重症ARDS、ECMO中の腹臥位は無益/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2023/12/15

 

 重症急性呼吸窮迫症候群(ARDS)で静脈脱血・静脈送血の体外式膜型人工肺(VV-ECMO)による治療を受けている患者において、腹臥位療法は仰臥位療法と比較し、ECMO離脱成功までの期間を短縮しなかった。フランス・ソルボンヌ大学のMatthieu Schmidt氏らが、同国14施設の集中治療室(ICU)で実施した医師主導の無作為化並行群間比較試験「PRONECMO試験」の結果を報告した。腹臥位療法は重症ARDS患者の転帰を改善する可能性が示唆されているが、VV-ECMOを受けているARDS患者に対して、仰臥位療法と比較し臨床転帰を改善するかどうかは不明であった。JAMA誌オンライン版2023年12月1日号掲載の報告。

ECMO施行48時間未満の重症ARDS患者を無作為化、60日以内のECMO離脱成功を比較

 研究グループは2021年3月3日~12月7日に、ICUにてVV-ECMO施行開始から48時間未満の18歳以上75歳未満の重症ARDS患者を、腹臥位ECMO群または仰臥位ECMO群に1対1の割合に無作為に割り付けた。

 腹臥位ECMO群では、腹臥位療法の早期中止基準を満たさない限り、最初の4日間に16時間の腹臥位を少なくとも4回行い、仰臥位ECMO群ではECMO施行中の腹臥位を60日目まで禁止した。

 主要アウトカムは、無作為化後60日以内のECMO離脱成功までの期間。離脱成功は、ECMO中止後30日間、ECMOまたは肺移植を受けず生存した場合と定義した。副次アウトカムは、無作為化後90日時点の全死亡、ECMOおよび人工呼吸器非装着期間、ICU在室および入院期間などであった。また、有害事象(無作為化後7日間の褥瘡を含む)および重篤な有害事象についても評価した。

腹臥位療法と仰臥位療法で、主要アウトカムおよび副次アウトカムに有意差なし

 適格性を評価された250例のうち170例が無作為化され(腹臥位ECMO群86例、仰臥位ECMO群84例)、全例が追跡調査を完了した。

 170例の年齢中央値は51歳(四分位範囲[IQR]:43~59)、女性は60例(35%)。170例中159例(94%)は、ARDSの主な原因が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)肺炎であった。ECMO開始前に164例(96%)が腹臥位で、呼吸器系コンプライアンス中央値は15.0mL/cm H2O(IQR:10.7~20.6)であった。

 無作為化後60日以内にECMO離脱に成功した患者は、腹臥位ECMO群86例中38例(44%)、仰臥位ECMO群84例中37例(44%)であった(群間リスク差:0.1%[95%信頼区間[CI]:-14.9~15.2]、部分分布ハザード比:1.11[95%CI:0.71~1.75]、p=0.64)。

 また、無作為化後90日以内に腹臥位ECMO群で44例(51%)、仰臥位ECMO群で40例(48%)が死亡し(絶対群間リスク差:2.4%、95%CI:-13.9~18.6、p=0.62)、90日以内のECMO装着期間(日数)の平均値はそれぞれ27.51および32.19(絶対群間差:-4.9、95%CI:-11.2~1.5、p=0.13)であり、すべての副次アウトカムで両群間に有意差はなかった。

 重篤な有害事象については、心停止の発生率は腹臥位ECMO群より仰臥位ECMO群で有意に高かったが(3.5% vs.13.1%、絶対群間リスク差:-9.6%[95%CI:-19.0~-0.2]、相対リスク:0.27[95%CI:0.08~0.92]、p=0.05)、それ以外の重篤な有害事象の発現率は両群で同等であり、両群とも不測のECMO脱血管、予定外の抜管および重度の喀血の発生は認められなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)