重症血友病A、BIVV001融合蛋白による第VIII因子補充療法が有効/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2020/09/24

 

 重症血友病Aの男性患者の治療において、新規融合タンパク質BIVV001(rFVIIIFc-VWF-XTEN)の単回静脈内注射により、第VIII因子活性が高値で維持され、半減期は遺伝子組み換え第VIII因子の最大4倍に達し、本薬は投与間隔1週間の新規クラスの第VIII因子機能代替製剤となる可能性があることが、米国・Bloodworks NorthwestのBarbara A. Konkle氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年9月10日号に掲載された。第VIII因子機能代替製剤は血友病A患者の治療を改善したが、これらの製剤は半減期が短く、患者QOLの改善は十分ではないという。また、遺伝子組み換え第VIII因子の半減期は、von Willebrand因子(VWF)のシャペロン作用のため15~19時間とされる。BIVV001は、この半減期の上限を克服し、第VIII因子活性を高値で維持するようデザインされた新規融合蛋白である。

日米の施設が参加した第I/IIa相試験

 本研究は、重症血友病A患者におけるBIVV001の安全性と薬物動態の評価を目的とする第I/IIa相試験であり、米国の6施設と日本の1施設が参加した(SanofiとSobiの助成による)。

 対象は、治療歴のある重症血友病A(内因性第VIII因子活性<1%)の男性患者16例(18~65歳)であった。これらの患者は、遺伝子組み換え第VIII因子の単回静脈内注射を、25 IU/kg体重で受ける群(低用量群)、または65 IU/kgで受ける群(高用量群)に連続的に割り付けられた。3日以上の休薬期間の後、患者はBIVV001の単回静脈内注射を、それぞれ遺伝子組み換え第VIII因子と同じ用量の25 IU/kgまたは65 IU/kgで受けた。

 主要エンドポイントは、有害事象および臨床的に重要な検査値異常とし、インヒビターの発現、VWF活性(リストセチンコファクター活性で評価)、VWF抗原量が含まれた。副次エンドポイントは薬物動態であった。

高用量群の接種後第VIII因子平均値、4日間は≧51%、7日目は17%

 低用量群の7例(平均年齢33歳[範囲:19~60]、日本人1例、診断後の平均期間:29.9±8.1年)では、全例が遺伝子組み換え第VIII因子の投与を受けたが、BIVV001の投与を受けたのは6例で、1例はBIVV001の投与前に脱落したが、第VIII因子の薬物動態の評価には含まれた。高用量群の9例(44歳[32~63]、日本人1例、40.6±10.0年)は、全例が両薬剤の投与を受けた。

 BIVV001注射から28日間までに、第VIII因子インヒビターは検出されず、過敏症やアナフィラキシーは報告されなかった。また、BIVV001注射以降にVWF活性やVWF抗原の臨床的に重要な変化は検出されなかった。

 遺伝子組み換え第VIII因子治療期に、3例で8件の有害事象が報告された。8件中4件は低用量群の1例で発現した重篤な有害事象で、このうちの1件(自動車事故)は合併症のため、この患者はBIVV001投与前に試験から脱落した。最も頻度の高い有害事象はトロンビン・アンチトロンビンIII複合体の無症状での上昇(2例、各群1例ずつ)で、いずれも担当医により治療関連と判定された。

 BIVV001治療期には、9例で18件の有害事象が報告された。重篤な有害事象として、以前の虫垂切除術の合併症に起因する小腸閉塞が1例にみられた。最も頻度の高い有害事象はトロンビン・アンチトロンビンIII複合体の無症状での上昇(2例、各群1例ずつ、いずれも遺伝子組み換え第VIII因子治療期の2例と同じ患者)と頭痛(2例、各群1例ずつ)で、前者は担当医により治療関連と判定された。

 BIVV001の半減期の幾何平均値は、遺伝子組み換え第VIII因子の3~4倍であった(低用量群:37.6時間vs.9.1時間、高用量群:42.5時間vs.13.2時間)。また、製剤への曝露の曲線下面積(AUC)は、BIVV001が遺伝子組み換え第VIII因子の6~7倍だった(低用量群:4,470時間×IU/dL vs.638時間×IU/dL、高用量群:1万2,800時間×IU/dL vs 1,960時間×IU/dL)。

 高用量群におけるBIVV001注射後の第VIII因子の平均値は、4日間は正常範囲内(≧51%、範囲:35~72%)で、7日目は17%(範囲:13~23%)であった。これは、1週間空けた投与の可能性を示唆する。

 著者は、「BIVV001注射により、第VIII因子活性は、正常化期間を経た後高値で持続したことから、本薬は重症血友病A患者において、あらゆる種類の出血に対するより良好な防御とともに、製剤の投与間隔の延長をもたらす可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 長尾 梓( ながお あずさ ) 氏

医療法人財団 荻窪病院 血液凝固科