第11回 患者さんにうまく説明できない医師へ送る本【Dr.倉原の“俺の本棚”】

  • 公開日:2018/11/13
企画・制作ケアネット

ほかのドクターがどんな本を読んでいるのか、気になりませんか?CareNet.com “おどろき”医学論文が好評の呼吸器内科医 倉原優氏が、自身の本棚から「これは!」とウナる本を毎月1冊ピックアップ。思わず読みたくなる“医書”を紹介します。

※紹介する書籍は倉原氏個人の選書です。ケアネットが推薦するものではありません。

【第11回】患者さんにうまく説明できない医師へ送る本

先日、ある気管支腫瘍の患者さんに「腫瘍によって気管支が狭窄しているようです」と説明したときのこと。

「先生、キョウサクってのは何だい?」と聞かれました。そりゃ当然です。日常生活で「狭窄」なんて言葉を使う場面はほとんどありませんし、もはや医療用語と化しています。「気管支が狭くなっているということですよ」と説明しながら、「なぜ狭窄などという難しい用語が使われているんだろう」と、今さら疑問に感じました。

『病院で使う言葉がわかる本』

和田 ちひろ/著 中川 恵一・蓮岡 英明/監修. 実業之日本社. 2010

今回紹介する本は、一般向けの書籍であって、決して医療従事者向けの医学書ではありません。かれこれ8年前に出版された本なのですが、良い本だと思います。この本の面白いところは、どの用語がどういう意味かを記しただけではなく、どういう用語が患者さんに誤解されているかを細かく紹介している点です。

たとえば「貧血」という言葉は、血液検査におけるヘモグロビン値の低下を指しますが、一般の人はそれよりも立ちくらみのほうをイメージします。同様に、「ショック」という言葉は、驚くほど病気が重症であるためショックを受けるようなイメージを持っている人が多いです。まぁ、「ショック」イコール重症であるというおおまかな解釈は間違っていないんでしょうけど。

医師の使う言葉はわかりにくい。しかし、私たちはそれに慣れきってしまっているため、そもそもどの用語が難しいと思われているのか、感覚が麻痺しちゃっていることがあります。「標準治療」という用語は、熟語の構成そのものは難しくありませんが、標準的でありきたりな治療をされては困ると思う患者さんはたくさんいます。また、「縫合不全」という用語も、外科的な知識がない患者さんにとっては、「医療ミスをされた」と誤解しかねないでしょう。

この本は、難しい用語から誤解されやすい用語まで、合計250ページ以上にわたっておそらく100以上は掲載しています。一般向け書籍ですから、1,500円(税別)という安さ。出版年月日が古いので、もしかするとリユースでしか手に入らないかもしれません。

患者さんに対する説明がなんだかうまくいかないなぁと思っている人は、一度この本を手に取ってみてはいかがでしょうか。病状説明に慣れたベテランドクターにも、ぜひ一読いただきたいと思います。

『病院で使う言葉がわかる本』

和田 ちひろ/著 中川 恵一・蓮岡 英明/監修
出版社名
実業之日本社
定価
本体1,500円+税
サイズ
A5判
刊行年
2010年

倉原 優 ( くらはら ゆう ) 氏近畿中央呼吸器センター

[略歴]

2006年滋賀医大卒業。洛和会音羽病院を経て08年から現職。

自身のブログ「呼吸器内科医」では医学論文の和訳や医療エッセーを執筆。

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