放射線科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

小児・青年期の医用画像による被曝、血液がんリスクへの影響は?/NEJM

 小児・青年期における医用画像診断による放射線曝露は、わずかではあるが血液がんのリスク増加と有意に関連していることが、米国・カリフォルニア大学のRebecca Smith-Bindman氏らによる後ろ向きコホート研究「Risk of Pediatric and Adolescent Cancer Associated with Medical Imaging retrospective cohort study:RICコホート研究」で示された。小児・青年期における医用画像診断による放射線誘発性血液がんのリスクを評価することは、画像検査の実施に関する意思決定を支援することにつながる。NEJM誌2025年9月17日号掲載の報告。

前立腺がん診断、bpMRIは標準検査になりうる/JAMA

 前立腺がんが疑われる男性において、短縮化されたバイパラメトリックMRI(bpMRI)検査は、提供された画像の質が十分であれば標的生検の有無にかかわらず、前立腺がん診断の新たな標準検査となりうることを、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAlexander B.C.D. Ng氏らPRIME Study Group Collaboratorsが示した。生検の有無を問わない臨床的に重要な前立腺がんの診断では、マルチパラメトリックMRI(mpMRI)が検査の標準となっているが、リソースのキャパシティが広範な導入を妨げている。ガドリニウム造影剤を使用しないbpMRIは、より短時間かつ安価な代替法で、世界中の医療システムにとって時間短縮によりキャパシティが改善される。著者は、「世界では年間400万件の前立腺MRI検査が行われていることから、bpMRIは、世界中の検査処理能力を大幅に増強しかつコスト削減を可能とするだろう」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年9月10日号掲載の報告。

上咽頭がん、シスプラチンを用いないtoripalimab併用療法は実現可能か/JAMA

 局所進行上咽頭がん患者において、放射線治療時にシスプラチンを用いないtoripalimab併用療法(toripalimab+導入化学療法および放射線治療)は、治療成功生存期間(failure-free survival:FFS)に関する非劣性が示され、毒性の低い、実現可能な治療法であることが、中国・Guangdong Provincial Clinical Research Center for CancerのCheng Xu氏らDIAMOND Study Groupが行った第III相無作為化試験「DIAMOND試験」の結果で示された。先行研究により、上咽頭がん治療においてPD-1阻害薬のtoripalimabを用いることで、放射線治療時に毒性の高いシスプラチンの併用を省略でき、生存に影響を及ぼさない可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2025年8月21日号掲載の報告。

死亡診断のために知っておきたい、死後画像読影ガイドライン改訂

 CT撮影を患者の生前だけではなく死亡時に活用することで、今を生きる人々の疾患リスク回避、ひいては医師の医療訴訟回避にもつながることをご存じだろうか―。2015年に世界で唯一の『死後画像読影ガイドライン』が発刊され、2025年3月に2025年版が発刊された。改訂第3版となる本書では、個人識別や撮影技術に関するClinical Questionや新たな画像の追加を行い、「見るガイドライン」としての利便性が高まった。今回、初版から本ガイドライン作成を担い、世界をリードする兵頭 秀樹氏(福井大学学術研究院医学系部門 国際社会医学講座 法医学分野 教授)に、本書を活用するタイミングやCT撮影の意義などについて話を聞いた。

新たなエビデンス踏まえ薬物療法・ゲノム検査など改訂「膵癌診療ガイドライン」/日本膵臓学会

 2025年7月、「膵癌診療ガイドライン」が改訂された。2022年から3年ぶりの改訂で、第7版となる。Minds診療ガイドライン作成マニュアルに基づいて作成され、Background Question、Clinical Question(CQ)のほか、エビデンスが足りないなどでシステマティック・レビューができない項目はFuture Research Question(FRQ)として新設された。  7月25~26日に行われた第56回日本膵臓学会大会では、「膵癌診療ガイドライン 2025―改訂のポイント」と題したセッションが開催され、外科的治療、薬物療法、放射線治療、支持・緩和療法など、9つの専門グループから改訂点が発表された。同学会の教育セミナー「がん薬物療法・ゲノム医療」において森實 千種氏(国立がん研究センター中央病院)が紹介した内容と合わせ、薬物療法を中心に、本ガイドラインの主な改訂点を紹介する(文中下線は編集部)。

