ダウン症者のアルツハイマー病は予測可能、異常は20代から/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2020/07/09

 

 ダウン症者におけるアルツハイマー病は、20年以上にわたる前臨床段階を有し、バイオマーカーの変化で予測可能であることが明らかにされた。スペイン・Barcelona Down Medical CenterのJuan Fortea氏らが、ダウン症候群者388例を含む横断研究の結果を報告した。アルツハイマー病とその合併症は、ダウン症の成人における主な死因となっている。先行研究で、ダウン症者のアルツハイマー病について評価は行われたが、ダウン症者におけるバイオマーカーの変化の経過は確認されていなかった。Lancet誌2020年6月27日号掲載の報告。

ダウン症者のアルツハイマー病について横断試験

 研究グループは、スペイン・バルセロナのSant Pau病院と、英国・ケンブリッジ大学で、ダウン症者とその対照群を集めて横断研究を行った。バルセロナでは、住民ベースの医療保険プランを通じて、またケンブリッジでは、英国とスコットランドの知的障害者支援サービスを通じて、18歳以上のダウン症者を集めた。

 被験者の適格条件は、軽度~中等度の障害を持ち、次のアルツハイマー病の指標や検査で陽性が1つ以上認められる場合とした。アポリポ蛋白E対立遺伝子の状況、アミロイドβペプチド1-42と1-40血清濃度とその比率(Aβ1-42/1-40)、総タウタンパク質、ニューロフィラメント軽鎖タンパク質(NFL)、脳脊髄液中(CSF)のスレオニン181でリン酸化されたタウ(p-tau)やNFL、18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)によるPET、アミロイドトレーサーによるPET、磁気共鳴画像(MRI)。

 対照群は、バイオマーカーに異常がなく、認知能力が正常な18~75歳とした。

 1次LOESS平滑化曲線により、バイオマーカー変化の順番と年齢、分岐となる最低年齢などを求めて評価した。

ダウン症者におけるアルツハイマー病の有病率は年齢とともに上昇

 バルセロナでは2013年2月~2019年6月、ケンブリッジでは2009年6月~2014年12月にかけて、ダウン症者388例(無症状257例[66%]、アルツハイマー病前駆症状48例[12%]、認知症を伴うアルツハイマー病83例[21%])と、その対照群242例を集めた。

 ダウン症者では、CSF Aβ1-42/1-40と血清NFLの変化が20代で認められ、アミロイドPETの変化は30代で認められた。18F-FDG PETやCSF p-tauの変化は30代後半に、その後40代になると海馬萎縮や認知能力に変化が起きていた。

 前駆期アルツハイマー病の診断年齢中央値は50.2歳(IQR:47.5~54.1)、認知症を伴うアルツハイマー病は同53.7歳(49.5~57.2)だった。

 ダウン症者におけるアルツハイマー病の有病率は年齢とともに上昇し、60代には90~100%に達していた。

 結果を踏まえて著者は、「被験者集団は、散発性および常染色体優性アルツハイマー病と類似しており、ダウン症候群の有病率も高いことから、アルツハイマー病の予防治療のターゲットとして適していると考えられる」と述べている。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 岡村 毅( おかむら つよし ) 氏

東京都健康長寿医療センター

上智大学

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J-CLEAR評議員