脳由来神経栄養因子はヒトのエネルギーホメオスタシスで重要な働き

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脳由来神経栄養因子はヒトのエネルギーホメオスタシスで重要な働きのイメージ

脳由来神経栄養因子(BDNF)が、動物モデルでは重要なエネルギーホメオスタシスであることはわかっているが、ヒトのエネルギーバランスにおける役割についてはほとんど明らかにされていない。
 染色体11p14.1上の遺伝子であるBDNFのヘテロ接合性の欠失は、ゲノムサイズで約4Mbセントロメア側に隣接する染色体11p13上の遺伝子WT1とPAX6の単機能不全を引き起こし、やがてウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神遅滞(WAGR)症候群を引き起こす。過食症と肥満はWAGR症候群患者のサブグループで観察されていることから、米国NIHのJoan C. Han氏らの研究グループは、WAGR症候群におけるサブ表現形としての肥満はBDNFの単機能不全を誘発する染色体欠失に起因していると仮定し遺伝子解析を行った。NEJM誌2008年8月28日号より。

患者の58%にBDNF染色体が欠失と高BMIを確認




国際WAGR症候群協会を通して集められたWAGR症候群患者33例について、遺伝子型と肥満度指数(BMI)の関係を調査した。各々の染色体欠失の程度を、ゲノムのハイブリッド形成が比較可能なオリゴヌクレオチドを用いて判定した。

その結果、対象患者の11p染色体の欠失は、1.0から26.5Mbまで変動し、患者の58%にヘテロ接合BDNF染色体の欠失があった。これらの患者は幼児期の全体を通じて、BDNFの損傷のない患者よりもBMI zスコアがかなり高かった。ヘテロ接合BDNF染色体欠失患者の8~10歳の平均(±SD)zスコアは2.08±0.45だったのに対し、BDNF染色体欠失のない患者は0.88±1.28(P = 0.03)。10歳までに肥満(BMIが年齢・性別の95パーセンタイル以上)が認められたのは、ヘテロ接合BDNF染色体欠失患者では100%(95%信頼区間:77~100)で、欠失のない患者では20%(3~56)だった(P<0.001)。

WAGR症候群患者のBDNF単機能不全が幼児期肥満と相関




WAGR症候群における幼児期の肥満発症の決定領域は、BDNFエクソン1のゲノムサイズ80kb以内に位置していた。血清BDNF濃度は、ヘテロ接合BDNF染色体欠失患者で約50%低かった(P = 0.001)。

WAGR症候群の患者で、BDNFの単機能不全は、血清BDNFの低下と、幼児期肥満発症と関連していた。研究グループは、BDNFはヒトにおいてエネルギーホメオスタシスにとって重要な役割を果たしている可能性があると結論している。

(武藤まき:医療ライター)

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