大腸がんスクリーニング、CT検査が便中DNA検査よりも有用か

 大腸がんのスクリーニングにおいては、マルチターゲット便中DNA検査(mt-sDNA検査)よりも大腸CT検査(CT Colonography;CTC)の方が、臨床的有効性と費用対効果の点で優れていることが、新たな研究で示された。米ウィスコンシン大学医学部・公衆衛生学部放射線医学・医学物理学分野のPerry Pickhardt氏らによるこの研究結果は、「Radiology」に6月10日掲載された。  大腸がんのスクリーニングでは、現在も大腸内視鏡検査が主流であるとPickhardt氏は説明する。大腸内視鏡検査は侵襲性が高いものの、検査中に前がん状態のポリープを切除できるため、依然として検診のゴールドスタンダードであるという。しかし、鎮静薬を使い、細くて柔軟なチューブを肛門から結腸に挿入するこの検査に不安を感じ、mt-sDNA検査かCTCを選択する患者は少なくない。mt-sDNA検査は、患者から採取した便サンプルに含まれるDNAを解析して腫瘍細胞に由来する変異遺伝子や異常なメチル化パターンなどを検出する。一方、CTCでは、肛門から炭酸ガスなどを注入して大腸を膨らませた状態でCT撮影を行い、ポリープなどの病変の有無を調べる。

心エコーの自動解析AIシステム「PanEcho」、精度は?/JAMA

 米国・テキサス大学オースティン校のGregory Holste氏らは、経胸壁心エコー(TTE)において39項目(診断分類タスク18項目、パラメーター推定タスク21項目)を自動解析する人工知能(AI)システム「PanEcho」を開発し、内部および外部検証の結果、地理的および時間的な違いにかかわらず高い精度が得られることを報告した。心エコー検査は心血管診療の基盤であるが、一連の動画の専門家による読影と手作業によるレポート作成に依存している。著者は、「マルチタスクディープラーニングを用いて心エコー読影を自動化したAIシステム(PanEcho)は、心エコー検査室における補助的な読影ツールとして、あるいはポイントオブケアにおけるAI対応スクリーニングツールとして活用できる可能性があり、各臨床ワークフローにおける前向き評価が望まれる」と述べている。JAMA誌オンライン版2025年6月23日号掲載の報告。

低リスク分化型甲状腺がん、全摘後のアブレーションは回避できるか/Lancet

 低リスクの分化型甲状腺がん患者の治療において、甲状腺全摘後に放射性ヨウ素治療(アブレーション)を行った場合と比較して、アブレーションを行わない場合でも5年無再発生存期間(RFS)は非劣性であり、有害事象の発現は両群で同程度であることから、この治療は安全に回避可能であることが、英国・Freeman HospitalのUjjal Mallick氏らが実施した「IoN試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年6月18日号で報告された。  IoN試験は、英国の33のがん治療施設で行われた第III相非盲検無作為化対照比較非劣性試験であり、2012年6月~2020年3月に参加者を登録した(Cancer Research UKの助成を受けた)。

AIは中間期乳がんの検出に有用?

 人工知能(AI)は、訓練を受けた放射線科医でも見逃してしまうような乳がんを検出できる可能性のあることが、新たな研究で示された。研究グループは、マンモグラフィー検査にAIを組み込むことで、年1回の定期検診の合間に発生する中間期がん(interval breast cancer;IBC)の発生率を下げられる可能性があるとしている。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デビッド・ゲフィン医学部放射線学分野のTiffany Yu氏らによるこの研究結果は、「Journal of the National Cancer Institute」に4月18日掲載された。  Yu氏はUCLAのニュースリリースで、「がんの早期発見は、患者にとって大きな違いを生む。がんを早期に見つけることができれば、より積極的な治療を必要としなくなり、より良好な転帰を得る可能性も高まる」と話す。

術前療法でリンパ節転移陰転の乳がん、照射は省略できるか/NEJM

 乳がん治療では、病理学的に腋窩リンパ節転移陽性の患者における領域リンパ節照射の有益性が確立しているが、術前補助化学療法後に病理学的にリンパ節転移なし(ypN0)の患者でも有益かは不明だという。米国・AdventHealth Cancer InstituteのEleftherios P. Mamounas氏らは、無作為化第III相試験「NSABP B-51-Radiation Therapy Oncology Group 1304試験」において、術前補助化学療法後に腋窩リンパ節転移陰性となった患者では、術後補助療法として領域リンパ節照射を追加しても、浸潤性乳がんの再発または乳がん死のリスクは低下しないことを示した。研究の成果は、NEJM誌2025年6月5日号で報告された。