公平な再入院を達成している病院の特徴は?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2024/01/19

 

 公平性は医療の質の本質的な領域である。米国・コロンビア大学のKatherine A. Nash氏らは、米国のメディケア・メディケイドの運営主体Centers for Medicare & Medicaid Services(CMS)が開発した臨床アウトカムの公平性を評価する2つのDisparity Methodsを用いた研究を行い、公平な再入院を達成している病院は少数派であり、公平な再入院が行われていない病院とは明らかに異なる特徴が認められることを明らかにした。具体的には、公平な再入院が行われている病院では黒人患者の数が少なかったという。著者は、「従来型のアウトカム評価では、黒人患者の受け入れが少ない病院に報酬を与える可能性があり、病院レベルでの不公平さが構造的人種差別の役割を強化する可能性がある」とし、「公平な再入院を実現するには、リスクのある患者の病院間の分布に、ばらつきがあることを考慮しなければならない」と述べ、不公平を助長しない慎重な政策設計の必要性を提言している。JAMA誌2024年1月9日号掲載の報告。

CMS Disparity Methodsを使用し再入院の公平性を保険および人種に関して評価

 研究グループは2018年7月~2019年6月に、メディケアデータを用いて、CMS Hospital-Wide Readmission指標が適格な米国の病院を対象に横断研究を実施した。

 まず、CMS Disparity Methodsを用い、公平な再入院を実施している病院を特定した。CMS Disparity Methodsは、格差リスクのある集団のアウトカムを病院間で比較する全病院法と、病院の患者集団内でのケアの格差を比較する単一病院内法の2つの方法で病院を評価するもの。本研究では保険(メディケイドとメディケアの二重適格受給者vs.非二重適格受給者)、ならびに人種(黒人vs.白人)に関する再入院率を比較し、それぞれの方法で閾値を満たした病院を公平な再入院を実施している病院とした。

 次に、公平な再入院を実施している病院と実施していない病院について、病院の特徴ならびに病院の実績に関する3つの外部指標である質、コスト、価値を比較した。Hospital Care Compareの評価が4または5を「質が高い」、受給者1人当たりのCMSメディケア支出スコアが全病院中下位5分の1である場合を「低コスト」、高品質と低コストの両方の基準を満たした場合に「高価値」と定義した。

公平な再入院が実施されている施設は黒人患者の割合が低い

 CMS Disparity Methodsの評価対象病院4,638施設のうち、保険に関するDisparity Methodsの対象(十分な数の二重適格受給者を診療している)は3,414施設(74%)、人種に関するDisparity Methodsの対象(十分な数の黒人患者を診療している)は1,962施設(42%)であった。

 公平な再入院を実施している病院に分類されたのは、3,414施設中592施設(17%)、および1,962施設中596施設(30%)であった。

 保険または人種に関して公平な再入院を実施している病院は、公平でない病院と比較し、黒人患者の割合が低く(保険別:中央値1.9%[四分位範囲[IQR]:0.2~8.8]vs.3.3%[0.7~10.8]、p<0.01、人種別:7.6%[3.2~16.6]vs.9.3%[4.0~19.0]、p=0.01)、そのほか複数の領域で差がみられた(非教育施設の割合が高く、都会の病院が多く、病床数が0~99床の割合が高い、いずれもp<0.01)。

 また、低コストの病院は、二重適格受給者に対して公平な再入院を提供する可能性が高く(オッズ比[OR]:1.57、95%信頼区間[CI]:1.38~1.77)、質が高い病院は黒人に対して公平な再入院を提供する可能性が高かった(OR:1.14、95%CI:1.03~1.26)。

(医学ライター 吉尾 幸恵)