呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

既治療のEGFR陽性NSCLC、sac-TMTがOS改善(OptiTROP-Lung04)/NEJM

 上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による前治療後に病勢が進行したEGFR遺伝子変異陽性の進行・転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)において、抗TROP2抗体薬物複合体sacituzumab tirumotecan(sac-TMT)はペメトレキセド+白金製剤ベースの化学療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)とともに全生存期間(OS)をも改善し、新たな安全性シグナルの発現は認められなかった。中国・Guangdong Provincial Clinical Research Center for CancerのWenfeng Fang氏らが、第III相試験「OptiTROP-Lung04試験」の結果で示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年10月19日号に掲載された。

全身型重症筋無力症の治療薬ニポカリマブを発売/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は、2025年11月12日に全身型重症筋無力症の治療薬として、ヒトFcRn阻害モノクローナル抗体ニポカリマブ(商品名:アイマービー)を発売した。  重症筋無力症(MG)は、免疫系が誤って各種の抗体(抗アセチルコリン受容体抗体、抗筋特異的キナーゼ抗体など)を産生する自己抗体疾患。神経筋接合部のタンパク質を標的として、正常な神経筋シグナル伝達を遮断または障害することで、筋収縮を障害もしくは妨げる。MGは全世界で70万人の患者がいると推定され性差、年齢、人種差を問わず発症するが、若い女性と高齢の男性に最も多くみられる。初発症状は眼症状であることが多く、MG患者の85%は、その後、全身型重症筋無力症(gMG)に進行する。gMGの主な症状は、重度の骨格筋の筋力低下、発話困難、嚥下困難であり、わが国には約2万3,000人のgMG患者がいると推定されている。

SMA治療薬ヌシネルセンの高用量剤形を発売/バイオジェン

 バイオジェン・ジャパンは、脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬であるヌシネルセン(商品名:スピンラザ)の高用量投与レジメンでの剤形追加(28mg製剤、50mg製剤)について、2025年11月12日薬価収載と同時にわが国で販売を開始した。  高用量投与レジメンについては、2025年9月19日に新用量医薬品/剤形追加(28mg製剤、50mg製剤)に係る医薬品として承認を取得していた。なお、高用量投与レジメンでの剤形追加は、承認、販売ともにわが国が世界で最初となる。  SMAは、主に乳児期から小児期に発症する進行性の神経筋疾患で、運動神経細胞の変性・消失により筋力低下や筋萎縮を引き起こす。SMAは遺伝性疾患であり、SMN1遺伝子の欠失や変異が主な原因とされている。わが国を含む世界各国で患者が報告され、重症度や発症年齢によりI~IV型に分類される。SMAは、近年、治療法の進歩により患者さんの予後は大きく改善しているが、依然として「筋力の改善」、「呼吸・嚥下機能の改善」など、満たされていない医療ニーズが存在する。

日本人EGFR陽性NSCLC、アファチニブvs.オシメルチニブ(Heat on Beat)/日本肺癌学会

 オシメルチニブは、EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の標準治療として用いられている。ただし日本人では、オシメルチニブの有用性をゲフィチニブまたはエルロチニブと比較検証した「FLAURA試験」1,2)において、有効性が対照群と拮抗していたことも報告されている。そこで、1次治療にアファチニブを用いた際のシークエンス治療の有用性について、1次治療でオシメルチニブを用いる治療法と比較する国内第II相試験「Heat on Beat試験」が実施された。第66回日本肺癌学会学術集会において、本試験の結果を森川 慶氏(聖マリアンナ医科大学 呼吸器内科)が報告した。なお、本試験の結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)でも報告されている(PI:帝京大学腫瘍内科 関 順彦氏)。

がん患者の死亡の要因は大血管への腫瘍の浸潤?

