呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎、テゼペルマブの日本人データ(WAYPOINT)/日本アレルギー学会

 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(CRSwNP)に対し、生物学的製剤の適応拡大が進んでいるが、生物学的製剤使用患者の約40%は全身性ステロイド薬を用いていたという報告があるなど、依然としてコントロール不十分な患者が存在する。そこで、抗TSLP抗体薬のテゼペルマブのCRSwNPに対する有用性が検討され、国際共同第III相試験「WAYPOINT試験」において、テゼペルマブは鼻茸スコア(NPS)と鼻閉重症度スコア(NCS)を有意に改善したことが、NEJM誌ですでに報告されている。本試験の結果を受け、テゼペルマブは米国およびEUにおいて2025年10月にCRSwNPに対する適応追加承認を取得した。

世界中で薬剤耐性が急速に拡大

 抗菌薬が効かない危険な感染症が世界中で急速に広がりつつあるとする報告書を、世界保健機関(WHO)が発表した。この報告書によると、2023年には、世界の感染症の6件に1件が、尿路感染症や淋菌感染症、大腸菌による感染症などの治療に使われている一般的な抗菌薬に耐性を示したという。  2018年から2023年の間に、監視対象となった病原体と抗菌薬の組み合わせの40%以上で薬剤耐性が増加し、年平均5~15%の増加が見られた。2021年には、このような薬剤耐性はおよそ114万人の死亡と関連付けられていた。WHO薬剤耐性部門ディレクターのYvan Hutin氏は、「薬剤耐性は広く蔓延し、現代医療の未来を脅かす存在となっている。端的に言えば、質の高い医療へのアクセスが乏しいほど、薬剤耐性菌感染症に苦しむ可能性が高くなる」と、New York Times紙に語っている。

高齢者への高用量インフルワクチン、入院予防効果は?/Lancet

 高用量不活化インフルエンザワクチン(HD-IIV)は、標準用量不活化インフルエンザワクチン(SD-IIV)と比較して、高齢者におけるインフルエンザまたは肺炎による入院に対して優れた予防効果を示すとともに、心肺疾患による入院、検査で確定したインフルエンザによる入院、全原因による入院の発生率も減少させることが明らかにされた。デンマーク・Copenhagen University Hospital-Herlev and GentofteのNiklas Dyrby Johansen氏らDANFLU-2 Study Group and GALFLU Trial Teamが、2試験の統合解析である「FLUNITY-HD」の結果で報告した。Lancet誌オンライン版2025年10月17日号掲載の報告。  FLUNITY-HDは、HD-IIVとSD-IIVを比較する方法論的に統一された2つの実践的なレジストリベースの実薬対照無作為化試験(DANFLU-2、GALFLU)の、事前に規定された個人レベルのデータの統合解析であり、一般化可能性の向上とともに、高齢者における重度の臨床アウトカムに対する2つのワクチンの相対的ワクチン有効率(relative vaccine effectiveness:rVE)の評価を目的とした。

がん治療の中断・中止を防ぐ血圧管理方法とは/日本腫瘍循環器学会

 第8回日本腫瘍循環器学会学術集会が2025年10月25、26日に開催された。本大会長を務めた向井 幹夫氏(大阪がん循環器病予防センター 副所長)が日本高血圧学会合同シンポジウム「Onco-Hypertensionと腫瘍循環器の新たな関係」において、『高血圧管理・治療ガイドライン2025』の第10章「他疾患やライフステージを考慮した対応」を抜粋し、がん治療の中断・中止を防ぐための高血圧治療実践法について解説した。  がんと高血圧はリスク因子も発症因子も共通している。たとえば、リスク因子には加齢、喫煙、運動不足、肥満、糖尿病が挙げられ、発症因子には血管内皮障害、酸化ストレス、炎症などが挙げられる。そして、高血圧はがん治療に関連した心血管毒性として、心不全や血栓症などに並んで高率に出現するため、血圧管理はがん治療の継続を判断するうえでも非常に重要な評価ポイントとなる。また、高血圧が起因するがんもあり、腎細胞がんや大腸がんが有名であるが、近年では利尿薬による皮膚がんリスクが報告されている。

EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法のOS最終解析(FLAURA2)/NEJM

 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)オシメルチニブの単剤療法と比較して白金製剤とペメトレキセドによる化学療法+オシメルチニブの併用療法は、全生存期間(OS)を有意に延長させ、Grade3以上の可逆的な有害事象のリスク増加と関連していた。米国・ダナファーバーがん研究所のPasi A. Janne氏らFLAURA2 Investigatorsが、「FLAURA2試験」の主な副次エンドポイントの解析において、OSの事前に計画された最終解析の結果を報告した。同試験の主解析では、化学療法併用群において主要エンドポイントである無増悪生存期間(PFS)が有意に優れることが示されていた(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.49~0.79、p<0.001)。NEJM誌オンライン版2025年10月17日号掲載の報告。

原因不明の慢性咳嗽の“原因”が明らかに?

