第5回 指導医が語る心得のような本【Dr.倉原の“俺の本棚”】

  • 公開日:2018/05/15
企画・制作ケアネット

ほかのドクターがどんな本を読んでいるのか、気になりませんか?CareNet.com “おどろき”医学論文が好評の呼吸器内科医 倉原優氏が、自身の本棚から「これは!」とウナる本を毎月1冊ピックアップ。思わず読みたくなる“医書”を紹介します。

※紹介する書籍は倉原氏個人の選書です。ケアネットが推薦するものではありません。

【第5回】指導医が語る心得のような本

どうも、タイトルを見て「あたりまえ体操」を思い出したナウい呼吸器内科医です。本書のフランケンシュタインを例に挙げた奇抜なまえがきを読みながら、これは期待できそうだなと読みはじめました。

『救急外来 診療の原則集―あたりまえのことをあたりまえに』

坂本 壮/著. シーニュ. 2017

2ページ目で「あ、これいい本だな」と思いました。なぜかといえば、最初の原則が、「焦ってはいけない!」だったのです。私は救急外来を専門にしているわけでも何でもないのですが、急変時に心掛けているのは焦らないことです。ある時、病棟で心肺停止になった患者さんがいました。そこに居合わせた若手医師は、「CPAだ! きゅ、救急カート持ってきてー! ルートとって! 除細動器ー! 挿管の準備してー!」と声を上げ、周囲のスタッフがドタバタになったことがありました。焦りが新たな焦りを生み、落ち着いてやれば1分で終わることに2分かかり、およそ実動的とは程遠い心肺蘇生でした。そんな時、10年目の循環器内科医が登場して、「落ち着け、おまえが焦ってたら進むものも進まない」とクールに決めながら、ルートがとれなくて難渋しているスタッフを横目に中心静脈をものの10秒で確保して、「この患者さんの基礎疾患を知っている人、教えてください」とつぶやきました。ほ、ほ、ほれてまうやろー!って……あれ、何の話だっけ。

いや、書評をしているんだった。とにかく、最初の原則にその焦らないことを書いていたので、筆者のポリシーが五臓六腑に染みわたりました。

もしこの本に結核のことが書かれていたら完璧だな…と上から目線で読んでいると、68ページにアッター! 「根拠のない楽観は禁物です」という名言が書いてあって、出典が『シン・ゴジラ』とかおしゃれなコラムに仕上がっています。

最後の項目にDNARを持ってきたのは、筆者のこだわりでしょう。私も、DNAR=何もしないということではない、と常々感じており、筆者の意見に心から賛同しました。終末期の患者さんにDNARというタグをペタっと付けるのは簡単です。しかしタグを付けられた人への対応は決して一様ではありません。ケースバイケースに考えなければいけない。それは、救急であろうと緩和ケアであろうと同じです。

この医学書は、マニュアル本ではありません。指導医が研修医とランチを食べながら話す、心得みたいなものです。かといって、左や右に極端に偏った意見をまとめたものではなく、ものすごくバランスがとれています。マニュアルとマインドの中間と思ってもらえればよいでしょう。

不幸にも救急を研修していた時代に指導医に恵まれなかったすべての医師は、一読の価値あり!

『救急外来 診療の原則集―あたりまえのことをあたりまえに』

坂本 壮/著
出版社名
シーニュ
定価
本体4,200円+税
サイズ
A5版
刊行年
2017年

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倉原 優 ( くらはら ゆう ) 氏近畿中央呼吸器センター

[略歴]

2006年滋賀医大卒業。洛和会音羽病院を経て08年から現職。

自身のブログ「呼吸器内科医」では医学論文の和訳や医療エッセーを執筆。

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