COVID-19の急性呼吸不全、ヒドロコルチゾンは有効か?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2020/09/10

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で急性呼吸不全を呈した重症患者に対し、低用量ヒドロコルチゾンの投与はプラセボと比較して、21日時点の死亡を含む治療不成功率を有意に低減しなかった。フランス・トゥール大学のPierre-Francois Dequin氏らが、149例を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果が発表された。ただし同試験は、別の試験でデキサメタゾンがCOVID-19による死亡率などを減少することを示す結果が出たことを受けて、早期に中止されており、著者は、「主要アウトカムについて、統計的および臨床的に意義のある差異を見いだすための検出力が不足していた可能性がある」と、結果の妥当性について疑義を呈している。JAMA誌オンライン版2020年9月2日号掲載の報告。

21日時点での治療不成功率をプラセボと比較

 研究グループは、フランスで2020年3月7日~6月1日にかけて、COVID-19による急性呼吸不全でICUでの治療を要した患者を対象に、多施設共同無作為化二重盲検逐次試験(患者50例ごとに中間解析を行う)を行った。

 被験者を無作為に2群に分け、一方には低用量ヒドロコルチゾンを14日間(200mg/日を7日間、100mg/日を4日間、50mg/日を3日間)持続点滴静注投与し、もう一方にはプラセボを投与した。最終フォローアップは2020年6月29日だった。

 主要アウトカムは、21日時点での治療不成功(死亡、人工呼吸器または高流量酸素療法への継続的依存のいずれかと定義)であった。また、事前に規定した副次アウトカムは、ベースラインで気管挿管のない患者の気管挿管、腹臥位セッション・体外式膜型人工肺(ECMO)・一酸化窒素吸入療法の21日目までの累積実施率、P/F比(PaO2/FiO2、測定:1~7日、14日、21日)、ICU入室中の2次感染発生患者の割合などだった。

治療不成功、ヒドロコルチゾン群42%、プラセボ群51%

 同試験は、290例登録を意図していたが、データ・安全監視委員会の勧告を受けて、被験者149例(ヒドロコルチゾン群76例、プラセボ群73例)登録後に中止された。登録被験者の平均年齢は62.2歳、女性30.2%、人工呼吸器を要した患者は81.2%だった。148例(99.3%)が試験を完了し、そのうち治療不成功は69例で、死亡はヒドロコルチゾン群11例、プラセボ群20例だった。

 21日時点での治療不成功率は、ヒドロコルチゾン群42.1%(32/76例)、プラセボ群50.7%(37/73例)、両群で有意差はなかった(発生率群間差:-8.6%、95.48%信頼区間:-24.9~7.7、p=0.29)。

 また、事前に規定した4つの副次アウトカムについても、有意差はみられなかった。試験治療薬に関連した重篤有害事象の発生もなかった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 小林 英夫( こばやし ひでお ) 氏

防衛医科大学校 内科学講座 准教授

J-CLEAR推薦コメンテーター