新型コロナによる世界の死亡率と平均余命への影響/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2024/03/22

 

 世界の成人死亡率は、2020年および2021年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中に著しく上昇し、それまでの減少傾向が逆転した一方、小児死亡率は以前より緩やかではあるものの減少が続いていた。米国・保健指標評価研究所(IHME)のAustin E. Schumacher氏らGBD 2021 Demographics Collaboratorsが解析結果を報告した。COVID-19はパンデミックの最初の2年間に多くの人口統計学的指標に大きな影響を及ぼしたが、評価した72年間にわたる世界全体の保健医療の進歩は大きく、死亡率と平均余命は著しく改善していたという。また、低所得国では人口が安定または増加しているにもかかわらず、2017年以降、世界の人口増加の減速と共に、世界的に人口年齢構造の高齢化が続いていた。著者らは、「このような人口変動は、今後、保健医療制度、経済および社会に課題をもたらす可能性が高い」と指摘している。Lancet誌オンライン版2024年3月11日号掲載の報告。

GBD 2021のデータを解析

 2021年版の世界疾病負担研究(Global Burden of Disease Study:GBD)では、1950~2021年の204の国と地域、および811のサブナショナル地域について、とくに2020~21年のCOVID-19パンデミック中の死亡率と平均余命の変化に重点を置いて、新しい人口統計学的推計を提供している。

 研究グループは、政府系ウェブサイト、統計年鑑、人口統計、大規模調査などから得た2万2,223のデータソースを用い死亡率を推定した。これらのデータソースの一部は、COVID-19パンデミックによる超過死亡の推定にのみ用いた。人口推計には2,026のデータソースを用い、移住、HIV流行の影響、紛争・飢餓・自然災害・パンデミックによる人口統計の不連続を推計するために追加のデータソースを用いた。時空間ガウス過程回帰モデル(ST-GPR)を使用して5歳未満児の死亡率を算出するとともに、成人(15~59歳)の死亡率も推定し、生命表を作成した。HIVの流行国では、HIV特異的死亡率の推定値により生命表を調整した。

 2020年と2021年のCOVID-19パンデミックによる超過死亡率は、パンデミックがなかった場合に予想される死亡から、観察された全死因死亡を差し引いて算出した。全死因死亡のデータが得られなかった地域・年では、パンデミックに関する共変量を含む回帰モデルにより超過死亡率を推定した。人口規模は、階層ベイズコホートコンポーネントモデルを使用し、平均余命は年齢別死亡率と標準的な人口統計学的手法を使用して算出した。

COVID-19パンデミック中の成人死亡率は増加、小児死亡率は緩やかな低下が続く

 年齢標準化死亡率は1950~2019年の間に減少し(62.8%、95%不確定区間[UI]:60.5~65.1)、COVID-19パンデミック期間中に増加した(2020~21年:5.1%、95%UI:0.9~9.6)。一方、小児の死亡率は減少を続け、世界の5歳未満児の死亡数は、2019年は521万人(95%UI:450万~601万)であったのに対し、2021年は466万人(95%UI:398万~550万)であった。

 2020年と2021年を合計すると、世界中で推定1億3,100万人が死亡(全死因)し、そのうちCOVID-19パンデミックによるものは1,590万人であった。パンデミックの少なくとも1年間の超過死亡率は、80の国と地域で人口10万人当たり150人を超えたが、20ヵ国では2020年または2021年の超過死亡率がマイナスとなり、これらの国ではパンデミック中の全死因死亡率が過去の傾向に基づく予想より低値であったことが示された。

 世界の出生時平均余命は、1950年の49.0歳から2021年には71.7歳と、22.7歳上昇した。しかし、2019~21年の間は1.6歳低下しており、過去の傾向が逆転した。2019~21年の間に平均余命の上昇が確認されたのは、204の国と地域のうち32(15.7%)のみであった。

 世界の人口は2021年に78.9億人に達したが、その時点までに204の国と地域のうち56は人口がピークに達し、その後は減少している。2020~21年に人口増加が大きかったのは、サハラ以南アフリカ(39.5%)と南アジア(26.3%)であった。また、2000~21年にかけて、15歳未満の人口に対する65歳以上の人口の比は、204の国と地域のうち188(92.2%)で増加した。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 山口 佳寿博( やまぐち かずひろ ) 氏

山梨大学 医学部 呼吸器内科 臨床教授

健康医学協会附属 東都クリニック