前立腺全摘除術、ロボット支援腹腔鏡 vs.開腹手術/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2016/08/09

 

 ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術vs.開腹恥骨後式前立腺全摘除術のアウトカムを直接比較する第III相無作為化試験の術後早期12週時点の結果が発表された。オーストラリア・Royal Brisbane & Women's Hospital(RBWH)のJohn W Yaxley氏らによる検討で、機能的アウトカムについて有意差はみられなかったという。著者は、さらなる長期追跡が必要であるとしたうえで、「中間解析の時点では、患者は手術アプローチではなく、信頼を寄せている気心が通じた経験豊かな執刀医の選択を優先することを推奨する」と述べている。これまで両手術アプローチを比較した試験のデータはなかった。Lancet誌オンライン版2016年7月26日号掲載の報告。

6週、12週、24ヵ月で排尿・性機能、腫瘍学的評価を計画
 試験は、両手術の機能的および腫瘍学的アウトカムの比較を目的とした。被験者はRBWHで募り、適格条件は、限局性前立腺がんの新規診断を受け手術を選択し、英語が話せ、頭部外傷・認知症・精神疾患の既往や他の併発がんがなく、平均余命10年以上が推定される35~70歳の男性であった。集まった被験者は、ロボット支援腹腔鏡群もしくは開腹手術群に無作為に割り付けられた。無作為化はコンピュータで行われ、試験は非盲検で行われたが、データ解析に携わった試験研究者に対して患者の状態は知らされなかった。さらに、マスクされた中央病理医によって生検および切除検体の評価が行われた。

 主要アウトカムは、排尿機能(EPICの排尿ドメインで評価)および性機能(EPICとIIEFの性ドメインで評価)で、6週、12週、24ヵ月時点で評価した。また腫瘍学的アウトカム(断端陽性、生化学検査および画像診断に基づく24ヵ月時点の病勢進行)も評価。健康関連およびドメイン特異的QOLアウトカムの評価が24ヵ月にわたって推進された。

 本報告では6週、12週時点の早期アウトカムを報告。主要解析および安全性解析はper-protocol集団を包含して行われた。

12週時点評価では両群スコアに有意差なし
 2010年8月23日~2014年11月25日に、326例が登録され両群に163例ずつが無作為に割り付けられた。施術前に試験を中断した被験者は18例(開腹手術群12例、ロボット支援腹腔鏡群6例)で、12週時点の評価を完了したのは開腹手術群121例、ロボット支援腹腔鏡群131例であった。

 結果、開腹手術群 vs.ロボット支援腹腔鏡群の排尿機能スコアについて、術後6週時点(74.50 vs.71.10、p=0.09)、12週時点(83.80 vs.82.50、p=0.48)ともに有意な差はみられなかった。性機能スコアも、術後6週時点(30.70 vs.32.70、p=0.45)、12週時点(35.00 vs.38.90、p=0.18)ともに有意な差はみられなかった。

 断端陽性率は、10% vs.15%だった。両群差の同等性検定の結果は、90%信頼区間(CI)値が事前規定のΔ値10%を超えており確定できなかった。しかしながら優越性検定で両群間に有意な差はないことが示されている(p=0.21)。

 術後合併症の報告は、開腹手術群14例(9%)、ロボット支援腹腔鏡群6例(4%)であった(p=0.052)。術中有害事象の報告はそれぞれ12例(8%)、3例(2%)であった。