まるでゾンビ映画? NYの集団薬物中毒の原因物質とは/NEJM

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ケアネット

まるでゾンビ映画? NYの集団薬物中毒の原因物質とは/NEJMのイメージ

 街はゾンビ映画の1シーンのようだった…2016年7月12日朝、米国ニューヨーク市ブルックリン地区で発生した薬物の過剰摂取によると思われる33人の集団中毒について、ニューヨークタイムズ紙は目撃者の証言として、こう伝えた。調査を行ったカリフォルニア大学サンフランシスコ校のAxel J Adams氏らは、中毒の原因物質として合成カンナビノイドAMB-FUBINACAを同定し、今回、NEJM誌オンライン版2016年12月14日号で報告した。近年、米国では新たな精神活性物質が、乱用薬物クラスとして急速に成長、活発化しているという。

8人の血清、全血、尿サンプルをLC-QTOF/MSで解析
 合成カンナビノイドは、当初、研究用のツールとして開発された。2008年、欧州で「Spice」、北米で「K2」のブランド名で知られるハーブ混合物中に初期の合成カンナビノイドであるJWH-018やCP 47,497-C8が見つかり、乱用薬物に転用されるようになったという。それ以降、中国や南アジアの違法な密造所で開発が進められたと考えられている。

 今回、同定されたmethyl 2-(1-(4-fluorobenzyl)-1H-indazole-3-carboxamido)-3- methylbutanoate(AMB- FUBINACA、別名:MMB-FUBINACA、FUB-AMB)は、Pfizer社が開発した合成カンナビノイドAB-FUBINACAのエステル化アナログである。同社は、2009年、AB-FUBINACAの特許を取得している。

 2012年、AB-FUBINACAは、脱法ドラッグの成分として日本で初めて同定され、米国では2014年1月に、規制物質のスケジュールI(あらゆる状況で使用禁止)に指定された。一方、AMB-FUBINACAは、2014年7月、ルイジアナ州で「Train Wreck 2」と呼ばれる製品の成分として発見され、同州の緊急事態宣言により即座に禁止されている。

 今回の集団薬物中毒の研究グループは、地域の2つの病院に搬送された18人のうち8人から血清、全血、尿のサンプルを採取し、検査を行った。また、今回のアウトブレイクに関与したと考えられるハーブ香料製品「AK-47 24 Karat Gold」のサンプルも検査した。解析には、液体クロマトグラフィ-四重極飛行時間型質量分析計(LC-QTOF/MS)を用いた。

「超強力な」新規薬物クラスの実例
 病院に搬送された18人の平均年齢は36.8歳(25~59歳)、全員が男性で、8人はホームレスだった。現場に立ち会ったニューヨーク市救急医療班(EMS)によれば、典型的な臨床的特徴を呈する28歳の男性は、質問への応答が緩慢で、「ぼんやりとした目つき」であった。また、搬送後の救急治療室では、だるそうにしていたが、触刺激には反応したという。

 解析の結果、8つのAK-47 24 Karat Goldの試料から、12.5~25.2mg/g(平均16.0±3.9mg/g)のAMB-FUBINACAが同定された。また、8人全員の試料からはAMB-FUBINACAの親化合物は同定されなかったが、血清または全血から77~636ng/mLの脱エステル化された酸代謝物が検出された。また、1人の尿からは、AMB-FUBINACAの酸代謝物165ng/mLが検出された。他の違法薬物はみつからなかった。

 AMB-FUBINACAは、カンナビノイド受容体作動薬の化学構造の継続的な進化を反映する強力なインダゾール型合成カンナビノイドである。最近のin vitroにおける薬理学的研究では、カンナビノイド受容体への作用は、テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)の85倍、JWH-018の50倍と報告されている。

 著者は、「同定された合成カンナビノイドの影響として、強力な身体機能の抑制作用が一貫して確認されており、集団中毒の現場で報告された“ゾンビ様”行動の主な要因と考えられる。AMB-FUBINACAは、“超強力な”合成カンナビノイドの新たな薬物クラスの実例であり、公衆衛生上の懸念を引き起こす」とし、「今回は、臨床検査技師、医療者、法の執行機関が協働することで、タイミングよく化合物の同定が進み、保健当局が適切な行動を取ることが可能となった」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)

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