 がん患者の命を奪う要因は、がんそのものではなく、腫瘍細胞や腫瘍が体内のどこに広がるかであることを示した研究結果が報告された。腫瘍が主要な血管に浸潤すると血液凝固が起こり、それが臓器不全につながる可能性のあることが明らかになったという。米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのMatteo Ligorio氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に10月16日掲載された。  Ligorio氏らは、これが、がんが進行するとすぐに死亡する患者がいる一方で、がんが全身に転移していても生き続ける人がいる理由だと述べている。Ligorio氏は、「われわれが解明しようとしていた大きな疑問は、がん患者の命を奪うものは何なのか。なぜがん患者は、6カ月前でも6カ月後でもなく、特定の日に死亡するのかということだった」と同医療センターのニュースリリースの中で述べている。

ROS1陽性NSCLCに対するタレトレクチニブを発売/日本化薬

 日本化薬は「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)」の適応で、厚生労働省より製造販売承認を取得したタレトレクチニブ(商品名:イブトロジー)について、2025年11月12日に発売したことを発表した。タレトレクチニブは、同適応症に対する薬剤として4剤目となる。  ROS1を標的とするチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)を用いた治療において、耐性変異としてG2032R変異などが発現することが報告されている。そこで、これらの耐性変異体への活性を有する薬剤の開発が望まれていた。

EGFR陽性NSCLCへのオシメルチニブ+化学療法、日本人でもOS良好(FLAURA2)/日本肺癌学会

 国際共同第III相無作為化比較試験「FLAURA2試験」において、EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、オシメルチニブ+化学療法はオシメルチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を改善したことが報告されている1)。ただし、本試験のサブグループ解析において、中国人を除くアジア人集団のOSのハザード比(HR)は1.00(95%信頼区間[CI]:0.71~1.40)であったことから、日本人集団の結果が待ち望まれていた。そこで、第66回日本肺癌学会学術集会において、小林 国彦氏(埼玉医科大学国際医療センター)が本試験の結果を報告するとともに、日本人集団のOS解析結果を報告した。また、本報告の追加資料において、日本人集団の患者背景とPFS解析結果も示された。

進行扁平上皮NSCLCの1次治療、ivonescimab併用がICI併用と比較しPFS改善(HARMONi-6)/Lancet

 未治療の進行扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、ivonescimab+化学療法はチスレリズマブ+化学療法と比較して、PD-L1の発現状態を問わず無増悪生存期間(PFS)を有意に改善させ、安全性プロファイルは管理可能なものであった。中国・上海交通大学のZhiwei Chen氏らが、同国50病院で実施した第III相無作為化二重盲検比較試験「HARMONi-6試験」の結果で示された。扁平上皮NSCLCは非扁平上皮NSCLCと比べて臨床アウトカムが不良で、治療選択肢は限られている。今回の結果を踏まえて著者は、「本レジメンは扁平上皮NSCLC患者集団における1次治療として使用できる可能性がある」とまとめている。Lancet誌2025年11月1日号掲載の報告。

HER2変異陽性NSCLCに対するゾンゲルチニブを発売/ベーリンガーインゲルハイム

 日本ベーリンガーインゲルハイムは「がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)」の適応で、厚生労働省より製造販売承認を取得したゾンゲルチニブ(商品名:ヘルネクシオス)を2025年11月12日に発売した。ゾンゲルチニブは、同適応症に対する分子標的薬として、国内初の経口薬となる。  HER2遺伝子変異は、NSCLC患者の約2~4%に認められるとされており、非喫煙者や女性、腺がんで多くみられる。また、HER2遺伝子変異陽性のNSCLCは予後不良であり、脳転移のリスクも高いことが知られている。

尿検査+SOFAスコアでコロナ重症化リスクを早期判定

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のオミクロン株の多くは軽症だが、重症化する一部の患者をどう見分けるかは医療現場の課題だ。今回、東京都内の病院に入院した842例を解析した研究で、尿中L型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)とSOFA(Sequential Organ Failure Assessment score)スコアを組み合わせた事前スクリーニングが、重症化リスク判定の精度を高めることが示された。研究は国立国際医療センター腎臓内科の寺川可那子氏、片桐大輔氏らによるもので、詳細は9月11日付けで「PLOS One」に掲載された。  世界保健機関(WHO)が2020年3月にCOVID-19のパンデミックを宣言して以来、ウイルスは世界中に広がり、変異株も多数出現した。現在はオミクロン株の亜系統が主流となっており、症状は多くが軽症にとどまる一方、一部の患者は酸素投与や入院を必要とし、死亡する例も報告されている。そのため、感染初期の段階で重症化リスクを予測する方法の確立が求められている。