遺伝性血管性浮腫の発作予防、遺伝子組換え製剤は有用か/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2017/08/08

 

 全身に浮腫を繰り返す遺伝性血管性浮腫の発作予防に対する遺伝子組換えヒトC1エステラーゼ阻害薬(Ruconest)の有効性と安全性を評価した、第II相の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験の結果が発表された。米国・カリフォルニア大学のMarc A. Riedl氏らによる検討で、週2回(至適)または週1回の静脈内投与で臨床的に意味のある有意な発作頻度の減少が認められ、忍容性は良好であった。遺伝性血管性浮腫の発作は、C1インヒビター機能の低下によって生じる。血漿由来C1エステラーゼ阻害薬(Cinryze)の点滴静注は、遺伝性血管性浮腫の発作を抑止することが確認されているが、遺伝子組換えヒトC1エステラーゼ阻害薬の発作予防効果については、これまで厳密に検討されていなかった。Lancet誌オンライン版2017年7月25日号掲載の報告。

週2回、週1回またはプラセボ投与中の発作回数を評価

 試験は、カナダ、チェコ共和国、イスラエル、イタリア、マケドニア、ルーマニア、セルビア、米国の10施設で行われた。13歳以上、機能的C1インヒビター濃度が正常値の50%未満、遺伝性血管性浮腫の発作歴が試験開始前の少なくとも3ヵ月間に月4回以上あった患者が登録された。

 研究グループは被験者を6つの治療シーケンスのうち1つを受けるよう、1対1対1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。各治療シーケンスでは、「遺伝子組換えヒトC1エステラーゼ阻害薬(50 IU/kg、最大4,200 IU)の静脈内投与を週2回」「同投与を週1回とプラセボ投与を週1回」「プラセボ投与を週2回」の治療を、1週間のウォッシュアウトを挟んでクロスオーバーして、それぞれ4週間ずつ行った。患者、研究者、患者ケアに関わった試験関係者の全員が試験期間中、割り付け群についてマスキングされた。

 主要有効性エンドポイントは、各4週間の治療期間中に観察された遺伝性血管性浮腫の発作回数で(発作症状は毎日記録)、intention-to-treat集団で評価した。安全性は、試験薬を少なくとも1回静脈内投与された全患者について評価した。

発作回数、週2回投与群2.7回、プラセボ群は7.2回

 2014年12月29日~2016年5月3日に35例が登録され、32例(91%)が無作為化を受けた(intention-to-treat集団)。試験を完遂したのは26例(81%)であった。

 4週間の治療期間中の遺伝性血管性浮腫発作の平均回数は、プラセボ群(7.2回[SD 3.6])と比較して、遺伝子組換えヒトC1エステラーゼ阻害薬の週2回投与群(2.7回[2.4])、同週1回投与群(4.4回[3.2])は有意な減少が認められた。プラセボ群との平均差は2回投与群が-4.4回(p<0.0001)、1回投与群は-2.8回(p=0.0004)であった。

 有害事象は、週2回投与群は29例中10例(34%)で、週1回投与群は29例中13例(45%)で、またプラセボ群は28例中8例(29%)で報告された。最も頻度の高い有害事象は、頭痛(週2回投与群)と鼻咽頭炎(週1回投与群)であった。遺伝子組換えヒトC1エステラーゼ阻害薬の治療に関連があると考えられた有害事象は2例(疲労および頭痛:7%)であったが、いずれも追加治療なしで回復した。血栓性または血栓塞栓症イベント、全身性のアレルギー反応(アナフィラキシーを含む)、中和抗体の発現は報告されなかった。

 なお、遺伝子組換えヒトC1エステラーゼ阻害薬の血漿中半減期は3時間で、血漿由来C1エステラーゼ阻害薬の8分の1以下と短い。この薬物動態プロファイルも踏まえて著者は、「今回の試験結果で、C1インヒビター補充療法の効果はC1インヒビターの血漿トラフ濃度と直接的関与はない可能性が示唆された」と述べている。

(ケアネット)