小児科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

ソーシャルメディアは子どもの認知能力を低下させる?

 ソーシャルメディアは10代の子どもの脳の力を低下させている可能性のあることが、新たな研究で示唆された。9〜13歳にかけてのソーシャルメディアの利用時間の増加は、読解力、記憶力、言語能力などの認知テストの成績が低いことと関連していたという。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)小児科分野のJason Nagata氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に10月13日掲載された。  Nagata氏は、「この研究では、ソーシャルメディアの使用時間が少なくても、認知能力の低下と関連していることが示された。この結果は、思春期初期の脳がソーシャルメディアへの露出に特に敏感である可能性を示唆しており、こうしたプラットフォームは年齢に合った形で導入することと、注意深く監視することの重要性を強調している」と述べている。

学校給食の無償化で子どもの高血圧リスク低下

 米国で進められてきた学校給食の無償化が、子どもたちの高血圧リスクの抑制につながっているとする研究結果が、「JAMA Network Open」に9月25日掲載された。米カリフォルニア大学アーバイン校のJessica Jones-Smith氏らの研究によるものであり、無償化を始めた学校では高血圧の子どもの割合が、5年間で約11%減少したと見込まれるという。研究者らは、給食無償化による栄養状態の改善に加えて、体重に及ぼした影響が、この改善を促進した可能性が高いとしている。  論文の上席著者であるJones-Smith氏は、「給食無償化は、高血圧リスクと密接な関連のある小児肥満の減少と関連している。より健康的な食事が直接的に血圧へ好ましい影響を与えることに加えて、BMIが高い子どもが減ることに伴う間接的影響という二つの経路で、高血圧リスクが抑制されたと言える」と解説している。なお、研究者らが背景説明の中で述べているところによると、小児期の高血圧は成人期まで継続することが多く、将来的に心臓病や腎臓病のリスクを高める可能性が高いとのことだ。

アルツハイマー病治療薬が自閉症にも有効か

 アルツハイマー病治療薬として2003年に米食品医薬品局(FDA)に承認されたメマンチンが、自閉症スペクトラム障害(ASD)の小児や若者の社会的機能を高めるのに役立つ可能性のあることが、新たな小規模臨床試験で明らかになった。社会性の障害に改善が見られた割合は、メマンチンを投与した群では56%であったのに対し、プラセボを投与した群では21%だったという。米マサチューセッツ総合病院のGagan Joshi氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月1日掲載された。Joshi氏は、「メマンチンに反応を示した試験参加者は、ASDの軽度の特徴は引き続き見られたものの、社会的コンピテンスが向上しASD症状の重症度も軽減した」とMass General Brighamのニュースリリースで述べている。

胎児~2歳の砂糖摂取制限と成人期の心血管リスクの関係/BMJ

 英国における受胎後1,000日間(胎児~2歳)にわたる砂糖配給制への曝露は、成人期の心血管リスク低下および心機能指標のわずかな改善と関連しており、胎児期~生後早期の砂糖摂取制限が心血管への長期的な有益性をもたらす可能性があることが、中国・香港科技大学のJiazhen Zheng氏らによる自然実験研究で示された。受胎後1,000日間は、栄養が生涯にわたる心代謝リスクを形成する重要な時期であるが、多くの乳幼児は母体の食事、人工乳、離乳食を通じて添加糖類を過剰に摂取している。胎児期~生後早期の砂糖摂取制限の成人期の心血管リスクに対する影響について、エビデンスは限られており間接的なものであった。BMJ誌2025年10月22日号掲載の報告。

乳児期の犬への曝露は小児喘息リスクの低下と関連

 犬を飼っている家庭の乳児は、5歳時の肺機能が高く、喘息を発症しにくい可能性のあることが、新たな研究で示唆された。猫を飼っている家庭の乳児では、このような保護効果は認められなかったという。The Hospital for Sick Children(カナダ)のJacob McCoy氏らによるこの研究結果は、欧州呼吸器学会議(ERS 2025、9月27日〜10月1日、オランダ・アムステルダム)で発表された。  McCoy氏は、「猫アレルゲンと小児喘息の間に関連は認められなかったものの、犬アレルゲンへの曝露は肺機能の改善と喘息リスクの低下と関連していることが示された」とERSのニュースリリースの中で述べている。

