前立腺がん、4つの治療法を患者報告アウトカムで評価/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2016/09/26

 

 限局性前立腺がん治療後の排尿・腸・性機能の重症度、回復状況および機能低下のパターンやQOLは、治療法によって異なることが明らかにされた。英国・ブリストル大学のJ. L. Donovan氏らが、PSA監視療法、根治的前立腺摘除術および内分泌療法併用根治的放射線療法の有効性を検証したProstate Testing for Cancer and Treatment(ProtecT)試験の患者報告アウトカムを分析し、報告したもので、これまで、患者報告アウトカムを用いて臨床的限局性前立腺がんに対する治療効果を評価したデータはあまりない。NEJM誌オンライン版2016年9月14日号掲載の報告。

限局性前立腺がん患者約1,600例で、6年間の患者報告アウトカムを解析
 ProtecT試験は、1999~2009年にPSA検査で限局性前立腺がんと診断された男性1,643例を、PSA監視療法群(545例)、根治的前立腺摘除術群(553例)、ネオアジュバントアンドロゲン除去療法(内分泌療法)併用放射線療法群(545例)に無作為に割り付け、追跡期間中央値10年時の前立腺がん死亡を主要評価項目として各治療法を比較検討した臨床試験である。

 今回、研究グループは、事前に定義された副次評価項目である患者報告アウトカムについて解析した。患者には診断前、無作為化後6ヵ月時、12ヵ月時、その後は毎年、質問票に記入してもらい、4領域(排尿機能、腸機能、性機能、不安・うつ・健康状態を含む健康関連QOL)について評価した。がん関連QOLの評価は5年時のみとし、6年間のデータについてintention-to-treat解析を行った。追跡期間中の質問票完遂率は、ほとんどの項目で85%以上であった。

それぞれ治療が与える術後への影響は異なることが明確に
 前立腺摘除術群では、性機能および排尿機能に対する悪影響が最も大きく、わずかに回復したものの試験期間を通して他の治療群に比べ悪影響が持続した。腸機能は変わらなかった。

 内分泌療法併用放射線療法群では、性機能に対する悪影響が6ヵ月時で最大となったものの多少回復し、その後は安定した。他の治療群と比較すると、6ヵ月時に腸機能の低下が認められたが、血便頻度の増加を除きそれ以降腸機能は回復した。排尿調節にはほとんど影響がなかった。他の治療群と比較すると排尿症状スコアおよび夜間頻尿が6ヵ月時に悪化したが、その後はほとんど回復し、12ヵ月後は他の治療群と同程度であった。

 監視療法群では、性機能および排尿機能が徐々に低下した。腸機能は変化しなかった。

 QOLへの影響は、各機能の変化を反映していたが、不安・うつ・健康状態を含む健康関連QOL、ならびにがん関連QOLに関する評価では、治療群間で有意差は認められなかった。

(医療ライター 吉尾 幸恵)