高齢者に対するICIは効きが悪い?【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第4回

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ドクター赤松 肺がん最新ジャーナル解説

常に進化する肺がん研究。その進化の波に乗り遅れないために、押さえておきたい最新論文を和歌山県立医科大学 赤松弘朗氏がピックアップし紹介する。

第4回 高齢者に対するICIは効きが悪い?

NSCLCのみならず、今後SCLCでも初回治療に導入が進むと期待される免疫チェックポイント阻害剤(ICI)。一方で、治験データからは見えてこない高齢者やPS不良例に対する効果についてはしばしば議論がなされてきた。今回、高齢者に対する2つのレトロ解析を紹介する。

1)について

  • 2013~17年まで、MGH(マサチューセッツ総合病院)でPD-1/L1単剤治療を受けた245例。
  • 31.0%が70代、11.4%が80代。
  • PD-L1免疫染色はE1L3N cloneで実施。
  • PFSは70代までは年齢が上がるごとに延長(70代のmPFS 3.8ヵ月)、しかし80代のmPFSは1.6ヵ月と短かった。
  • OSは60歳未満、60代、70代で同等(12~14ヵ月)であったが、80代で3.6ヵ月と短かった。
  • 有害事象は年代によって大きな差はなし。

2)について

  • 欧州におけるexpanded access programmeをまとめたもの。
  • 2015年に欧州にある96の病院で治療を受けた、扁平上皮がん371例が対象。
  • 75歳以上は19%、80歳以上の割合は不明。
  • ORRは年代で差はなし。PFSについても3.2~4.2ヵ月と同様。
  • OSは75歳以上で5.8ヵ月と、そのほか(7.9~8.6ヵ月)に比して短かった。
  • 有害事象は年代によって大きな差はなし。

解説

高齢者に対する化学療法は本邦でも重要な課題だが、これまでの治験のサブセットは多くが65歳や70歳などで区切られており、われわれが実臨床で考える高齢者とはかけ離れているという問題がある。また、免疫応答が異なる集団でICIの効果が異なるかについてはいろいろ興味深い検討がなされており、最近のJAMA Oncol誌にも男女間でICIの効果に差はなさそうだ、というメタアナリシスが報告されている(Wallis CJD, et al. JAMA Oncol. 2019 Jan 3. [Epub ahead of print])。高齢者については、「免疫応答が落ちているのでICIの効果が劣る」という意見と「高齢者にできる腫瘍はTMBが高い可能性があるのでICIの効果は高いのでは」という、相反する意見があった。

今回紹介した論文について、前者では80歳以上の高齢者で効果が低そう、という知見だが、この集団の患者背景を見てみると脳転移を有する患者の割合が他よりも有意に多く(約30%)、PS2の患者も35%を占めるなど、予後不良な因子を有する集団である。PFSは1.6ヵ月と非常に短く、OSも3.6ヵ月と同様に短いこともこれを反映していると思われる。

一方、EJC誌のレトロ解析では、ORR、PFSはいずれの年代でも同様であった。こちらは逆に75歳以上の集団でのみ脳転移の頻度が少ないので解釈が悩ましいところだが、全体、高齢者集団とも過去の第III相試験における有効性データと近い結果であり、サンプルサイズもより多く、信頼性はやや高いと思われる。なお、双方の研究ともに高齢者ではOSが非常に短くなっているが、何らかの予後不良因子が隠れているのか、もしくはICI後の治療割合が本邦に比して低いのかなど、まだ不明な点は多いといえる。

有害事象については、いずれの報告でも年齢による差はない、つまり細胞障害性薬剤より軽い、ということであるので、結局のところ、これらの報告から「高齢者だからといってICIの使用を躊躇する必要はなさそうだ」、というのが自分の考えである。PD-L1高発現など選別した集団において年齢によって効果の違いがあるのか、今後の研究が望まれる。

講師紹介

赤松 弘朗 ( あかまつ ひろあき ) 氏和歌山県立医科大学医学部 内科学第三講座

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