束が患者のストレスや興奮を増大させ、鎮静薬などの使用によってせん妄や昏睡のリスク、ひいては死亡や認知機能低下などのリスクが高まる懸念も指摘されている。