救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:4

ドローンが心停止患者のもとにAEDを運ぶ時代が来るかも?

 遠隔地で心停止した患者のもとに、ドローンによって自動体外式除細動器(AED)を届けることの実現可能性を示した、シミュレーションによる研究の結果が明らかになった。トロント大学(カナダ)のJamal Chu氏らによると、ドローンによるAEDの搬送で、都市部と地方のいずれにおいても、救急要請の電話からAEDが心停止患者のもとに届くまでの時間が大幅に短縮することが示されたという。この研究結果は、米国心臓協会学術集会(AHA 2023、11月11~13日、米フィラデルフィア)で発表された。

コロナ入院患者へのビタミンC投与、有効性認められず/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者へのビタミンC投与は、心肺支持療法離脱日数や生存退院を改善する可能性は低い。カナダ・Sunnybrook Health Sciences CentreのNeill K. J. Adhikari氏らの研究グループ「The LOVIT-COVID Investigators」が、2件の前向き調和型無作為化比較試験の結果を報告した。JAMA誌2023年11月14日号掲載の報告。  ビタミンCがCOVD-19患者のアウトカムを改善するかどうかを評価した2件の試験は、2020年7月23日~2022年7月15日に、世界4大陸で、集中治療室(ICU)で心肺支持療法を受けている重症患者(90ヵ所で登録)と非重症患者(40ヵ所で登録)を対象に行われた。被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方にはビタミンCを、もう一方にはプラセボを6時間ごとに96時間(最大16回)静脈投与した。

移動式脳卒中ユニットは脳卒中からの回復の可能性を高める

 現在、米国の一部の大都市で導入されている移動式脳卒中ユニット(mobile stroke unit;MSU)は、脳卒中が疑われる患者の病院への搬送中に検査や組織プラスミノゲンアクチベーターを用いた血栓溶解療法(t-PA療法)を行うことができる、特別な救急車だ。米ワイル・コーネル・メディシンなどの研究グループは、脳卒中疑いの患者を通常の救急車でER(救急救命室)まで搬送する場合と比べてMSUで搬送する場合では、t-PA療法が中央値で37分早く開始され、それにより患者が脳卒中から回復するか、あるいは症状が迅速に消失する可能性の高まることが示されたと、「Annals of Neurology」に10月6日発表した。

ワルファリン・DOAC、重大な副作用に「急性腎障害」追加/厚労省

経口抗凝固薬の添付文書について、2023年11月21日に厚生労働省が改訂を指示。国内で販売されている直接経口抗凝固薬(DOAC)4剤(アピキサバン、エドキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバン)とワルファリンカリウムの添付文書の「副作用」に重大な副作用として急性腎障害が追記された。  経口抗凝固薬の投与後に急性腎障害が現れることがある。本剤投与後の急性腎障害の中には、血尿や治療域を超えるINRを認めるもの、腎生検により尿細管内に赤血球円柱を多数認めるものが報告されている。

3日間のアミカシン吸入、長期挿管患者の人工呼吸器関連肺炎発生を軽減(解説:栗原宏氏)

人工呼吸器関連肺炎(VAP)は、気管挿管後48~72時間以上経過して発生する肺炎を指す。報告によって幅があるが全挿管患者の5~40%に発生するとされ、ICUでしばしばみられる感染性合併症である。死亡率は約10~30%と院内肺炎の中でもかなり高い。気管チューブから侵入した細菌が気管チューブ、気管支肺胞系、肺実質で増殖することがVAPの原因となる。抗菌薬吸入療法はこれらの部位に直接高濃度の抗菌薬が可能であり、小規模試験のメタ解析によればVAP予防に有効であることが示されている。これを踏まえて、著者らは人工呼吸器導入後3日目以降に、1日1回3日間、理想体重1kg当たり20mgのアミカシン吸入療法を行い、VAPの発生率が減少するかを検討した。

頻脈を伴う敗血症性ショック、ランジオロールは無益/JAMA

 頻脈を伴う敗血症性ショックでノルアドレナリンによる治療を24時間以上受けている患者において、ランジオロール点滴静注は標準治療と比較し、無作為化後14日間のSequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコアで評価される臓器不全のアウトカムを改善しなかった。英国・University Hospitals Birmingham NHS Foundation TrustのTony Whitehouse氏らが、医師主導の多施設共同無作為化非盲検並行群間比較試験「Study into the Reversal of Septic Shock with Landiolol:STRESS-L試験」の結果を報告した。敗血症性ショックは、アドレナリン作動性ストレスにより心臓、免疫、炎症、代謝経路に影響を与える。

遠隔虚血コンディショニングは脳卒中急性期患者の転帰を改善するか?(解説:内山真一郎氏)

急性期脳卒中における遠隔虚血コンディショニング (RIC)の有効性は確立されていない。RESIST試験は、脳卒中発症後4時間以内で入院前の脳梗塞または脳出血1,500例における無作為化比較試験であった。介入方法は、治療群では上肢を200mmHgまで、対照群では20mmHgで5分の加圧と5分の除圧を5回反復した。治療は、救急車の中で開始し、病院で少なくとも1回反復し、その後7日間1日2回反復した。一次評価項目は、90日後の改定ランキン尺度スコアのシフトであった。結果は、RICによる90日後の転帰改善効果は認められなかった。

毎年9%死亡者が増加する人獣共通感染症の行方/ギンコ・バイオワークス

 古くはスペイン風邪、近年では新型コロナウイルス感染症のように、歴史的にみると世界的に流行する人獣共通感染症の人への感染頻度が、今後も増加することが予想されている。そして、これらは現代の感染症のほとんどの原因となっている。人獣共通感染症の人への感染の歴史的傾向を明らかにすることは、将来予想される感染症の頻度や重症度に関する洞察に資するが、過去の疫学データは断片的であり分析が困難である。そこで米国・カルフォルニア州のバイオベンチャー企業ギンコ・バイオワークス社のAmanda Meadows氏らの研究グループは、広範な疫学データベースを活用し、人獣共通感染症による動物から人に感染する重大な事象(波及事象)の特定のサブセットについて、アウトブレイクの年間発生頻度と重症度の傾向を分析した。その結果、波及事象の発生数は毎年約5%、死亡数は毎年約9%増加する可能性を報告した。BMJ Glob Health誌2023年11月8日号に掲載。

急性感染症での安全性、CFPM vs.TAZ/PIPC/JAMA

 先行研究でセフェピム(CFPM)は神経機能障害を、タゾバクタム・ピペラシリン(TAZ/PIPC)は急性腎障害を引き起こす可能性が指摘されている。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのEdward T. Qian氏らは「ACORN試験」において、急性感染症で入院した成人患者を対象に、これら2つの抗菌薬が神経機能障害または急性腎障害のリスクに及ぼす影響を評価し、タゾバクタム・ピペラシリンは急性腎障害および死亡のリスクを増加させなかったが、神経機能障害のリスクはセフェピムのほうが高かったことを報告した。研究の成果は、JAMA誌2023年10月24・31日の合併号に掲載された。

冬季入浴での突然死、気温の影響は?/鹿児島大学

 冬季に向かい入浴する機会が増えてきている。わが国では入浴関連死が諸外国に比べて頻度が高いという報告もある。そこで、その疫学的特徴を明らかにし予防につなげるために、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科法医学分野の勝山 碧氏らの研究グループは、鹿児島県における入浴関連死の検案記録を調査した。その結果、入浴関連死の90%以上が65歳以上の高齢者であり、16~20時と通常の入浴時間の死亡が約半数を占めていた。Scientific Reports誌2023年2月8日に掲載。