日本発エビデンス|page:61

てんかん患者の日中の眠気と交通事故リスク

 愛知医科大学の松岡 絵美氏らは、てんかん患者における日中の過度な眠気や睡眠障害について、とくに抗てんかん薬に焦点を当て検討を行い、てんかん患者における睡眠関連問題が交通事故リスクと相関するかについて調査を行った。Seizure誌2019年7月号の報告。  てんかん患者325例でエプワース眠気尺度(ESS)を、322例でピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いて評価した。運転免許証を有するてんかん患者239例が、交通事故に関連する質問に回答した。

抗凝固薬服用のまま可能な大腸ポリープ新治療法が有用~大阪国際がんセンター

 大阪国際がんセンター(大阪市中央区)の竹内洋司氏(消化管内科副部長)らの研究グループが、10mm未満の大腸ポリープに対し、電気を使わずにポリープを切除する「コールドスネアポリペクトミー」が、抗凝固薬を服用したままでも従来の治療法より出血が少なく、入院が不要で、治療時間が短いことを、多施設研究において世界で初めて証明した。この研究結果は、Annals of Internal Medicine誌2019年6月16日号に掲載。  大腸ポリープの多くは、将来的に大腸がんの原因となり得るため、一般的に内視鏡切除が行われる。その際、通電して焼灼し、血液を凝固させながら切除する方法が従来は一般的であった。

TN乳がん1次治療でのアテゾリズマブ+nab-PTX、日本人サブ解析(IMpassion130)/日本臨床腫瘍学会

 局所進行/転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療におけるアテゾリズマブとnab-パクリタキセル(nab-PTX)併用療法が、日本人においても有用であることが示された。国際共同無作為化二重盲検第III相試験(IMpassion130)の日本人65例のサブグループ解析結果について、埼玉県立がんセンターの井上 賢一氏が、第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で発表した。  本試験では、局所進行または転移を有するTNBC患者を、アテゾリズマブ併用群(28日を1サイクルとして、アテゾリズマブ840mgを1日目と15日目に投与+nab-PTX 100mg/m2を1日目、8日目、15日目に投与)と非併用群(プラセボ+nab-PTX)に1:1に無作為化し、有効性と安全性を評価した。主要評価項目は、ITT解析集団およびPD-L1陽性患者における無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、副次評価項目は、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性などであった。

AIによる認知症診療は実現なるか、順大が日本IBMらと共同研究

 認知症の早期発見や診療において、AIは医師の強力な助っ人となるかもしれない。2019年7月10日、都内で記者説明会が開催され、AIによる新たな認知症診療システム開発と、食品介入などの臨床研究実施を目的とした産学連携プロジェクトの開始が発表された。参加企業は日本IBM、キリンホールディングス、三菱UFJリース、グローリー、日本生命、三菱UFJ信託銀行の6社。中心となる順天堂大学医学研究科神経学講座教授の服部 信孝氏をはじめ、各社の代表者が登壇し、本プロジェクトにおける役割と展望を語った。

双極性障害患者における日中の光曝露とうつ症状との関連

 光療法などの人工的な光曝露は、双極性うつ病に有効であるが、双極性障害(BD)患者におけるコントロールされていない日中の光曝露とうつ症状との関連は、明らかとなっていない。藤田医科大学の江崎 悠一氏らは、日常生活におけるBD患者の日中の光曝露とうつ症状との関連について調査を行った。Journal of Psychiatric Research誌2019年9月号の報告。  本研究は、BD患者181例を対象とした横断的研究である。平均日中光強度および照度1,000ルクス以上の総時間を、周囲光を測定するアクチグラフを用いて、7日間連続で測定した。うつ症状はMontgomery Asbergうつ病評価尺度を用いて評価し、8点以上をうつ状態と定義した。

日本人高齢者の身体能力と認知症発症との関連

 身体能力を評価することは、認知症リスク評価を容易にする可能性がある。しかし、どのような身体能力が認知症発症と最も関連するかについては、明らかとなっていない。国立長寿医療研究センターの土井 剛彦氏らは、日本人高齢者における身体能力と認知症発症との関連について検討を行った。Physical Therapy誌オンライン版2019年6月4日号の報告。  本研究は、地域在住の高齢者を対象としたプロスペクティブ研究である。65歳以上の高齢者1万4,313人のうち、2011~12年に5,104人が研究参加を承諾し、そのうち4,086人(女性の割合:52%、平均年齢72.0歳)が基準を満たしていた。ベースライン時の身体能力として、握力テスト、5回椅子立ち上がりテスト(Five-Times Sit-to-Stand Test:FTSST)、Timed Up & Go Test(TUG)より身体能力レベルを収集した。各テストにおける身体能力レベルは、性別層別四分位値に基づいて、最高レベルのC1から最低レベルのC4に分類した。認知症発症に関する情報は、毎月の医療記録より収集した。

