ABIは心血管イベントリスク予測にFraminghamリスクスコアより有効

提供元:ケアネット

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公開日:2008/07/22

 

健常者の心血管疾患のハイリスクを識別する予測モデルの精度は限られている。英国のABI共同研究チーム(Ankle Brachial Index Collaboration)は、アテローム性動脈硬化症の指標とされる足関節上腕血圧比(ABI)をFraminghamリスクスコア(FRS)と組み合わせることで、心血管疾患のリスク予測を改善できる可能性があると報告した。JAMA誌2008年7月9日号より。

男女約4万9千例を追跡調査しメタ解析




試験は、データベースのMEDLINE(1950年~2008年2月)、EMBASE(1980年~2008年2月)から、ABIに関してヒットした論文を選定し、前向きコホートをデザインし行われた。

一般集団(非疾患グループ)に属する参加者のABIはベースラインで測定し、全死因死亡と心血管原因死亡を見いだすために追跡。コホート研究の対象は16集団。虚血性心疾患の既往歴がない参加者についてメタ解析された。

男性2万4,955例と女性2万3,339例(期間中延べ48万325例)を追跡調査した結果、ABIと死亡リスクの関係は、ABI正常値(1.11~1.40)を低リスクとして逆J字形の分布を示した。

10年死亡率、冠動脈イベント発生率ともFRSの2倍




男性の10年死亡率(心血管疾原因)は、ABI低値(0.90)18.7%(95%信頼区間:13.3~24.1%)、ABI正常値(1.11~1.40)4.4%(3.2~5.7%)。同様に女性は、ABI低値では12.6%(6.2~19.0%)、ABI正常値では4.1%(2.2~6.1%)だった。

ハザード比は男性4.2(95%信頼区間:3.3~5.4)、女性3.5(2.4~5.1)。FRSで補正後も、男性2.9(95%信頼区間:2.3~3.7)、女性3.0(92.0~4.4)と高いままだった。

ABI低値(0.90)で、10年全死因死亡率、心血管原因死亡率、主要冠動脈イベント発生率のカテゴリー別にFRSの数値と比較すると、ほぼ2倍を示していた。

FRSによる心血管リスクの階層化にABIを包含させると、リスクカテゴリー再分類と、男性の約19%、女性の約36%に対する推奨治療を変更することになった。

この結果を踏まえ「ABI測定は、FRS以上に心血管リスク予測の精度を改善する可能性がある」と結論している。

(朝田哲明:医療ライター)