医師の政治信条、終末期治療に影響を及ぼすか/BMJ

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 米国では、医師の政党支持は、全国規模の医療施策に関する見解の違いと関連することが知られている。米国・ハーバード大学医学大学院のAnupam B. Jena氏らは、医師の政党支持と入院患者への終末期治療の関連を検討し、支持政党の違いは終末期の支出や強化終末期治療の施行状況などに影響を及ぼさないことを示した。研究の成果は、BMJ誌2018年4月11日号に掲載された。医師の政党支持は、二極化した医療上の争点を反映した仮想的な臨床シナリオにおいて、治療の推奨と関連するとの報告があるが、医師の政治信条の終末期の治療への影響は、これまで知られていないという。

支持政党別の終末期治療の違いを後ろ向きに検討
 研究グループは、メディケア加入の入院患者への内科医による終末期治療を、支持政党別(共和党、民主党)に後ろ向きに比較する観察研究を行った(外部からの助成は受けていない)。

 2008~12年の期間に、一般的な病態で入院し、その後病院で、または退院後早期に死亡したメディケア加入者のデータを収集した。

 病院で死亡した患者および退院後にホスピスを紹介されたが30日以内の死亡リスクが高いと予測された患者における、総入院費、集中治療室の使用、強化終末期治療(挿管・人工呼吸器装着、気管切開、胃瘻管挿入、血液透析、経腸栄養、心肺蘇生)を主要アウトカムとした。医師は、連邦政治献金データを用いて共和党支持、民主党支持、支持政党なしに分類された。

 解析の対象となった148万808例のうち、9万3,976例(6.3%)が1,523人の民主党を支持する医師に、5万8,876例(4.0%)が768人の共和党支持の医師に、132万7,956例(89.6%)は2万3,627人の支持政党なしの医師による治療を受けた。

 5万1,621例(3.5%)が病院で死亡した。退院後30日、60日、90日以内の死亡は、それぞれ14万8,457例(10.0%)、21万1,604例(14.3%)、25万4,856例(17.2%)だった。

早期死亡リスクの高い患者のホスピス入所率にも差はない
 患者の人口統計学的および臨床的な背景因子は3群間でほぼ同様であった。平均年齢は、民主党支持の医師の治療を受けた患者が74.4歳、共和党支持の医師の治療を受けた患者は75.3歳(p=0.002)で、女性がそれぞれ58.8%、60.2%(p=0.002)、白人が80.1%、83.3%(p=0.002)であり、主な慢性疾患では高血圧が89.2%、90.2%(p=0.002)、急性心筋梗塞が68%、69.4%(p=0.03)などと有意な差がみられたものの、その差はわずかであり、一定の方向性もないため、重大な交絡因子となる可能性はないと考えられた。

 民主党支持の医師は共和党支持の医師に比べ、平均年齢が若く(48.8 vs.51.0歳、p<0.001)、女性が多く(24.6 vs.14.7%、p<0.001)、米国の医学校の上位20校の卒業生が多かった(14.8 vs.6.4%、p<0.001)。支持政党なしの医師は、支持政党ありの医師に比べ平均年齢が若く(43.0歳、p<0.001)、女性が多く(36.8%、p<0.001)、上位20校の卒業生が少なかった(5.7%、p<0.001)。

 患者の共変量と病院別の固定効果で調整後の終末期の平均支出は、民主党支持の医師が1万7,938ドル(1万2,872ポンド、1万4,612ユーロ、95%信頼区間[CI]:1万7,176~1万8,700ドル)、共和党支持の医師は1万8,409ドル(95%CI:1万7,362~1万9,456)であり、補正後群間差は472ドル(95%CI:-803~1,747ドル、p=0.47)と、有意な差は認めなかった。

 病院で死亡した患者における終末期の集中治療室の使用(民主党支持の医師:52.5% vs.共和党支持の医師:54.6%、p=0.22)および強化終末期治療(38.0 vs.40.6%、p=0.14)には、医師の支持政党の違いによる差はみられなかった。

 退院後にホスピスに入所した患者の割合にも、医師の支持政党による差はなかった。たとえば、退院後30日以内の予測死亡リスクが高い上位5%の患者7万4,048例の補正後ホスピス入所率は、民主党支持の医師の患者が15.8%、共和党支持の医師の患者が15.0%、支持政党なしの医師の患者は15.2%であった(民主党支持と共和党支持の補正後群間差:-0.8%、95%CI:−2.7~0.9%、p=0.43)。

 著者は、「医師の政治的な好みによる、外来患者や、医療に関する政治的議論のある他の領域への影響を理解するために、さらなる検討を要する」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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