日本人双極性うつ病患者に対するクエチアピン徐放性製剤の長期試験

 日本人双極性うつ病患者に対するクエチアピン徐放性製剤(XR)の有効性および安全性は、8週間のランダム化プラセボ対照二重盲検試験で示された。しかし、双極性障害は継続的な治療が必要とされる慢性疾患である。九州大学の神庭 重信氏らは、クエチアピンXRの長期的な有効性および安全性について検討を行った。BMC Psychiatry誌2019年6月26日号の報告。

ピロリ除菌、親が失敗なら子の失敗リスク高い

 クラリスロマイシン(CAM)耐性Helicobacter pylori(H. pylori)とCYP2C19多型は、何世代にもわたって受け継がれる可能性があり、H. pylori除菌失敗の危険因子として知られている。しかし、親がCAM3剤併用療法による除菌失敗歴を有する患者における失敗リスクを評価した研究はなかった。今回、出口 尚人氏(京都大学/武田薬品工業)らの横断研究により、CAM3剤併用療法での親の除菌失敗歴が子孫の除菌失敗の危険因子であることが示された。Journal of Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2019年7月1日号に掲載。

ステント留置後のDAPT投与期間、1ヵ月は12ヵ月より有効?/JAMA

 STOPDAPT試験(2016年)により、コバルトクロム合金製エベロリムス溶出ステント(CoCr-EES)留置術後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を3ヵ月で終了するアプローチの安全性が確認されている。京都大学の渡部 宏俊氏らSTOPDAPT-2試験の研究グループは、今回、DAPT投与期間をさらに短縮して1ヵ月とし、その後クロピドグレル単剤投与に切り換える治療法について検討し、この超短期的DAPTは、主要な心血管イベント/出血イベントの抑制効果に関して、DAPTを12ヵ月投与する標準治療に対し非劣性で、優越性も有することが示された。JAMA誌2019年6月25日号掲載の報告。

統合失調症治療における多剤併用療法の単剤療法への切り替え~メタ解析

 統合失調症における抗精神病薬の多剤併用療法は、単剤療法よりも優位性があることが最近のメタ解析で報告されているが、単剤療法への切り替えは、副作用に関して有益である。東京女子医科大学の松井 健太郎氏らは、抗精神病薬の多剤併用療法を受けている患者に対し、単剤療法への切り替えを行うべきか、多剤併用療法を継続すべきかについて、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。Schizophrenia Research誌オンライン版2019年6月7日号の報告。

日本の高齢者、痩せと糖尿病が認知症リスクに

 わが国の高齢者において、痩せていること(BMI 18.5kg/m2未満)と糖尿病が認知症発症のリスク因子であり、BMIが低いほど認知症発症率が高いことが、JAGES(Japan Gerontological Evaluation Study:日本老年学的評価研究)のコホートデータを用いた山梨大学の横道 洋司氏らの研究で示された。また、本研究において認知症発症率が最も高かったのは高血圧症を持つ痩せた高齢者で、次いで脂質異常症を持つ痩せた高齢者であった。Journal of Diabetes Investigation誌オンライン版2019年6月17日号に掲載。

StageII大腸がんの予後予測因子としての簇出(SACURA試験)/JCO

 Stage II大腸がんにおける術後補助化学療法の有効性を検討したSACURA試験(主任研究者:東京医科歯科大学 杉原 健一氏)の付随研究として、簇出(budding)の予後予測因子、補助化学療法の効果予測因子としての有用性を評価した解析結果を、防衛医科大学校の上野 秀樹氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年6月10日号に掲載。簇出は、国際対がん連合(UICC)が腫瘍関連の予後因子として挙げている因子であり、2016年のInternational Tumor Budding Consensus Conference(ITBCC2016)において国際的評価基準が定義された。

第2世代抗精神病薬経口剤の長期有効性~メタ解析

 統合失調症の維持療法においては、第2世代抗精神病薬(SGA)の使用が推奨される。しかし、各SGAの長期有効性の違いは、明らかとなっていない。慶應義塾大学の岸本 泰士郎氏らは、統合失調症および関連疾患におけるSGAの有効性を直接比較した6ヵ月以上のランダム化試験について、システマティックレビュー、メタ解析を実施した。World psychiatry誌2019年6月号の報告。  主要アウトカムは、全原因による中止とした。副次アウトカムは、精神病理、無効および忍容性に関連した中止、再発、入院、寛解、機能、QOL、有害事象を含む有効性および忍容性とした。プールされたリスク比(RR)および標準化平均差(SMD)の算出には、ランダム効果モデルを用いた。

日本人高齢者におけるアルコール摂取と認知症

 岡山大学のYangyang Liu氏らは、日本人高齢者におけるアルコール摂取の量や頻度と認知症発症との関連を評価するため、長期間のフォローアップを行った大規模サンプルデータを用いて検討を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2019年6月7日号の報告。  本研究は、日本で実施されたレトロスペクティブコホート研究。日本人高齢者5万3,311人を、2008~14年までフォローアップを行った。アルコール摂取の量や頻度は、健康診断質問票を用いて評価した。認知症発症は、介護保険の認知症尺度を用いて評価した。性別によるアルコール摂取のカテゴリー別の認知症発症率の調整ハザード比(aHR)、95%信頼区間(CI)を算出するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。