1950~2023年の年齢・男女別の死亡率の推移~世界疾病負担研究/Lancet

 米国・ワシントン大学のAustin E. Schumacher氏らGBD 2023 Demographics Collaboratorsは人口統計学的分析(世界疾病負担研究[Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD]2023)において、(1)サハラ以南のアフリカの大部分の地域における死亡率が前回の分析とは異なっており、青年期と若年成人女性ではより高く、高齢期では低いことを示し、(2)2020~23年のCOVID-19の世界的流行期と回復期には、死亡率の傾向が多様化し、その変動の時期と程度が国によって著しく異なると明らかにした。Lancet誌2025年10月18日号掲載の報告。

アナフィラキシーへのアドレナリン点鼻投与の効果、エピペンと同等以上

 新たなエビデンスレビューによると、命に関わる重度のアレルギー反応を起こした人は、アドレナリンを主成分とするエピペンを太ももに刺すよりも点鼻スプレーを使った方が良いかもしれない。この研究では、液体または粉末のアドレナリンのスプレーによる鼻腔内投与は、注射による投与と同等か、場合によってはそれ以上の効果のあることが示されたという。英ロイヤル・ダービー病院のDanielle Furness氏らによるこの研究結果は、欧州救急医学会議(EUSEM 2025、9月28日〜10月1日、オーストリア・ウィーン)で発表された。

父親の厳しい子育てが子供のメンタルヘルスに影響

 青年期における厳しい子育ては、抑うつ症状のリスクを高める可能性がある。しかし、その影響には個人差があり、リスクを増悪または軽減させる要因を明らかにする必要がある。睡眠の問題は、対処能力を低下させるだけでなく、厳しい子育てを増幅させる可能性もある。米国・ニューメキシコ大学のRyan J. Kelly氏らは、青年期の睡眠を調整因子として、青年期の厳しい子育てとその後の抑うつ症状の関係を調査した。Sleep Health誌オンライン版2025年9月17日号の報告。

蕁麻疹に外用薬は非推奨、再確認したい治療の3ステップ

 かゆみを伴う赤みを帯びた膨らみ(膨疹)が一時的に現れて、しばらくすると跡形もなく消える蕁麻疹は、診察時には消えていることも多く、医師は症状を直接みて対応することが難しい。そのため、医師と患者の間には認識ギャップが生まれやすく、適切な診断・治療が選択されない要因となっている。サノフィは9月25日、慢性特発性蕁麻疹についてメディアセミナーを開催し、福永 淳氏(大阪医科薬科大学皮膚科学/アレルギーセンター)がその診療課題と治療進展について講演した。  なお、蕁麻疹の診療ガイドラインは現在改訂作業が進められており、次改訂版では病型分類における慢性(あるいは急性)蕁麻疹について、原因が特定できないという意味を表す“特発性”という言葉を加え、“慢性(急性)特発性蕁麻疹”に名称変更が予定されている。

超早産児の1次呼吸補助、非侵襲的高頻度振動換気法が有望/BMJ

 呼吸窮迫症候群を呈する超早産児(extremely preterm infant)の1次呼吸補助では、経鼻的持続陽圧呼吸療法(NCPAP)と比較して非侵襲的高頻度振動換気法(NHFOV)で、出生後72時間以内に侵襲的機械換気を必要とした新生児の割合が有意に低く、安全性に有意差は認められなかったことが、中国・重慶医科大学附属児童医院のYang Li氏らNHFOV study groupによる検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2025年10月6日号に掲載された。  研究チームは、2022年8月~2024年8月に、中国の20の新生児集中治療室(NICU)の参加の下で無作為化対照比較優越性試験を実施した(中国国家重点研究開発計画などの助成を受けた)。