高齢者肺がんの長期生存、放射線治療 vs.低侵襲手術/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2016/07/27

 

 高齢者肺がんに対する、体幹部定位放射線治療(stereotactic ablative radiotherapy:SABR)後および胸腔鏡下肺葉切除後のがん特異的生存率でみた長期生存を比較した結果、とくに腫瘍径が大きい症例では胸腔鏡下肺葉切除のほうが、有意に改善する可能性が示唆された。米国・RWJ Barnabas Health SystemのSubroto Paul氏らによる、全米集団ベース傾向適合比較解析を行った結果で、著者は、「交絡因子が排除しきれず結果は限定的だが、手術可能な早期肺がんでSABRの治療選択が浸透する前に、さらなる詳細な評価を行う必要があるだろう」とまとめている。SABRは手術可否を問わず、早期非小細胞肺がんに有用とされている。SABR後の生存率について、低侵襲手術による切除後に疾患リスクが改善した場合と比べた場合に、同等であるかどうかは明らかになっていなかった。BMJ誌オンライン版2016年7月8日号掲載の報告。

腫瘍径2cm以下と5cm以下、それぞれの場合についてがん特異的生存率を比較検討

 研究グループは、腫瘍径が2cm以下の場合の胸腔鏡下亜肺葉切除(sublobar lung resection:SLR)後 vs.SABR後の、および腫瘍径が5cm以下の場合の胸腔鏡下肺葉切除[肺葉切除(lobectomy)または亜肺葉切除]後 vs.SABR後のがん特異的生存率を比較した。検討は全米集団ベースの後ろ向きコホート研究および傾向適合比較解析にて行った。対象は、全米メディケアデータベースとリンクしたSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)レジストリから、2007年10月1日~2012年6月31日の間に、SABRまたは胸腔鏡下切除を受けた66歳以上の肺がん患者とした。

 被験者を2013年12月31日まで追跡し、SABR後と胸腔鏡下切除後のがん特異的生存率を、腫瘍径2cm以下の場合(主要解析)と5cm以下の場合(副次解析)について評価した。

手術群が高率、2cm以下では有意差ないが、5cm以下では有意な差

 主要解析に組み込まれた被験者は計690例で、SABR群275例(39.9%)、胸腔鏡下SLR群415例(60.1%)であった。また副次解析には計2,967例、SABR群714例(24.1%)、胸腔鏡下切除群2,253例(75.9%)が組み込まれた。全コホートの平均年齢は76歳、フォローアップ期間の範囲は0~6.25年で、平均3年であった。

 主要解析(2cm以下対象)における肺がん死亡例は、SABR群37例(13.5%)、胸腔鏡下SLR群は44例(10.6%)であった。1年時点のがん特異的生存率は、適合分析(各群適合患者201例)の結果、SABR vs.胸腔鏡下SLRの死亡に関するハザード比は1.32(95%信頼区間[CI]:0.77~2.26)であり、有意な差はみられなかった(p=0.32)。3年時推定がん特異的生存率は、SABR群82.6%、胸腔鏡下SLR群86.4%であった。

 一方、副次解析(5cm以下対象、各群適合患者643例)では、胸腔鏡下切除群のがん特異的生存率の有意な改善が示された。SABR vs.胸腔鏡下切除の死亡に関するハザード比は2.10(95%CI:1.52~2.89、p<0.001)であり、3年時推定がん特異的生存率は、SABR群80.0%、胸腔鏡下切除群90.3%であった。

【訂正のお知らせ】
本文内の表記に誤りがあったため、一部訂正いたしました(2016年7月27日)。

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