 英国・マンチェスター大学のAlisa Gnaensky氏らが、原因不明の慢性咳嗽(unexplained chronic cough:UCC)と原因が明らかな慢性咳嗽(explained chronic cough:ECC)を区別するための臨床リスク因子として、後鼻漏の有無を特定した。Allergy and Asthma Proceedings誌2025年9月1日号掲載の報告。本研究者らは過去の研究において、喘息や慢性閉塞性肺疾患よりもUCCである可能性が高い患者像を報告していた。  本研究は、米国の7つの咳嗽センターで慢性咳嗽患者に配布された電子質問票を基に調査を行い、平均±標準誤差、連続変数の頻度(一元配置分析)、カテゴリ変数のクロス集計頻度(二元配置分析)を計算した。UCCとECCの単変量比較はt検定とノンパラメトリック一元配置分析を使用して行われた。

60歳以上における全原因心肺系・心血管系疾患入院予防に対する2価RSVワクチンの効果(解説:寺田教彦氏)

本論文は、デンマークにおける全国規模の無作為化比較試験(DAN-RSV試験)の事前規定サブ解析で、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ワクチン接種による「全原因心肺系入院のみならず、呼吸器疾患の下流に位置する全原因心血管系入院の予防効果」を評価したものである。同試験の主要エンドポイントはRSV関連呼吸器疾患による入院で、結果は別の論文で報告されている「60歳以上への2価RSVワクチン、RSV関連呼吸器疾患による入院を抑制/NEJM」。本論文の評価項目として、副次エンドポイントは全原因心肺系入院、探索的エンドポイントとして心血管疾患の各項目である、心不全、心筋梗塞、脳卒中、心房細動による入院が設定された。

がん治療のICI、コロナワクチン接種でOS改善か/ESMO2025

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、多くのがん患者の生存期間を延長するが、抗腫瘍免疫応答が抑制されている患者への効果は限定的である。現在、個別化mRNAがんワクチンが開発されており、ICIへの感受性を高めることが知られているが、製造のコストや時間の課題がある。そのようななか、非腫瘍関連抗原をコードするmRNAワクチンも抗腫瘍免疫を誘導するという発見が報告されている。そこで、Adam J. Grippin氏(米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンもICIへの感受性を高めるという仮説を立て、後ろ向き研究を実施した。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群、就寝前スルチアムが有望/Lancet

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は有病率が非常に高いが、承認された薬物治療の選択肢はいまだ確立されていない。ドイツ・ケルン大学のWinfried Randerath氏らFLOW study investigatorsは、炭酸脱水酵素阻害薬スルチアムについて有効性と安全性を評価した第II相の二重盲検無作為化プラセボ対照用量設定試験「FLOW試験」を実施。スルチアムの1日1回就寝前経口投与は、OSAの重症度を用量依存性に軽減するとともに、夜間低酸素や日中の過度の眠気などの改善をもたらし、有害事象の多くは軽度または中等度であることを示した。研究の成果は、Lancet誌2025年10月25日号で発表された。

乳児期の犬への曝露は小児喘息リスクの低下と関連

 犬を飼っている家庭の乳児は、5歳時の肺機能が高く、喘息を発症しにくい可能性のあることが、新たな研究で示唆された。猫を飼っている家庭の乳児では、このような保護効果は認められなかったという。The Hospital for Sick Children(カナダ)のJacob McCoy氏らによるこの研究結果は、欧州呼吸器学会議(ERS 2025、9月27日〜10月1日、オランダ・アムステルダム)で発表された。  McCoy氏は、「猫アレルゲンと小児喘息の間に関連は認められなかったものの、犬アレルゲンへの曝露は肺機能の改善と喘息リスクの低下と関連していることが示された」とERSのニュースリリースの中で述べている。