高感度トロポニンT、アブレーション後のAF再発予測に有用か

 高感度トロポニンT(hs-TnT)が、心房細動(AF)アブレーション後のAF再発および主要心血管イベント(MACE)の予測に有用である可能性を、大阪市立大学の田村 尚大氏らが報告した。Journal of Cardiovascular Electrophysiology誌オンライン版2019年6月13日号に掲載。  初期アブレーションを受けたAF患者227例(平均年齢66±10歳、持続性AF 98例)を連続して登録した。AFアブレーションの前に測定したhs-TnT値により、低レベル(0.005μg/L以下)54例、中程度レベル(0.006~0.013μg/L)127例、高レベル(0.014μg/L以上)46例の3群に分けた。アブレーション後のAF再発またはMACE(死亡、脳卒中、急性冠症候群、心不全入院を含む)の複合エンドポイントを評価した。

抗うつ薬の治療効果に影響を及ぼす因子~メタ解析

 抗うつ薬への治療反応を事前に知ることは、臨床的に重要である。しかし、有意義なeffect modification(異なる治療反応に関連する変数)はわかっていない。統計数理研究所の野間 久史氏らは、effect modificationを明らかにするため、これまで日本で実施された抗うつ薬のプラセボ対照試験における被験者個人データ(IPD)を用いてメタ解析を行った。Journal of Affective Disorders誌2019年5月1日号の報告。  うつ病の急性期治療におけるbupropion、デュロキセチン、エスシタロプラム、ミルタザピン、パロキセチン、ベンラファキシンのプラセボ対照試験7件より、2,803例のIPDを取得した。

高齢者のてんかん治療とADLとの関連

 高齢者におけるてんかん発作の抑制は、比較的容易であると広く考えられている。これは、高齢者の生活様式がてんかんの治療結果に影響を及ぼしている可能性があるとも考えられる。聖隷浜松病院てんかんセンターの藤本 礼尚氏らは、高齢てんかん患者のADLを調査し、てんかんの治療結果との比較を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2019年5月6日号の報告。  てんかんセンターに紹介された65歳以上の患者177例中、84例がてんかんと診断された。その後ADLレベルに応じて3群(ADL 1群:ADLに支障なし、ADL 2群:一部の手段的日常生活動作のみ支障あり、ADL 3群:一部の基本的なADLに支障あり)に分類し、ADLと治療アウトカムについて検討を行った。てんかん症候群および抗てんかん薬の使用も評価した。

うつ病に対するアリピプラゾール増強療法と血漿ホモバニリン酸レベル

 福島県立医科大学の堀越 翔氏らは、うつ病に対する低用量(LD)および高用量(HD)のアリピプラゾール増強療法の有効性を評価するため、ランダム化比較試験を行った。さらに、アリピプラゾール増強療法中の臨床反応と血漿ホモバニリン酸(pHVA)レベルの変化との関係を調査した。Human Psychopharmacology誌2019年5月号の報告。  抗うつ薬に対し治療反応不十分なうつ病患者31例を対象として、LD(3mg/日)群17例またはHD(最大12mg/日)群14例にランダムに割り付け、6週間にわたるアリピプラゾール増強療法を行った。ベースライン、2週目、試験終了時に、Montgomery-Asbergうつ病評価尺度(MADRS)による評価およびpHVAの測定を行った。

緑茶摂取と認知症リスクに関するシステマティックレビュー

 認知症への対策は、緊急を要する大きな問題となっている。いくつかの研究において、食事での要因の影響により、認知症が予防できる可能性が示唆されている。サントリーワールドリサーチセンターのSaki Kakutani氏らは、緑茶に焦点を当て、緑茶の摂取と認知症、アルツハイマー病、軽度認知障害(MCI)、認知障害との関連を調査した観察研究のシステマティックレビューを実施した。Nutrients誌2019年5月24日号の報告。  PubMedより、2018年8月23日までの研究を検索し、お茶と認知機能との関連を調査した文献のリファレンスまたはレビューを調べた。次いで、緑茶の摂取と認知症、アルツハイマー病、MCI、認知障害との関連性を評価するオリジナルデータが、抽出した文献に含まれているかを調査した。

日本人肺がんのオシメルチニブ1次治療耐性を探る/ASCO2019

 オシメルチニブはEGFR変異非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において重要な選択肢である。しかし、同薬の耐性機構に対する報告は少ない。近畿中央呼吸器センターの田宮 朗裕氏らは、日本人NSCLC患者におけるオシメルチニブ1次治療の耐性機構を明らかにするため前向き観察研究を開始する。試験の概要を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)にて発表した。