MRI検査室への強磁性体の持ち込み、いかに危険か/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2024/01/10

 

 硬貨やカトラリー、ビスケット缶などの医療現場で一般的にみられる物品が、意図せずに磁気共鳴画像診断装置(MRI)のある部屋に持ち込まれた場合、重大な人体組織損傷や骨折といった危害が生じる可能性があり、患者および医療従事者はMRI環境への強磁性体の持ち込みに伴う危険性を十分に認識する必要があることが、シンガポール・国立大学病院(NUH)のShao J. Ong氏らが実施した「CHRISTMAS研究」で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年12月21日号クリスマス特集号「MARGINAL GAINS」で報告された。

3T MRIスキャナーで、12種の物品の人体組織貫通をシミュレート

 CHRISTMAS研究は、3テスラ(T)のMRIスキャナーの磁場における、医療現場で一般的にみられる物品の挙動と、スキャナーへ向かって引き寄せられる力および人体組織貫通の可能性の調査を目的とする前向きin situ実証研究である(特定の研究助成は受けていない)。

 臨床用の3T MRIスキャナー(Siemens Magnetron Skylar Tim Dot system、12年3ヵ月使用)を用い、病院内やMRI検査室付近で一般的にみられ、患者や医療従事者が所持している可能性のある12種の物品について、弾道ゲルを使用した人体組織貫通のシミュレーションを行った。

ビスケット缶で骨折の可能性も

 SANTA(ニュートン力学が適用され加速度が生じる位置)の測定値には、20ペンス、50ペンス、2ポンド硬貨の0cmから、ナイフおよびビスケット缶の152~161cmまでの幅を認めた。また、1ペニー、2ペンス、5ペンス、10ペンス硬貨は、ガントリーの入り口から100cmを超える距離で、スキャナーのボアに向かって自己推進し加速した。

 弾道ゲル(模擬人体組織)を貫通したのは5つの物品のみだった。貫通深度は、ナイフ(5.5cm)が最も深く、次いでティースプーン(5.0cm)、フォーク(4.0cm)、スプーン(3.5cm)、10ペンス硬貨(0.5cm)の順であった。ビスケット缶は模擬人体組織を貫通しなかったが、骨折を引き起こす可能性がある大きな衝撃を与えた。

実験後に画質の低下は認めず

 スマートフォン、デジタル体温計、金属を含むクレジットカード、ペン型トーチは、MRIスキャナーに数回通した後も完全に機能した。実験後に、MRIスキャナーの画質に明らかな低下はみられなかった。

 著者は、「これまでにも、強磁性体が意図せずにMRI検査室内に持ち込まれ、患者がけがを負ったり、機器が損傷したり、さらには死亡した例もあることを明記すべきだ。本研究では、カトラリーや10ペンス硬貨でさえ、人体組織に大きな損傷を与える可能性があり、小さなビスケット缶は骨を折る可能性があることが示された」とまとめ、「MRIチームへのクリスマスや季節の贈り物は、プラスチック製の容器に入ったお菓子か、紙製の箱に入ったクリスマス用のパンドーロやパネトーネに限定することを提案する」としている。

(医学ライター 菅野 守)